一と十二と薔薇の花束

藤泉都理

なけなしの勇気だったんだ 彼(階段小説)




朝。

帰る。

昼日中。

踵を返す。

火点し頃に。

やっと着いて。

スマホを出して。

呼び出そうとして。

家の無灯に気づいて。

へたれた花に気づいて。

諦めろ諦めろあきらめろ。

点滅する電灯が追い立てる。

足早に大股になって足は動く。

安堵情けなさ苦しさが綯交ぜだ。

いいのかこれでいいんだこれでと。

一生懸命宥めて押し潰して奥底へと。

よかったよかった変わらぬ関係のまま。

本当にいいのか変えたかったはずなのに。

安堵情けなさ苦しさが乱れに乱れまくって。

いやだいやだいやだと騒ぎ立てる身体髪膚が。

これ不良品で捨てるのもったいないからやるよ。

運命だとときめかせればいいのかわからないまま。

捲し立てて無言の彼女に押し付けて脱兎の如く逃走。

よかったよかったよかったんだこれで変わらぬ関係だ。

草木も眠る丑三つ時に彼女から花束を貰わなければの話。

赤白桃青黄橙紫緑紅緋濃紅黒十二本の薔薇に託された想い。

返せないだろうがこれからこつこつと彼女に返していきます。












(2022.2.11)


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