第347話 猛れ、ワイルド・ワールド
「この外道めが、我らをあざ笑うのみで無く、目前で
「待てラ・イル、追えば奴の思う壺である! 黒太子の目的は十中八九我等必勝の陣の崩壊。この場に陣取って入れば、大きく迂回するで無ければ大修道院まで辿り着けぬのだ!」
「……であるがザントライユ!」
「民の避難は済んでいる、都の崩壊がなんだ、奴は誘っているのだぞ!」
そう言いながらも自らも苦心している様子のザントライユに諭されながら、大きく牙を剥き出して憤怒を堪えるラ・イル。
すると目先の城下、見渡す上り勾配の各所より、空高く爆炎が上がりみるみると炎が家々に燃え移っていくのが見える。
故郷の燃え盛っていく光景に騎士達は酷く狼狽し、バトルアクスを地に付いたラ・イルは怒りを含んだ血眼をザントライユへと上げ始めた。
「この様な屈辱……他ならぬ我等に向かって、おのれ!!」
「ラ・イル……」
「言うなればここは我等が第二の故郷。あの様な悪党に好き勝手されて良いものか……」
火薬を使っているのか、驚く程に手際良く逆巻いていく火炎。ごうごうと広がっていく黒炎を前に、ラ・イルはザントライユの肩を掴んでいた。
「我等は猛将である。望む全てをこの激情と力で奪い、守り通して来た!」
「……!」
「その我等が! 何故こんな煮え湯を飲まねばならぬ!」
「ラ・イル」
「陣を崩されるからなんだ。罠であるからなんだ……ジャンヌを捕らえられたあの日の様に、一も二もなく敵陣へと正面切り込んでいくのだ!」
「……」
「貴様と二人でなら、通せぬ
――これは罠である。誰でも無い、あの冷酷無比なるエドワード三世によって敷かれた無慈悲なる罠。
そんな事など、彼等は皆理解していた。
「この胸に逆巻く獅子の如くハートよ……いま奮い立ち、その牙を研ぎ澄ませ……」
「ザントライユ……!」
「良いだろうラ・イル……護るべくもの護れずして何が猛将か……今ここに、貴様と肩を並べる双頭の獅子と化けよう!」
滾り合う眼光を交え、力強くバトルアクスが重なって火花を散らした。
惑う騎士達へと振り返り、ラ・イルはザントライユと共に進軍する。
「バァーッハッハッハ! 明日さえ見ぬまま、栄光の未来を見据えようぞ!」
「ナァーッハッハッハ! 無策だなんだと知った事か! 我等はこうしてのし上がってきたのだ!」
獣の様な視線が混じり合うと、二人の歯牙がみるみると巨大化していき、その身を野獣へと変えていく。
騎士が猛り、故郷を奪還するべく奮起していく――
「行こうぞザントライユ! あの日のように……なぁ!」
「ここはルーアンである! なれば今度こそ悲願を!」
「「『
――そこに二人の将が巨大な獅子へと変化していた。
「オオオオオオオ!!!」
「アアアアアアア!!!」
そして二足で立ち上がり、バトルアクスを強く打ち合う。ラ・イルの放つ溶岩が、ザントライユの上げる旋風が、凄まじい熱波となって獣の雄叫びを轟かせていった――
陣形を解いた騎士達が、破壊を色濃く残していくエドワードの通る道筋を目掛け、全軍で突撃を開始した――
「これ以上、俺達の世界を好きにさせてなるものかぁ!」
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