第8話人には言えないこと?

祐介は朝、美花と来た道をたどりながら家の帰路についていた。


「はぁ~、初日からいろんな意味で濃い1日だったな。これが1日目ってなるとこれからあと2年以上無事でいることはできるのやら。」


祐介は時折独り言を喋りながらいつの間にか家についていた。

悩んでいることを親に悟られないように祐介は大きく息を吸って家の玄関をくぐる。


「ただいまー!」


「おかえりなさい!」


いつもどおりの母親の声が聞こえてきた。

父親の声が聞こえてこない。どうやらまだ帰ってきていないようだ。

祐介が靴を脱いで家に上がるとリビングから母親が出てきた。


「どうだった、初日の学校は?何かいいことあった?」


そういう母親はいつもは家での仕事をしているはずなのになぜか母親は息を荒くして、額から汗が流れた姿で出迎えた。


「それは、夕飯の時に話すけど何かあったの?」


祐介がそう尋ねると


「え!?な、なんで?」


見るからに何か祐介には言えないことをしていたのか誤魔化した。


「いや、なんとなく聞いただけだから気にしないで。」


母親の反応を見て祐介はそれ以上は問い詰めず2階の自室へと向かった。

そのあとは夕飯まで部屋で勉強したり動画を見たりして夕飯までの時間をつぶした。

夕飯になると母親に学校で起きたことを話した。

登校前に不良に絡まれたこと、愛深のことは言わないで。

学校ではほとんど寝て過ごしてしまったためそれらしい嘘を母親に話してその場を乗り越えた。

夕飯を食べ終わり食休みをした後に風呂に入り歯を磨きまた少し動画を見てその日は眠りについた。



月が照らす道端に子猫がいる段ボールに汚れた服の彼女はどこから持ってきたのかわからないがポッケから缶詰を1つ取り出し子猫と半分分けて食べた。

食べ終わると子猫を抱き抱えながら段ボールの中に座り込んだ。


「大丈夫、いつかきっきといいことがあるから、それまで一緒にがんばろ。」


そう子猫に話しかけ眠ろうとしたとき彼女に着物を着て杖を突きながら一人の老人が歩いてきた。


「よかったら家においで。その猫と一緒に。」


老人は彼女にそっと手を指し伸ばした。

その声は優しく聞いていて落ち着くような声だった。

彼女は静かにうな頷くと手を取り老人の後について行った。


「私は仙巌 鴇也せんがん ときなり君の名前は?」


そう聞くが彼女は手を握るだけで質問には一切答えなかった。

静かに片腕で子猫を抱き抱えながら歩いていた。

月がまるで祝福するかのように彼女と猫をより強く照らした。


「無理をすることはない、ゆっくりでいいからね。」


老人と彼女たちは夜の町に姿を消した。



次に日になり前日同様に家を出て学校に向かった。

ただ違ったとすれば美花は一緒ではなく一人での登校だった。

おばあちゃんに「美花は?」と聞いても「あの子ならとっくに家を出たよ。」と言われた。

学校に付きプリントにあった教室に向かった。

早くに学校に付いたせいかまだ生徒の数は少なく朝錬んの生徒がいるくらいだっ

た。

教室に付くと入り口近くの席に美花が教室に一人席についていた。


「天乃さんおはよう。今日は朝早かったんだね。」


美花に挨拶するも彼女は祐介の顔をちらっと見て


「おはよう。」


そう一言だけ言って両腕を机に乗せ顔を伏せた。

あいさつしたときに見えた彼女の顔は少しふくれていた。

祐介は昨日とは違う美花を見て動揺していた。


「天乃さん、何かあったの?」


そう彼女に聞くも彼女は無視して答えてはくれなかった。

どうすればいいのか困った祐介の肩を誰かがそっと叩いた。

振り返るとそこには冴子がいた。


冴子は手招きをして祐介を教室の外に呼んだ。

2人は教室から少し離れたところで話し合った。


「なんか、天乃さんの様子が変なんだけど何か知らない?」


祐介の言葉を聞いて冴子は少し困惑した顔をした。


「私も、朝美花に会った時からあんな感じなのだ。君なら何か知っているのではと思ったがその様子では同じようだな。様子がおかしくなり始めたのは君が玄関で気絶した後だ。いったいどうしたというのやら。」


2人が教室の外で話している中、美花はさらに機嫌が悪くなっていった。


「何で、いったいどうしてなの?他の男どもは私を見た後は私に夢中になるはずなのになんで祐介はそうならないの。私がいる前で他の女の胸を揉むしいったいどうしてなの。やっぱり大きいほうがいいのかな。とにかく、祐介あなただけ夢中にならないのは許せない。絶対に私に夢中にさせて私のにしてやる。」


そして密かに美花の一つの目標ができた。

そのことを誰も知る事は無かった。


「やっぱり、大きいほうがいいのかな?」


自分の胸を持ちながらこのままでいいのかと見つめ直した。


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