〜14話€10年前の悲劇〜
コトは10年前のスプーンで起きたことをアルトに話し始めた
コト「その頃私達4人とリツさん、ステラ姉の6人は子供の頃からずっと一緒に遊んでいる仲だったの」
アルト「え?ステラさんは分かるけど…あの無愛想でコト達とも気まづい感じだったアイツが?」
コト「リツさんだって一緒に遊んでた頃はあんな感じじゃなかったの」
アルト「一体何があったんだよ」
コト「10年前…デノールの兵士たちがたくさんスプーンに攻めてきて、みんなが住んでる住宅街を襲ったの。私たちは今みたいな感じで6人で公園で遊んでたおかげで敵に会うことも無く避難所に行けて、そこでみんな家族と再会できたんだけど…」
アルト「まさか…」
コト「うん、リツさんの家族だけはどこにもいなかったの。すぐに隊員さんに調べてもらったらリツさんの弟さんがデノールに連れ去られて、それを守ろうとしたご両親はその場で殺されたって・・・そう聞かされたリツさんは自分が友達と遊ばなきゃ…って考えちゃったみたいで、それからはずっと今のように1人で行動するようになっちゃったの。その後もスプーン国家の正式な隊員になったリツさんはずっとトレーニングしたり能力を磨いたりしてばっかなの。全ては連れ去られた弟を取り戻すためにって…」
コトは話の途中、目から涙を出ながらもアルトにリツの話を最後までした
アルト(それってまるで今の俺みたいな…)
ひー「あ!アルトくんがコトちゃん泣かせてるぞ!」
あっきー「おーいコトどしたー?」
アルトが自分とリツを重ねて考え込むのに集中しすぎて周りが見えなくなっていたら、模擬戦を終えた2人とそれを見ていたミサキがコトを見て近寄ってきた
アルト「え、ちょっ違うんだってコトがアイツの…リツの話をしてきて急に!!」
アルトがそう言うとさっきまで和気あいあいとしてたその場の雰囲気は一気に湿っぽく、しんみりした雰囲気になった
アルト「なんだよ、みんなアイツのこと気にしてんのかよ。俺はあいつのどこが良いのかさっぱり分かんねぇぞ?」
ミサキ「良くも悪くもリツさんは私達のまとめ役みたいな人だったのよ。昔からリツさんと特に仲が良かったステラ姉は10年前のあの日以来1人になろうとするリツさんに着いて行くようになって、私達と過ごすことが徐々に無くなっていったの」
アルト「そうは言うけどよ、アイツ1人いたところで両親と同じように殺されちまってただろ?なんでそんなに責任感じてんだよ」
あっきー「りつぅは強いよ、昔から」
ひー「俺らって今ではこんなに仲良いけど昔はたくさん喧嘩してたんだ」
ミサキ「本当に3人ともよく喧嘩してたよね!毎回ステラ姉に止めてもらうまでずっと殴り合いしてた気がする」
コト「でもリツさんが負けたところ1回も見たことない…」
あっきー「なんか改めて説明されると…」
ひー「俺らすごい弱そうに聞こえるな」
そんなやり取りをしてみんなが笑い合い、さっきまでのしんみりした雰囲気がだんだんいつも通りに戻ってきた
アルト「そう言えばユウさんはどこで知り合ったんですか?」
ひー「ユウさんは途中からだけど、俺らの家の近くの林のところに道場があってさ!そこの生徒さんだったんだ!」
あっきー「散歩してたユウさんと俺らが出会ったのがきっかけだったよなぁ」
ミサキ「とにかく!アルトくんがなんでユウさんに連れられてきたのかは知らないけどさ、たぶん強くなるためでしょ?だったらユウさんはきっとリツさんに会わせるためにアルトくんをスプーンに連れてきたんだと思うよ!」
あっきー「そうは言うけど、アルトが良いなら俺らとゆっくり強くなるってのもアリなんだぞ?」
ひー「模擬戦の相手も増えるしな!」
アルト「4人ともありがと、でも俺には時間が無いんだ…だから行ってくる!」
そう言ってアルトはリツがいるトレーニングルームへと走っていった
その表情は何か目標を見つけたような高みを目指す前向きな顔だった
アルトがトレーニングルームに戻るとリツとユウが筋力トレーニングをしていて、ステラは相変わらずそれを眺めていた
ユウ「リツさんもっとです!もっとゆっくりやるんです!」
リツ「そんなこと言ったって…これ以上ゆっくりやったら…」
ガチャンッ
ステラ「あーあともう少しだったのに、リツくんって本当に筋力だけは全く無いよねぇ」
リツ「うるせぇ、だからこうやってトレーニングしてるんだろうが」
アルト(コトが言ってた通り本当に昔は仲が良かったんだろうな…)
遠くで話している3人の会話にどこか馴染み深さを感じさせられながら、アルトは3人に近寄っていった
アルト「あの!」
ユウ「お、帰ってきましたね」
ステラ「おかえりアルトくん!」
リツ「模擬戦でアイツらに負けて恥ずかしくて逃げてきたのか?」
アルト「・・・教えてくれ」
リツ「は?」
アルト「俺は強くならなきゃいけねぇんだ…今はまだ自分が弱いことも分かってる!だから頼む!俺に強くなる方法を教えてくれ!」
リツ「ユウさん、何かうるさいヤツが来たんであとは任せます。俺は2階のプールに行ってきます」
そう言ってその場を立ち去ろうとするリツの前に走っていきアルトは土下座した
アルト「お願いします…俺を強くしてください…」
ステラ「私からもお願い…この子あの時のリツくんに」
リツ「うるさい!アルトてめぇ来た時からずっとムカつくんだよ!なぜすぐに人を頼る、なぜ努力しようとしない、そんな考えのままならお前は一生己の殻を破ることはできねぇぞ!!」
アルト「!!!」
アルトは自分の今までの行動を振り返り、土下座した体制のまま動かなくなった
ステラ「さすがに言い過ぎじゃ…どうしたのリツくん…」
リツ「俺はこれからプールで体力トレーニングをしてくる。これは俺が最初に始めたトレーニングでもある。俺に着いてこれる自信があるやつ以外は邪魔だから来るなよ!」
アルト「え…?」
アルトはリツの方を振り返ると、もうリツは部屋を出るところだった
アルト「待ってください!リツさん!」
ユウ「あーゆう所は昔から変わってませんね」
ステラ「どうしちゃったのかと思ったじゃん!ビックリさせないでよ!もぉ!」
アルトがリツの後を走って追いかけて行ったのを見て、安心したユウとステラも話しながらその後を追って行った・・・
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