第114話 予選二回戦目②~すねこすり~
『にゃ~♡』
すりすり♡
「な、なんだ~!? こんな時にじゃれつくな!」
屈強な体を持つフィッシュハンターの一人に一匹の猫が脛にすりすりとじゃれつく。
今、大事な時にじゃれつかれたフィッシュハンターは猫を追い払おうとするが。
『にゃあ・・・・・・?』
悲しそうな声で鳴かれ、うっと声を詰まらしすねこすりから目を逸らし、動きを止めた。
その隙に。
「いただき~♪」
メアリーはフィッシュハンターから水晶玉を奪った。
「なっ!!」
『№85! 脱落!』
「そ、そんな・・・・・・」
一瞬の隙を突かれ水晶玉を奪われたフィッシュハンターはガックリと項垂れたままフィールドから出る。
その姿を見ながらメアリーはふへへと笑う、立派な悪人面だ。
「さ~て、この調子で行きますか!!」
と調子に乗ってるメアリーを観客席から見ているシシリーは。
「はあぁぁぁぁぁぁ~、調子に乗ってる」
クソデカ溜息を吐いた。
その横でメアリーのかなりの豹変に目が点になっているメロディーと口をポカンと開けているリン。
その一方で。
『ふっふっふっふっ、下僕め。使いこなしているようだにゃ』
タマはドヤ顔をしていた。
「使いこなしてるって事は、メアリーにあの妨害、風魔術を教えたのね」
『シシリーちゃんの言うとおりにゃ。何か良いヤツはないかと言われて教えたのにゃ』
「・・・・・・・・・・・・ふ~ん」
タマの話にシシリーは素っ気なく返すと暴れ回っているメアリーに目を向ける。
メアリーに向ける目は先程の呆れたようなものではなく何処か心配げな眼差しであった。
――第二フィールド。
「いただき!!」
「あっ!! くそ!!」
タマから教えてもらった妨害術、その名も『すねこすり』。
風魔法で作り上げた猫・すねこすりで相手を妨害し、動きが止まったところで水晶玉を奪う。
実に良い。実に順調である。
辺りを見渡すと殆どの人が居ない、ふふふ、これは私の勝利で決まりかな?
「なかなか面白い妨害術を使っているのですね」
調子に乗ってる私の耳に冷静なユリウスくんの声が届く。
そうだ、ユリウスくんが居るんだった。調子に乗りまくっていた私は急激に冷静になる反面、すねこすり達で動きを止めればイケるんじゃね? という思いもあった。
だから、気付かれないようにすねこすり達をユリウスくんに仕向けようとした。
「悪戯な風に仕置きの雨を」
ユリウスくんが天然の魔石が付けられた釣竿を杖のように振るうと雨が降り始めた。ただの雨じゃない、その証拠に雨が降っているのはフィールドだけ。
その雨に触れた途端、すねこすり達は一匹残らず消えてしまった。
「え? え・・・・・・?」
「水面は真実を映す。僕に風の妨害術は効きませんよ」
すねこすり達が消えて呆然としている私に向けて、ユリウスくんは釣竿を振り上げた。
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