第9話 魔法魚(マジカルフィッシュ)

「これは・・・・・・」

「嬢ちゃん、すごいもん釣り上げたな」

「は、はははは・・・・・・」


 大物、緑色の風を纏った巨大魚をタマの力、招き猫の力を使って釣り上げた私は大きすぎたというのもあるけど見た事が無い魚だったしどうすれば良いか解らないからマイケルさんをロージンさんを呼んだ。

 これ食べれるのかな?


 釣れた魚を見せたら、マイケルさんは驚きの声を上げ。


「う、ううう、まさかこの年で魔法魚マジカルフィッシュを、この町で釣れた魔法魚を目にすることが出来るとは・・・・・・」


 ロージンさんは感激し、泣いていた。

 なぜ?


「おいおい、ロージンの爺さん。泣きすぎじゃないか?」

「ああ、すまん。う~んと昔、儂の祖父さんが子供の頃は魔法魚はこの港で沢山釣れたそうだ」


 ロージンさんはそう切り出すと語り出す。


 ロージンさんの祖父が子供の頃、この町の漁業が盛んだった頃は魔法魚――魔力を宿した魚が沢山釣れた。

 だが、年々、魔法魚の漁獲量は減っていき、そのせいで漁師達は次々と魔法魚が獲れる海洋都市・オリヴィエへと移住。

 これは不味いと当時の町長は町民達に協力を仰ぎ、魔法魚の養殖場を作る事にした。


「だが、それは上手くいかなかった」

「どうしてですか?」

「養殖場計画の中心になったのが移住者達でな、その事を快く思わなかった連中、移住者を嫌う町民達が妨害してな」

「え、ええ~・・・・・・」


 当然、その後は裁判となり、妨害してきた人達は先住者の自分達の方が有利だと高をくくっていたが妨害や嫌がらせの証拠があったため、有罪に。

 それ以来、移住者を嫌う町民達は移住者に絡まなくなったとか。

 裁判に勝ったものの、妨害で心折れた計画者達はやる気を無くしてしまい、養殖場計画は中止になったという。


「そして、この町で魔法魚の姿は見えなくなった」

「じゃあ、私が釣るまで全然、姿形も無かったって訳ですね」

「そうだ。祖父様から話でしか聞いたことがなかったものが、今、こうして儂の目の前に、ううう~」

「爺さん、泣きたいくらい感激してるところ悪いがこの魚どうするんだ?」


 再び泣き出したロージンさんにマイケルさんはやれやれと言った感じで聞く。

 ロージンさん達を呼び出した本来の理由、釣った魚はどうするの問題がまだ解決していない。

 どうすればいいのこの魚。食べられるの? いや、でも、食べるのはタマだしな~とタマを見るとヘソ天で寝ていた、本当に暢気だな、コイツ。


「儂の孫娘が働いているオリヴィエの釣り協会に連絡すれば引き取って換金してくれるはずじゃ」

「本当ですか!? お金に!?」

「今、市場で出回ってる魔法魚の殆どは養殖産ばかりでね、天然の魔法魚は殆ど見かけないから高値で取引されているんだよ。しかもこれだけの大きさなら良い値が付くと思うぞ」


 言い値が付くという言葉を聞いてテンションが高くなる。

 これで少し良い生活が・・・・・・・・・・・・。


――ドサ。


「嬢ちゃん!?」

「メアリーちゃん!?」


 あれ? 可笑しいな。

 急に眠たくなっちゃった。疲れが出てきたのかな?

 マイケルさんとロージンさんが急に倒れた私に驚いてる。

 心配かけるのはよくない、起き上がらないと、でも凄く眠い。


 プツリと糸が切れるように私の意識はそこで途絶えた。


・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


 目を開けると。


『起きたか下僕』

「うわあぁぁぁぁぁぁ!!」


 タマの顔。

 驚きの声を上げるとタマは不服そうに驚くことはにゃいだろう!! と抗議された。

 目を開けたら猫に見下ろされてるなんて誰だって驚くよ!! そう言い返そうとしたら。


『具合はどうにゃ?』

「具合? そうだ! 私、あの時、凄く眠くなって倒れて。あと此処は何処!?」

『此処はワガハイと下僕の家の寝室にゃ。お前が倒れたのはワガハイの力を使ったからにゃ』

「え? それってどういう事?」

『正確に言えばお前があの時、巨大魚を引っ張り上げる力を招いた時、結構な量の魔力を消費したにゃ。そのせいでお前はぶっ倒れたにゃ』


 つまり、招き猫の力を使って魔力を大量消費したから倒れたと。

 という事は。


「アンタ!! 魔力を大量消費するの知ってたって訳!?」

『そうにゃ、知ってたにゃ。だけど、あの時に言ってたらお前は使わないと思ったから黙ってたにゃ』

「・・・・・・うぅ」


 タマの言うとおり、言われてたら使わなかった。

 普通の量の魔力しか持ってない私には大量消費は辛い、倒れるのを知っているから。

 だから、タマは黙っていた。黙っていたから、あの巨大魚は釣れた。

 文句言えない。


『まあ、今からワガハイの招き猫の力について教えるにゃ。

 目に見えるもの、下僕の周りにあるものとか物体があるもの、例を挙げるとしたら魚とかなら消費は少量で済むにゃ。だけど、目に見えないものを招くときは大量に消費するにゃ』

「あの時は引っ張り上げる力、見えないものを招いたから大量消費したって事ね」

『そうにゃ。ワガハイの招き猫の力は何でも招くことが出来る、けど、招くものによって魔力消費が異なる。使う時は招くものをしっかり考えて使って欲しいにゃ』


 タマの忠告に私は頷く。

 招き猫の力、何でも招くことが出来る分、使いどころを誤ると魔力を大量消費して倒れる危険性がある。

 肝に銘じておかないと倒れた場所によっては命の危険に晒されるかもしれない。

 多様しないように気をつけないと!!


――コンコン。


 そう強く決意していると控えめなノックが。

 ノックした人物に入って良いですよと声をかける。

 誰だろう、マイケルさんかな?


「メアリーお嬢様。お目覚めになられたのですね!!」


 ドアを開けて入ってきた人物に私は驚く。


「イザベラ!?」

「はい、お久しぶりです。お嬢様」

『ふへへへへ、美人さんにゃ~』

(このエロ猫め!!)


 イザベラの登場にデレデレするタマを睨付けた。

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