家出令嬢と猫神様!〜家出した貴族令嬢と自称猫神様のスローじゃにゃいライフ〜

うにどん

【家出編】実母から異母姉の婚約者を奪えと言われたから家出しました

家出編 プロローグ 家出

第1話 家出した

 私は大貴族と名高い名家、ローリエ侯爵家の次女、メアリー・ローリエはガタンゴトンと揺れる荷車に乗りながら目的地に向かっている。

 目指すは祖母が幼き頃、療養地として過ごした田舎町・ローラタウン。

 どうして、大貴族のご令嬢がローラタウンに向かっているのかって?

 双子の妹であるメロディーにしか興味がない実母から異母姉の婚約者を奪えと言われたからだ。


 話は二日前に遡る。


 私には五歳上の腹違いの姉が居る。

 名はステファニー。

 透き通るような白い肌に白銀に輝く髪、澄み切った空を思わせるような蒼い瞳は女神と称えられる程の美貌の持ち主。

 当然、次期侯爵として非常に優秀。

 その姉が婚約した。

 相手はこの国を治める王族の第三王子・アレフ様。

 公妾との間に生まれ、王位継承権を持たない王子であるが穏やかな性格に整った顔立ち、兄二人に劣らぬ優秀さで王宮の者だけでなく国民からも慕われる人だ。

 誰もが姉の婚約を祝福したがたった一人、それを快く思わないのが居た。

 姉にとっては継母にあたる人物、そう私の実母だ。


 実母は異母姉を嫌っていた。

 自分よりも美しいから。


 実母は幼い頃から周りから美貌を褒め称えられていた。

 だから、自分がこの世で一番だと思っていた。異母姉に会うまでは。

 結婚してから、周りは自分ではなく異母姉ばかり美しいと称える。その事に実母は怒りを募らせていき、いつか痛い目に遭わせてやろうと考えていたのだろう。

 そして、異母姉に婚約で実母はあることを思いついた。

 それは。


「メアリー!! あの忌々しい異母姉から婚約者を奪いなさい!!」

「はい?」


 私に異母姉の婚約者を奪わせることだった。


 異母姉の婚約が発表された夜。

 私室で本を読んでいるとノックもせずに実母がやって来たと思ったら、突然言われた言葉に私はどんな反応していいか解らず聞き返した。


「お母様、それはどういう意味ですか?」

「本当にお前はメロディーよりも外見だけでなく頭も劣っているのね!! あの娘から婚約者を奪えといったのよ!!」


 聞き返した私に苛つきながら母は同じ事を言う。それだけで母が本気で言ってるのだと解った。

 この人は異母姉に対して嫌がらせを本気でするつもりなのだ、私を巻き込んで。


「本当はワタクシに似て美しいメロディーが適役なのだけど可愛い可愛いメロディーを汚れ役なんてさせたくないしね。ワタクシにちっとも似てない貴女なら、汚れ役にはピッタリ!! キャハハハハ!!」


 実母の口から実の娘に対する言葉とは思えない事を言われても私は乾いた笑いしか出なかった。

 物心ついた時から私はこの人に、ううん、お祖母様以外の家族から愛情を感じたことがない。


 父は亡き前妻に似た異母姉を溺愛し、後妻である母、実の娘である私とメロディーに興味がない。

 異母姉は次期侯爵として日々勉強の毎日で忙しく数回会ったことがあるぐらい。それに父同様、私達に興味がないようだ。

 実母は自分に似たメロディーばかりを溺愛し父に似た私には興味がない、時々、私とメロディーを比較してはバカにしてくるけど。

 メロディーはいつも母の傍でニコニコと笑ってばかりで何を考えているのか解らない。


 周りから大貴族の娘というだけでチヤホヤされる立場の私は家では居ない者扱いされていた。


 そんな私が拗ねることなく育ったのは、お祖母様が私を愛し育ててくれたから。


 幼い頃、継母と上手くいかず家庭内で孤立した経験を持つお祖母様は昔の自分と私を重ね、寂しい思いをさせまいと私に手を差し伸べた。

 同情からの気遣いだったかもしれない、けど、家に居ながら孤独に過していた私にとって救いだったのは間違いない。

 可愛い可愛い孫娘と惜しみなく愛情を与え、時には侯爵家の人間として厳しく指導し、私を育ててくれたお祖母様は去年の暮れに病で亡くなった。

 お祖母様の最期を悲しんだのは私だけという寂しいもので実母は邪魔者がいなくなったと喜んでたっけ。

 それから、暫くして異母姉の婚約が発表された。


「明日、顔合わせがあるから、そこで家族紹介も兼ねてお茶会をするそうよ。そこで近づいて気を引きなさい。それじゃあ、メロディーが待ってるから」


 実母は言いたい事を言って部屋から出て行った。

 残された私は。


「は、ははは・・・・・・。よし!! 家出しよう!!」


 嫌がらせのために利用されるなんてまっぴらゴメン!!

 そう思った私は隠し持っていた、お祖母様が亡くなる前、家を出たくなったら開けなさいと渡された手紙を開けた。

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