たかが詩じゃないか

詩音 悠

『懐かない猫』

霧に湿った街の灯に 

揺らめく影が細く伸びて

静かに心を揺さぶって 

過去へと誘う

私の腕を振りほどき 

振り向きもせず去っていった

あなたの瞳を思い出し 

涙を溢した

深い眠りにつきたい 

許されるのなら

理性を手放して 

人知れず消えて行きたい

絶え間なく降る雨の中 

彷徨い歩く孤独の海

ひたひたと寄せる哀しみに 

破滅を夢見て



懐かない猫みたいだね 

あなたは私をそう呼んだ

月の下で咲く花のよう 

囁いてくれた

上手に甘えられなくて 

微笑むだけの私だった

あなたの言葉を思い出し 

涙に溺れた

深い眠りにつきたい 

許されるのなら

戯言ではないの 

人知れず消えて行きたい

誰か私を抱きしめて 

ひと夜の相手でもいいから

キリキリと孤独かみ締めて 

闇夜に溶けてく



全てを見透かされていた 

裏切られているとは知らず

戸惑いながらも身を委ね 

激しく愛され

何もかも忘れるほどに 

無防備になり信じすぎた

あなたの吐息を思い出し 

涙は枯れたの

深い眠りにつきたい 

許されるのなら

ためらいは捨て去り 

人知れず消えて行きたい

快楽を貪るだけが 

あなたの愛だと知ったから

ヒリヒリと痛い傷痕は 

血を流している

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