恋人持ちの学園のアイドルと誰にもいえない恋をした。

aoi

祝福と提案

「有栖先輩と大智はようやくくっついたか」


 並んで座る2人を祝福する為に拍手をする。

 クラスメイトで親友の田辺大智が、学園のアイドルである小鳥ヶ丘有栖先輩に告白して晴れて結ばれた。


「しかし長かったな。俺に相談してから半年だっけか?」

「仕方ないだろ! 小鳥ヶ丘……あ、有栖さんは学園のアイドルだったんだから!」

「もう大智君ったら……。私をアイドルって呼ばないのが条件だったでしょ?」


 初々しい親友の名前呼びと惚気を目の前で見ながら、湧き上がってくるドス黒い感情に俺こと高田颯斗は必死に蓋をする。


「兎にも角にも小鳥ヶ丘先輩は色々と目立つ人なんだから大智がしっかり守ってやれよ」

「勿論だ! 俺は絶対に小鳥ヶ丘先輩を守ってみせる!」

「わ、私もなるべく危険な目に合わないように気をつけます!」


 片方が何かを言えばもう片方がそれを支えるようなこと言う。

 つくづくお似合いな2人だと俺は笑いながら再び拍手を送る。


「ご馳走様。いいもの見せてもらったよ。末長く幸せにな」

「おう!」

「はい!」


 力強く頷く2人に俺は最上級の祝福を送った。



 ◆◆◆


 数ヶ月経ったある日、俺は突然、大智に泣きつかれた。


「それで最近、小鳥ヶ丘先輩がそっけないと」

「あぁ、そうなんだ。デートに誘っても空返事で終わることも増えたし、もう俺には気がないのかも……」


 ここで2人が別れたら俺にもチャンスが生まれることにはなる。

 だけど2人を応援すると決めた日から俺は有栖先輩をキッパリ諦めた筈だ。


「大智の要件は大方わかったよ。俺に聞いてきて欲しいんだろ?」

「うっ。颯斗は本当に俺の考えてることが全部わかるんだな。仲介までしてもらって申し訳ないんだけど頼んでもいいか……?」

「任せろ」


 大智がわかりやすいだけだということは、口には出さないでおく。

 言わぬが華という諺もあるぐらいだ。



 ◆◆◆



「颯斗君がここに来た理由は、大まかにはもうわかってる。どうせ大智君がそっちに泣きついたんでしょ?」

「その通りですけどよく分かりましたね」

「それはこんなことしていたら、そのうち貴方が来ることは読めてたから」


 小鳥ヶ丘先輩はどこまで頭が回るんだろう。

 いつも俺の2手3手先を言っている気がする。

 どうせ俺が大智と有栖先輩をくっつけようと奮闘していたことも察していたんだろうとは思う。


「それで颯斗君、私からも相談……というかお願いなんだけど」

「お願い? 小鳥ヶ丘先輩が俺にお願いなんて珍しいですね」

「私、普段は人にお願いすることなんてないからね。その幸運に感謝した方がいいんじゃない?」

「同じ学校の先輩からお願いされることが、そんな貴重なことだとは思いませんでした。神にでも幸運を感謝しておきますよ」

「ふふ。やっぱり颯斗君は面白いね」


 憧れで好きだった先輩と会話をさせて貰えてるんだ。

 誰だって面白い返しぐらい頭を必死に回転させて捻り出すに決まっている。


「それでお願いなんだけど」

「はい。大智との仲をまた取り持ってほしいんですよね。いいですよ」

「違うよ。私と浮気してみない?」

「え?」


 この人今とんでもないこと口走らなかったか?



 —————

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