第31話 祐介扉の向こうへ
冴子が部屋に入るとそこには祐介が部屋の真ん中で胡坐をかいて冴子に向かって手を振っていた。
よく見ると祐介の額から汗が垂れていた。
「よ、よう。」
「今この部屋から女性の嬌声のような声が聞こえたが、祐介、本用に部屋の片づけをしていたのか?」
冴子は祐介の部屋を見渡しながら言う。
「おじゃまします。」
美花も冴子に続いて部屋に入ってくる。
祐介の額から汗が一滴垂れる。
「いや~、その、ねぇ?」
祐介は冴子の質問にしどろもどろになっている。
あ、あぶねー。今のところまだ気が付いて無いけどこのままじゃ時間の問題だ。だってただベッドの上に愛深を寝かせて毛布を掛けているだけだからな。そして、そのせいで布団が不自然なふくらみをしている。どうする、どうする、どうする、・・・・
「・・すけ、ゆうすけ、祐介?」
美花が座り込んでいる祐介の顔をしゃがんで覗き込みながら祐介を呼んでいる。
それに気づき祐介はビクッと体が跳ねる。
「ぅえ?、え、何?どうしたの?」
「それは、こっちのセリフだよ。急に下向いて、呼んでも返事しなくなるし、どうしたの?」
「ああ、ごめん、ちょっと・・・地獄を揺さぶる人のこと考えてた。」
祐介は少し考えた後に言う。
「考え事してたんだ、良かった体調が悪いのかと思ったよ。」
美花は祐介の前に座り直す。
祐介が顔を上げると冴子が布団に手を伸ばしかけていた。
それを見た祐介の顔から一瞬で血の気が引いた。
そして次の瞬間には体が冴子の方に動いていた。
「ちょ、ちょっとまったー!!!」
祐介は大声を出しながら冴子の腕を掴もうとする。
迫ってくる祐介に気が付いた冴子はつかもうとしてくる祐介の腕を逆につかみ返した。
しかし、祐介の勢いは止まらず祐介は冴子にぶつかる。
「うわっ!」「くっ!」
祐介と冴子はそのまま倒れてしまった。
「二人とも大丈夫!?」
心配する美花が見たのは倒れた冴子の上に祐介が重なるように倒れていた。
「いてて、ごめん冴子。すぐにどくよ。」
そう言って祐介はすぐに体を起こす。
ふにゅ
体を起こそうとする祐介の手に柔らかい感触があった。
「きゃっ!」
祐介が体を起こすと少し前に聞いたような甘い声が聞こえた。
祐介は声のする方を見ると顔を赤らめながらも手で口を押える冴子の姿があった。
次に視界に入ったのは起き上がるときに体を支えていた手だった。
手を見ると冴子の胸を鷲掴みしていた。
祐介は無意識に鷲掴みしているものを軽く握る。
「ん˝うっ」
すると冴子の手で抑えている口から再び甘い声が聞こえてくる。
その声を聴いて祐介は我に返る。
すぐさままたがっていた冴子から離れる。
「ご、ごめん。冴子。」
「え、あ、あぁ。」
さっきの声、私が出したのか?あんな声、今まで一度も、
冴子は自分が出した声に驚きを隠せないでいた。
冴子が顔を上げると心配そうに見てくる美花と慌てている祐介の姿が見えた。
部屋は沈黙の時間が数秒続いている。
そんな中で冴子が咳払いをして美花を部屋に残して祐介を部屋の外に連れ出す。
「ごめん美花、少しだけそこの祐介と話してきていいかな?」
冴子の声には怒りと圧が込められているのが聞いていてわかった。
「うん、でも祐介も悪気があったわけじゃないだろうし、あんまり厳しくしすぎないでね。」
「そうしたいけど、それは祐介しだいかな。じゃあ、祐介。美花の許しももらったから、ちょっときてもらっていいかな?」
「はい。」
祐介の顔は青ざめてその顔は全てをあきらめたような顔をしながら冴子について行った。
部屋を出るときに祐介は美花の方を向くと美花は苦笑いしながら手を振っていた。
それに祐介はただ手を振り返すだけだった。
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