第14話:覆い被さるような

関目線―――




「今なんと?」


「…広報部からの情報が全てです。それ以上は答えかねます。」


 俺らを囲う報道陣は減らず、逃げ道なんてなかった。


 次々くる悪意に満ち溢れた質問もきちんとした態度で答える小早は、参謀としての小早だった。


「王子中尉は安宅大尉が亡くなって関中尉に乗り換えたという噂は本当ですか?」


 なんだ、なんでこんなこと聞かれなきゃならない。


 チームはチームじゃダメなのか。


「王子中尉は随分痩せておりますが、コネ入学コネ飛び級の噂がありますが、本当のところどうなんですか?」


「士官学校の生徒とはいえ軍人なら国民に説明義務がありますよね?答えてください!!」


「国民や国を守る軍人が恋愛にうつつを抜かしていたという事実をどう受け止めていられますか?」


「安宅大尉は卒検首席と言われますが、自分の身すら守れないということについてどのように仲間としてお考えですか?」


「安宅大尉は本当は弱かった、違いますか?」


 全部ちがう…。


「全て広報部を通して下さい。中尉行こう。」


 無理矢理押し切ろうとする小早の指示に従う。


「お二人のせいで安宅大尉が亡くなったのではないですか?」


「っ!」


 小早の動きが止まった。


 小早の表情は髪が邪魔をして見えない。


「中尉…。行くぞ。」


 俺も小早も安宅の死は自分のせいだと思っている。


 戦場ではよくある仕方ないことだと言われたが、2人ともそんなこと納得出来るわけない。


「御遺族にはまだ小学生に上がる前の妹さんもいらっしゃったそうですが、御遺族に対して申し訳ないと思わないのですか!?」


 小早がその質問をしたアナウンサーに近づく。


「安宅…大尉は立派な方でした。それは紛れもない事実です。その安宅大尉を死なせてしまったこともまた事実であります。申し訳ありませんでした。」


 深々と頭を下げる小早にならい頭を下げる。


 小早の目はなみだで濡れていた。


 くそ…。


「では、なぜこのように映画なんか見て楽しんでいるのですか?申し訳ないならそれなりの行動をとられてはいかがです?」


 頭を下げたままの小早に覗き込むようにし言葉を投げつけるリポーター。


「あなたのせいで安宅大尉は亡くなったのですよ?何か答えてくださいませんか?」


「うちの…せい。安宅…くん。」


「っ!小早!!」


 ふらっと意識をなくした小早をすぐさま受け止める。


「士官学校ではそのような演技もならうのですか!?」


 てめぇ…!

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