空が敵になった日。

吉川元景

第1話:王子小早

 小早目線―

「みなさんおはようございます。本日の連絡です。」

 その放送の音さえ吐き気に代わりそうで、耳をふさぐ一人の女の子。

 彼女の名前は、王子 小早おうじ こはや。八王子本部立川基地所属高等士官学校の3年A組中山班所属。卒業試験の翌日に若い神力じんりき使い特有の“副作用”によって、寝込んでいた。

「王子先輩ー。」

「あ…ごめん。副作用だから…。」

「分かりました。」

 遠くから、「神力使いでも神力が強い人は副作用も大きくて大変だ。」という声が聞こえる。

 副作用とは、若い神力使いはまだ神力を使うことに慣れておらず、月に1回副作用として頭痛や吐き気、腹痛等の不調が1~3日ほどつづくことである。

「王子先輩副作用だって…。」

「じゃあまだ卒業試験の結果見てないんだ!」

「見なくたって合格に決まってるじゃん!」

「違うよ、今年は数年に1度の逸材だと言われる人が3人もそろっているんだから、誰が首席卒業かって話だよ。」

「主席は安宅先輩でしょ! 指令、先頭補佐、実技、神力の量…いうことなしじゃん!」

「いやいや、関先輩の討伐数の方が上でしょう!」

「二人とも何言ってるの? 現役使いにもこのレベルの神力を持ってる人はいないと言われた王子先輩でしょ。神力なんて生まれつきなんだから、そこから差があったら敵わないよね。いいなぁ。」

 そんな後輩たちの声を聴き、

「好き勝手言って…。」と呟きつつ、携帯を見ると、噂をされていた安宅あたけから連絡が来ていた。

 安宅は同じ3年A組、中山班。3年になると実技担当の先生について学ぶため、班行動になる。その班で班長をやっている男の子だ。

 

 小早、大丈夫? 必要書類全部もらってくるし、他にほしいものあったら届けるから寝ててね(^▽^)/


「安宅くん、ありがとう。」とつぶやき、再度布団にもぐり、目を閉じた。

 

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