第3話アンブレラ伊藤:転生

 また会いましたね。

 皆さんごきげんよう。


 百貨店の傘コーナーにて、オレンジ色の傘こと、わたくし、アンブレラ伊藤がお送りしております。


 浮気がバレて、ホームランされた傘男に只今持たれてレジに並んでおります。


 わたくし、アンブレラ伊藤は転生し新しく生まれ変わりました。

 もうなろう小説のブームにわたくしも乗ったと言っても、過言ではありませんね。


 若干の差異があるとすれば、異世界ではないという事ぐらいのものです。


 傘がまた傘として転生するなんて事は、平凡極まりないと思われているそこのあなた。

 傘だって雨を防ぐ以外にも意外と用途はあるものなのです。


 なんたってわたくし、先程は大リーガーもびっくりなバットになって浮気の断罪を行ったり、置いてあるだけで浮気の各たる証拠にもなった訳です。

 言わば、現代の聖剣エクスカリバーみたいなものですね。


 そして、生まれ変わったわたくしを傘男は新しく買うと言う事は、つまりカノジョとの恋の終わりを意味しているのだと思われます。

 1つの恋が終わり、また新しい恋に向かう傘男を見るに、恋愛とは無常なものであり、その行き交う様も、またこの世の理のような達観さえ覚えてしまうわたくしなのです。


 では、男がこれからわたくしを持って向かう場所はどこのなのかというと、とあるバーになっています。

 今日の天気は悪く、ちょうどわたくしが重宝すると言うよりかは、本来の使い道をするのにピッタリなわけであります。


 さて、買いたての傘を持って傘男が現れたのバーのカウンター。

 そこには花の香りをさせた美人が、待っているではありませんか。


 傘男が浮ついてしまったのも納得がいく訳であります。


 そうです。

 こちらの女性こそ、元々のわたくしの持ち主であり、純粋な笑みを浮かべて傘男を待っていた健気な女性であります。


 わたくしは傘男の手から女性の元へと帰り、今、転生冒険の旅は終わるという訳であります。


 ようやく帰ってきた故郷の感覚にわたくし、先程持ってくる間に濡れてしまった雨粒が、まるで感動の涙のように滴っているではありませんか。

 この旅路のフィナーレを迎えるように傘男は、乾杯をするのです。


 それでは皆さん、お別れの時間がやって参りました。

 本日もアンブレラ伊藤がお送りしました。


 シーユーバイバーイ。

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