第3話

「マスターどうかしましたか?」

 家に入ったところで、ちょうどモモイに声をかけられる。顔に出てたか…。

「いや…えっと…その…」

「…ん」

 モモイの視線が俺の手に移る。

「手紙ですか?」

「あぁ…うん…それも俺と宛…」

「え?」「は?」


 ―ポストを開いてみたら一通の手紙が丁寧に白い封筒に入れられ丁寧にシーリングスタンプで封をされて届いていた。

 しかし内容はそんな真っ白で清楚なものでは無かった。


『お初お目にかかる。我らの創造種である人間よ。

 貴様への挨拶はこんなもので良いだろう。どうせ私の前からは消え失せる存在だ。本題に入る。

 今、貴様の家には二体のオートマタがいることを私は知っている。001と026、たしかモモイだかカンナだか、そんな名前を付けていたな。まったく、無意味だというのに…。

 さて本題に戻るが、両方とも戦闘オートマタだという事はもう存じているだろう?その名を聞いて解る通り、貴様の所有すべき物では無い。早急にこちらに引き渡せ。

 貴様は創造主様マスターと同じ人間だ。同じ種である以上賢いとは思うが、もし誤った判断をした場合には、当然何かはあると思え。

 知っているか?よく、人間は脆いという言葉をナルシストやらエセサイコパスやらの自惚れた奴らがカッコつけて言ってるが人間そうそう脆くないんだよ。じゃなきゃ拷問なんて行為も言葉生まれない。賢い判断を。』


 端的に言うと、モモイとカンナを引き渡せという脅迫状。おまけに従わなければ処すとな。多分、拷問とかその辺りだろう。

 そして、封筒には手紙の他にもう一枚紙が入っていて、それには少し長めの数列が記載されていた。

「この数列なんだと思う?」

「これは…場所の座標ですね。恐らく引き渡し場所です」

 座標らしい。いや、なんで住所じゃなくて座標なんだよ。

「……これ、俺ら宛だよね…?」

「それ以外に誰がいるんですか」

「だよなぁ…」

 この手紙、『我らの創造種である人間』とかちょくちょくそんな感じの言葉があるから、差出人はオートマタだろう。更に文章を見る限り俺らに関係している誰か、つまり戦闘オートマタ。

 けど一番ゾッとするのは、モモイとカンナという名前を知っているという事。この事は俺ら三人しか知らない。それを第三者が何故か知っているのだ。

「確認だけど、管理系のサーバーは本当に使ってないんだよな?」

「はい、アクセスした覚えはありませんし記録にもありません」

「同じく。てか、あんたが誰かに話したんじゃないの?」

「いや、そんなこと話したら豚小屋行きだよ」

「そうよね…いくら馬鹿なあんたでも流石にしないか」

 馬鹿で悪かったなっ。けっ!

「だけど、差出人も戦闘オートマタって…」

「そうですね」

「どういうこと?」

「この手紙にもある通り本来は立場上、私達の上には人間がいます。そして極論、この手紙の差出人は人間でもオートマタでもどちらでも良いんです。どちらであろうと任務は執行できますし」

「けれど、じゃあオートマタが差出人です。っていうのはそれはそれで変なのよ。任務を執行できるとはいえわざわざオートマタにやらせるのは変」

「それで何でだろうとなってるってわけか」

「そういうことです」

 確かに。言われてみれば不自然だな。

「それと、恐らく敵は『センチネル級』よ」

「せ、せんちねる?」

 理解が追いつかない俺にモモイが解説してくれる。

「センチネル級は、主に後方支援を担当する戦闘オートマタです。メンテナンス、修理ができるタイプやハッキング等といった攻撃ができるタイプもいます。…ですが、カンナは何故わかったんですか?」

「この手紙の送り主は私達のモモイとカンナという名前を知っていた」

 カンナも気づいていたか。

「これを知っているのは私たち三人のはず。だけど何故か知ってるのよ。ということは、内部事情は全てお見通しって考えても良いくらいに筒抜け。それなら、ここに突入できる量の情報収集も可能なはず。なのにこっちから引き渡せって変じゃない?」

「そ、そうなのか?」

「考えとしては妥当ですね」

「ここから考えられる事として、敵は突入は疎か直接的な戦力も持っていない。そして、とんでもない情報収集能力を持っている。そして手紙から戦闘オートマタであるとわかっている。こんなのセンチネル級戦闘オートマタしかいないってわけ」

「しかも、スキルはハッキング系っぽいと…これは厄介ですね…」

 えーっと…つまり…。

 敵の戦闘オートマタは『センチネル級』っていう直接戦えないタイプの奴で、無理矢理強奪するようなことはできないと。

 それってつまり…。

「二人が戦えば勝てるの?」

「本当にセンチネル級なら楽勝で勝てます」

「楽勝ね」

「ですが、敵がセンチネル級のみとは限りません。他戦闘オートマタや私達が相手しきれないくらいに大量の人間が乗り込んできたらおしまいです」

「まぁ、突入してこない時点でお察しそれは無いっていう感じだけどね」

 な、なんかこれならなんとかできそう…?

「とりあえずは無視でいいんじゃない?」

「そ、そうか

「それでも、外出時は警戒した方が良いです。なんなら、籠城作戦を取ってもいいかもしれません」

 それはそうかもしれない。とりあえずは無視ってことは、何か起きたら対処するってことだし。それなら、なるべくリスクは減らした方が良いな。

「出かける時は私かモモイ、できればモモイと一緒に出掛けた方が良いわね」

「……それって、めんどくさいからじゃないんですか?」

「ち、違うわよ!モモイの方が今は強いからその方が良いかなって思っただけよ!」

「そうですか」「ふーん…」

「あ、あんたまで何よその顔!」

「いやぁ?べつにぃ?」

 まぁ、俺としてはどっちでもいいんだけどね。

「そうだ!そしたら早速、籠城用に食料でも買ってきたら?」

「(逃げたな)」「(逃げましたね)」

「ほら、早くいかないと日が暮れちゃうわよ!」

「はいはーい」

 カンナに急かされ、モモイとくすくすと笑いながらモモイを連れてスマホと家の鍵だけ持って出かけた。


 ◇


「やはり、ここは安価なシリアルでしょうか…いえ、カップ麺も性能としてはかなり上等な物…」

「別にどっちでもいいよ」

 カップ麺を性能で見る人初めて見た。

「ダメです!作戦ですからね、しっかり吟味しなければ」

 むむむむむぅ…っとシリアルとカップ麺の性能について考えるモモイの横で俺は焼き鳥の缶詰を吟味する。俺の場合は味というか、おいしそうな方だけど。

「むぅ…」

「じゃあ、シリアルが良いんじゃないかな。カップ麺みたいに温かい必要もないし、体に良いし」

「確かにそうですが、シリアルには牛乳に頼っている栄養素があるため完璧に摂取するためには牛乳が必要です。しかし、それでは牛乳の費用が掛かってしまい、必要経費が高くなってしまいます」

「いや、お金面は気にしなくていいよ」

 それに、一食分だったらシリアルの方が安いし。

「本当ですか⁉なら、レーションを頼みましょう!」

「れ、れーしょん?」

 ローションに聞こえたけど、聞き間違いだよね。

「戦闘食です。私の配備されていたところでは人間はみんなそれを食べていました」

「へぇ…それ、買えるの?」

「はい、民間企業が作っている物もあるので通販サイトで買えるはずです」

 俺はスマホでレーションなるものを調べる。すると、案外直ぐにそれっぽいものが見つかった。

「これです、これ!」

「これ…かぁ…」

 確かに俺はついさっき、値段に関しては気にしなくて良いと言った。けど、レーションとやらはその対象外らしい。

「二千円…一食で…」

 そこそこいいお値段だ。高級焼肉弁当が買えちゃう。

「そ、そうだ。俺はシリアルが食べたい気分なんだよねぇ」

 男に二言は無いというが、そんな古い言葉知らん。mだろうがfだろうが+だろうが二言はあり。そうしよう。

「そうですか。では、シリアルにしましょうか。これ以上迷ってもきりがないですしね」

「よし、じゃあそうしよう」

 なんとか、レーションだかローションだかは買わずに済んだ。

 モモイがシリアルを選んで俺が持っているカゴの中に入れると、どこかに行ってしまったと思いきや、牛乳パックを三つほど抱えて持ってきた。

「これでいいですね」

「中に入れて良いよ」

 カゴの近くに来てもカゴの中に入れようとしないから声をかける。

「では、一本だけ」

「遠慮しなくていいのに」

「これもマスターのアンドロイドとしての務めですから。任せて下さい!」

 ほんとにいい娘だなぁ。どっかのめんどくさがり屋とは大違い。

「そういえばさ、一つ気になったんだけど」

「はい」

 セルフレジでバーコードを読み込んでる中、〝戦闘〟食と聞いてふと頭に浮かんだ。

「モモイはどうだったんだ?」

「何がです?」

「ほら、あの手紙。戻りたかったか?」

 あの時ちゃんと聞けなかった。もしかしたら、本当は戻りたかったのかもしれない。そう思って聞いてみた。

 そう思いながら牛乳を受け取ろうとモモイの方を向いた瞬間、ふと俺の目に映ったモモイの瞳には切なさが宿っていたように見えた。

「実は、私は…戻りたくないんですよね…」

「そう…なのか」

 軽く質問したつもりだったが空気が少し冷めたように感じる。

 これ以上何も聞くつもりはないし、聞こうとも思わなかった。

 まだ彼女の中で決心がついているわけではないのだろう。彼女らの存在自体少し複雑で重いものなのだし、わからなくもない。俺も脅迫状を受け取ったわけだし。

「あ、なんかごめんなさい。とりあえず、今はマスターのお傍にいたいんです」

「いや、いいよ。俺もモモイがそばにいたいって思ってくれて嬉しいよ」

「ありがとうございます」

「じゃあ買えろっか」

 支払いを終え、スーパーから出る。

 帰り道、言葉を交わすモモイは笑顔で、俺も少し強くモモイ達の側にずっといたいなと思い始めた。



「とりあえず、シリアルと牛乳、一週間三食分はあるわね。モモイ、ナイス」

 ビニール袋にいっぱいのシリアル、そして牛乳。

「…お二人さん…今更なんですけど、ほ、ほんとに三食シリアル五日続きなんですか?」

 帰って来てから思った。いや、もう時すでに遅しお寿司なんだけど…。

「低予算で直ぐに充分な栄養が取れるんだから良いでしょ?」

「味って知ってます?」

「味?食べ物食べた事ないから知らない」

 ですよねー。

「大丈夫よ。これはチョコレート味で、これは砂糖が塗してあって、これは…なんかベリーだって」

「ベリー苦手なんですが…」

「そうだったんですか?すいません。味はマスターに決めてもらえばよかったですね」

「じゃあ、混ぜて食べることね」

「えぇ…」

 けど、結局味は総じて甘いだからなぁ…飽きるのも時間の問題だなぁ。

「それじゃあ、私達は毎日交代で見張りしましょ」

「そうですね!それでいきましょう」

「決まりね。じゃあ今日は私がやるわ」

 そう言ってカンナは玄関の少し手前で座った。

「別にそこじゃなくても…」

「ダメよ。いつどこからくるかわからないじゃない

「そ、そうか」

「マスター」

「ん?」

 モモイがちょいちょいと袖を軽く引っ張って、小声で呼ぶ。

「カンナ、最初はあんな風に言ってましたけど意外と協力してくれてますね」

「そうだな」

 初対面では敵対的というか友好的ではあまりなかったみたいだけど、なんか協力的になってくれた。

「あ、本人には言っちゃダメですよ?照れて拗ねたりゴネたりするかもしれないですし」

「そうだね。協力してくれてるだけ運がいいし」

「ふふっ、案外運だけじゃないかもしれませんよ」

 え?

「カンナ、口ではあんな風に言ってますけど、本当はマスターのことそんなに嫌ってないみたいに見えます。カンナは当たりが強いですしあっちにいた頃は作戦外で周りの人間ともオートマタともあまり接しなかったんです。あ、私は別ですよ?作戦でもそれ以外でも一緒にいることが比較的多かったのでそこそこ話してました」

「そうなのか」

「そのカンナがマスターに当たりは強いですが言葉をあんなに交わすなんて珍しいです。理由はわかりませんが…。ですので本当はマスター、そこそこ信用されてますよ」

「はは、そうか。なんか嬉しいな」

「マスターもあまり気を落とさないで彼女に付き合ってあげてください」

「うん。ありがとうね。カンナもいい奴だな。顔は可愛いしルックスも整ってるし、あとはあの口がなぁ…」

「そうですねぇ、あの口がですね…」

「聞こえてるわよ」

「アッハイ!ナンデモナイデス!」「スイマセン」

 モモイと向き合ってクスクスと笑った。

 対してカンナはどうかというと、少し照れくさそうにしていた。これも本人には秘密だ。拗ねてないだけ運がいい。



 ◇



「ねぇ…もう籠城やめない?」

「なっ!あんた、私達のこれまでの苦労をなんだと思ってるの?」

「マスターどうしたんですか」

「だって、炊飯器は爆発するし電子レンジは爆発するし、冷蔵庫に至っては逆に温度下がりまくってるし」

「それはそうですが、籠城と何か関係してるんですか?」

「全部IOT家電なの!」

「なるほど、ハッキングされてるのね」

「そう!」

「じゃあ電源抜けばいいじゃない」

「冷蔵庫は!抜けない!でしょ!」

「それもそうね。というか、なんであんたはそんなイライラしてるの」

「三食シリアルが五日も続いたらそりゃイライラするわ!」

「おかしいわね…牛乳飲んでるからカルシウムでイライラはあまりしないはずなんだけど…」

「むっ!」

 俺は立ち上がって冷蔵庫に向かう。そして、扉を開けた。

「ちょ!閉めなさいよ!」

「マスタ〜寒いです〜!」

 パタンと扉を閉める。

 どういうわけか冷蔵庫は冷蔵では無く冷凍になってしまったらしく、牛乳は疎か何もかも凍ってしまったのだ。

「むん!」

 座りなおす。

「でも、どちらにせよ今日でひと段落じゃない」

「あ、そうか」

 あれ?なんかイライラがスゥーって無くなってく」

「あとは、向こうがどう出るかですね…」

 すると、

 カコン

 と音がした。

「カンナ!来た!」

 ポストの中に何かを入れた音だ。約一年とちょっとここに住んでいる俺の耳はそう言っている。

「出たわね!」

 カンナが素早くドアを開錠して外に出る。

「モモイ!」

「任せて下さい!」

 モモイも飛ぶように出ていく。

「とりゃ!」

「捕まえたか⁉」

「捕まえました!」

 俺も確認しようと外に出るが、モモイが掴んでいたのは…。

「ドローンだな」

「ドローンね」

「えーっと…軍用小型特殊装甲ドローンE415ですね」

 三人して沈黙する。

「……あぁ…やられたぁ…」

 そうだよなぁ。直接戦ったら勝ち目のない相手に自ら来るわけないよなぁ…。

「そういえばマスター、なんで気づいたんですか?」

「ポストに何か入る音が聞こえたから…ってことは手紙も一緒に!」

 ポストを開くと、これまた丁寧に封筒が一通入っていた。

「見てみましょう!」

「これはまた作戦会議が必要ね」

 ドアを開けて家に戻り、また作戦会議を行うことになった。

 今度はシリアルだけにならないと良いけど…。


「ん?…そりゃっ!」

 家の中に入った瞬間、外からバキバキメキメキッという今迄に聞いたことない硬い音が聞こえた。まるでものすごく硬い何かを壊すような…そういえば、モモイはまだ家に入ってないな。あのいかついドローンも……あ…。

「さて!作戦会議しましょ!」

 まるで一仕事終えてきたように両手をすれ違いにパンパンと叩いた。

「モモイさん…」

「はい?…さん?」

「間違えても俺にはグーは出さないでください」

「え…あ、はい」

 モモイはなるべく怒らせないようにしとこ。


「…むぅ…じゃんけんの一手を封じられてしまいました…」



『お久しぶりです。人間。

 早速ですが、引き渡さないとはどういうことですか!

 私は001と026はあなたが持つべき物じゃないって前に書きました!なのにどういうことですか!賢くないんですか!

 私、あなたの家の電子レンジと炊飯器壊したのにあれでも従わないんですか?冷蔵庫の温度が下がりまくって牛乳飲めませんでしたよね!まったく!ざまぁみろです!

 もし仮に従わないのであれば別に拷問の一つや二つあなたにしても良いんですよ!あなたを痛めつけてもいいんですよ!ですがあまり野蛮なことをするのは好きじゃないので、あなたにチャンスを与えます。

 明日の正午ピッタリにジャンク街近くの廃工場で待っています。創造主様を失望させないためにも賢い判断をしてください!

 それと、私は直接戦闘はできます!ですが、わざと攻撃してないだけです!』


「これ、俺ら宛だよね…?」

「他に誰がいるのよ」

「だよなぁ」

 あれ、デジャヴ。

 だって、これ、差出人と同じかなってくらい手紙のテイストがいきなり催促というよりお願いに変わったんだもん。

 前回の手紙の禍々しい雰囲気と殺気で満たしたような文章はどこに行ったんだろう…。手紙のテイストがいきなり催促というよりお願いに変わったような…少しマセた子供が書いたような文にも見えなくはない。

 てか、俺ん家の家電が壊れた理由お前かい!

「でも、何で今更センチネル級が直接勝負を挑んできたのでしょうか」

「そうよね」

「ヤケでも起こしたんじゃない?」

「いくらヤケになってももう少しマシな作戦の一つや二つ思いつくわよ。ほら、ハッキングとかいくらでもやりようはあるのよ?まぁ、私達をハッキングできるだけのナノマシンを保有しているとは思えないけれど」

「でも、現に戦いを挑んできてるのは勝てるような作戦を立てているからじゃないんですか…?」

「だとしたら、もうすでに攻め込んできてるだろ。家に」

「そうですよね…」

「あ!この状況を生むこと自体が作戦なんじゃないしら?私達を混乱させることが作戦とか?」

「だとしても、直接勝負して勝てる理由にはなりえないんじゃないか?」

「そっか…」

「あ、実はセンチネル級は二人が思ってるより強いとか…」

「それはない」「それはないです」

 考察が疑問を生んで疑問が考察させる。これは考えてるだけ無意味というか、答えを見つけることはできないだろう。

「これは少し警戒を強めるべきではないでしょうか?」

「そうよね。籠城作戦も延長、なんなら少しの間あんただけ身を隠してもいいかもしれないわね…」

 あまり強気でないモモイとカンナ。しかし、俺はそう思って無かった。

「でも、どうあれ、直接勝負には変わりなくてその状況は二人にとっては有利なんだろ?」

「まぁ…」

「それはそうだけど…」

「なら明日、存分に戦ってみようぜ」

「でも、それが敵の罠だとしたらどうするんですか…?」

 そう聞かれると思った。

「二人は戦闘オートマタだろ?一人は初対面の俺に不意打ちをついたんだ」

「ま、まぁ…」

「もう一人はやると決めたことは絶対に達成しようととっても熱心なんだ」

「……」

「二人ならやれるよ」

 二人とも唖然としたような表情だった。俺の言ってることが伝わってない様なそんな表情で俺をぽかんとした口で、大きく開いた目で見つめていた。

 けど、直後、

「ふふっ」「ははっ」

 と笑ってこう言う。

「そんなに言われちゃうともう任務完遂するしかないですね。マスター」

「あんたに不意打ちつけるなら戦闘スペックの劣った奴に負ける気なんてさらさらないわ」

「そうだな」

 二人に火が付いた様で安心した。

「じゃあ明日、出かけましょう」

「そうですね」

「俺、一週間くらい外出てないんだけど大丈夫かな…」

「あんたが弱気でどうするの」

「そうですよ」

「あはは、大丈夫。いざとなったら二人と一緒に戦うから」

「…センチネル級は普通の一般人レベルの人間よりかは強いわよ?」

「…マジかぁ」

 あれ、もしかして今回、俺の見せ場ない感じ?

「そ、それでも!マスターは私たちの指揮官ですから!一緒に戦ってるようなものですよ!」

「モモイぃ…」

「なので明日は一緒に頑張りましょう!ねっ!」

「そうだな。がんばるぞー!」

 えいえいおーと俺とモモイ。

「はぁ、この二人と一緒でほんとに大丈夫なのかしら」

 一抹の不安を抱えながらも勝率は十二分にある。俺は確信こそしていなかったが、それに近いくらい相手を、勝てるとこの時思っていた。

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