第14話油断大敵?

リニューアルオープンして間もないせいなのか平日だというのに多くん人でにぎわっていた。

老若男女問わず夫婦、友人同士、恋人同士いろんな組み合わせの人でにぎわっていた。

3人はデパートに入るとデーパート内の地図が置かれているところに移動して目的地を探していた。


「みんなは、何か見たいとことか、ほしい物とかある?」


美花が地図を眺め2人に背を向けながら手招きして聞いている。

祐介は近づいて何かないか探している。

冴子は2人の後ろに見守る様に立っているだけだった。

美花は後ろに立っているだけの冴子に気が付いた。


「冴子は見なくていいの?」


『私は歩きながら探すから気にしなくて平気だよ。』


「ならいいけど、行きたいところあったら教えてね。祐介は何か決まった?」


美花は次に祐介の方を向くと祐介は顎に手を置いて頭を悩ましていた。


「祐介、行きたいところあった?」


『うーん。そうだな、とりあえず2階の服屋に行きたいかな。そろそろ新しい服ほしいと思っていたから。』


「なら、私も2階に行きたいところあったから服屋の後に私の生きたいところでも平気?」


美花は祐介と冴子に確認をとった。

2人は美花の言ったことに首を縦に振り移動を開始した。

3人は2階に行くためのエスカレーターを目指した。

エスカレーターにたどり着くと美花が先頭で先に乗った続いて冴子、祐介の順番で乗ろうとしたときカバンを持った30~40代くらいの男が割って入ってきた。

そのせいで美花と冴子の間に見知らぬ人が入ることになってしまった。

3人はすぐに付くことから特に気にしないで乗っていた。

祐介が少し気になり視線を上に向けようとすると冴子が手で祐介の視線を遮った。


「だめだよ、美花はスカートを履いてるんだから今上を向くと、私は君を通報しなければならなくなってしまう。」


『いや、別にそんなつもりじゃ。』


「分かってる。君がそんな男じゃないってことはね。」


そう言われ祐介は体の向きを手すりの方に向け横を向いた。

冴子はエスカレーターの進行方向に体を向けると間に入ってきた男のカバンが少し開いていて暗いカバンの中で赤い光が漏れ、不自然にカバンを前に突き出していた。

冴子は不審に思い男に声をかけた。


「すまない。ちょっといいだろうか?」


冴子が話しかけると男は肩が少し跳ね驚いた様子で振り返ってきた。

男は時間にして1秒くらい冴子を見ると突然走り出した。


「邪魔だ、そこをどけ!!」


男は前に立つ人たちを押しのけながらエスカレーターを駆け上がった。

それを見て冴子もすぐにその後を追う。

祐介と美花、エスカレーターに乗ってた人たちは何が起きたのかわからずざわつき始めた。


「剣崎さん!いったいどうしたの!?」


『祐介君は美花と一緒にいてくれ!』


冴子と男はあっという間に走り去り姿を消した。

男はデパートを走り、男の走る邪魔になる人を退かしながら必死に走った。

冴子も男の後を追うが途中で男に倒された人たちを避けながら追いかける。

現役の部活動をしている冴子から追いかけられ、男との距離はどんどん近づく。

そしてとうとう冴子は男に追いつき男の腕を掴む。


「なぜ、いきなり逃げるんだ!何かやましいことでもあるのか?」


『このガキ、とっとと放しやがれ。』


冴子の腕を取り払おうと男は抵抗する。

男はどうにかして冴子の手を離させるために冴子の胸を掴んだ。

冴子は動揺し男から手を離してしまう。


「な、何をする!!」


その隙を逃さないで男は逃げ出した。

冴子もすぐに追いかけるが男は非常口に隠れ難を逃れた。


「すいません、ここらへんで走っていく男を見ませんでしたか?」


冴子は男を見つけるため周りの人に聞き込みを行った。

それを男は非常口のドアの隙間から見ていた。

そして、ドアを閉じ寄りかかった。


「へへ、これを闇サイトで売ればまた金が手に入る。なんせ、あんな上玉の女のだからなあ~。高く売れるぞ~。」


男がゲスの笑みを浮かべながら悦に浸っていると非常階段から誰かが階段を上がってきた。

見た目は女子高生で髪を金髪に染め制服を着崩して着用していた。

制服のブレザーはボタンを留めておらず中のブラウスが見えており、スカートは太ももが見えるくらいまで上げていた。


「最低だな。」


その女子高生はゲスな笑みを浮かべる男の顔を見てごみを見るような目つきをしながらボソッと呟いた。

その声は男に耳にしっかり聞こえた。


あの女少し見た目がいいからって大人をなめやがって、クソ!お前もついでにさらしてやる!


男は女子高生の言葉を聞いてトサカにきた。

男は再びカメラをセットして女子高生の後ろについて行った。

女子高生の後ろについて盗撮しようとした瞬間女子高生は脚を止めた。

そして、男に背中を向けながら話し始めた。


「おじさん、気づいてないと思う?とりあえず10万出しなよ。出ないとあんたを通報するから。」


『な、何を言ってるのかな?進まないなら横を失礼するよ。』


「あっそ。」


冴子が男を探しまわっていると人だかりを見つけた。

何かと思い近づく冴子の横をさっきの女子高生が通り過ぎる。

そして、人だかりの中心にたどり着くと盗撮男が痛みに悶えながら倒れていた。

冴子は男の持っていたカバンを見つけ中を漁ると中からカメラを見つけた。

この男は偶然エスカレーターで美花の後ろに乗ったわけではなく意図して乗ってきた。

美花の下着を盗撮するために。


「ごめんなさい、ちょっと通して。」


「すいません、通してください。」


野次馬の中から祐介と美花が姿を見せた。

それと同時に2人の反対側から警備員もやってきた。

そこからは警備員が男を取り押さえた。

しばらくして警察がやってきて冴子たちは事情聴取を受けた。

全てが終わるころには2時間近くの時間が経過していた。

男が盗撮したデータは消去され美花の写真は広まる前に消された。

3人は事情聴取が終わると警察に家まで送ってもらうか、このまま残るか聞かれた。

警察側としては3人とも送るのを想定していた。

どうするか祐介と冴子が視線を合わせて見つめあっていると、


「いえ、大丈夫です。自分たちでも帰れますので。」


美花はまるで気にしてないかのように話し始めた。

しかし、2人は気づいていた。

美花が心配させまいと気遣っていることに。

警察側も想定と違う答えが返ってきて驚いていた。


「本当に大丈夫?」


『ごめんなさい、ちょっと待っててください。』


警察が本当に平気なのかと思い再び問い直す。

冴子としてはこのまま帰ろうと考えていた。

しかし、美花から出たのはその逆の答えだった。

冴子は美花に考え直すように促す。


『美花、本当に大丈夫なの?』


「大丈夫だよ、冴子。あなたのおかげで最悪は避けられたんだから。そりゃあ、今だって怖いけどもう大丈夫だから。それより遅いけど何処かでお昼にしよ!」


『ちょっと、待ってよ美花。』


冴子は美花の前に立ちふさがった。

冴子が美花の顔を見るとその目には今にも涙があふれ今にもこぼれそうになっていた。


『今日はもう帰ろう。今日の予定はまた今度にして今日は家に帰って休んだ方がいい。君が無理することなんてないんだよ。家に帰ってゆっくり気持ちを整えよう。』


「剣崎さんの言う通りだよ。このままでも君がつらいだけだよ。すいません、やっぱりお願いします。」


そうして、祐介たちは警察車両で家まで送ってもらうことになった。

美花の家にたどり着くと事情を説明してその場を後にした。


「あ、もしもし?ちょっと聞いてよ。うち盗撮されそうになったんだよね。マジ最悪だわ。」


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