第4話 結婚しよう

「ん〜ッ!!!」


彼女が口にしているのはミラノ風ドリア。


サイゼリヤの定番であり、彼女とサイゼリヤに来れば7割以上の確率でそれを頼んでいた。


昔と変わらないそのメニューを前にし、大人になってもう数百円の差で頼むものを変えるほど困ってないはずなのに、彼女は昔そのまんまの満面の笑みを浮かべていた。


あぁ、俺はなんて馬鹿だったんだろう。


勝手に大人になった気になって、変なレッテル貼り付けて世界を見て、怖がっていた。


昔の俺たちはそんなもの気にせずにただ純粋にサイゼリヤを楽しんでたはずなのに。


彼女と俺の関係は、何一つ変わってないというのに。


そして、この気持ちも……。


「好きだなぁ……」


昔から言えなかった言葉が、ぽろりとこぼれた。


「ッ!!!?」


「結婚、したい……な…………」


いや、それどころか、それ以上の気持ちがこぼれた。


ずっとずっと昔からそう伝えたかったのに、結局言えずにこごできて。図体ばかりデカくなっちまった。


はぁ、今日もやっと会えたというのに、言えずに帰るんだろうな。


俺は自虐気味に笑って、ピザでもつまもうかと顔を上げ……


「んぁ?」


……実に間抜けな声を出してしまった。


いや、それ以上に間抜けのやつが目の前にいた。


スプーンによそったミラノ風ドリアを口に運びかけた姿で呆然とこちらを見つめ続ける彼女が。


ゆめはと俺と視線が合うと、彼女はその格好のままみるみるうちに頬を朱に染めていく。


へ? もしかして……。


「ん〜〜〜〜〜!!!!! しようっ!! 結婚しようっ!!!」


再起動した彼女はバンと机に手をついて、こちらを見つめた。


その顔はいつものふざけ顔ではなく、本気のマジ顔だった。


…………え? マジ?

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