第4話 駆け付けたのは可憐な乙女?

祐介は目を覚ますと目の前には見知らぬ天井が広がっていた。

自分を囲むようにカーテンがしてあり外からは誰にも見えないようになっていた。

体を起こすとそこはベッドの上だった。

毛布が掛けられ手の甲や腕には少し大きめな絆創膏が張られていた。

祐介はベッドから立ち上がりカーテンを開けると目の前に一人の大人の女性がパソコンを見つめていた。

その女性は後ろで髪を一つに縛り丸い眼鏡をしている人だ。

パソコンを見ている姿は仕事ができる女性というのを感じさせた。

カーテンが開いたことに気づき顔をこちらに向ける。


「よかった、目が覚めたのね。どう、まだどこか痛む?」


「いえ、特には。」


彼女は席を立ち祐介の方に向かっていく。

祐介向かってくる彼女に見惚れていた。

祐介の元まで行くと腕を動かしたり足を動かしたりとまるで人形を動かすみたいに祐介の体を動かした。


「どこも痛くなかったようね。でも一応病院に入っといた方がいいよ。祐介君だっけ?あなた気絶してここに運ばれたのよ。」


「ここは、どこですか?」


「ここは聖天高校の保健室よ。入学おめでとう新入生君。」


そう言われて窓の外を見てみると窓の外は聖天高校の中庭が広がっていた。

中庭の真ん中には大きな桜の木が新たな新入生を祝福するかのように満開に咲き誇り花びらを散らしていた。

桜の木の周りには数人の祐介と美花と同じ制服を着ている生徒が数人集まっていた。

いくつものグループに分かれ何かを話しており笑っているものもいる。


「そうそう、その傷の犯人の男たちはね、」


女性は祐介に暴行した男たちの話をしようとしたとき保健室の扉がノックされた。

祐介と女性の視線が保健室の扉に視線が集まる。


「失礼します!」


その声はどこか聞いたことのあるような声だった。

誰だっけと祐介が思い出そうとすると扉が開く。

姿を現したのは初めて見る女子生徒と美花だった。

その女子生徒はまさに可憐。

そして凛々しい。

髪をポニーテールで縛ってはいるが背中の真ん中まであるだろうか黒くつやのある綺麗な髪でスラっとしたその体もまた美しかった。

見えている腕や足も引き締まっているが筋肉質ではないほどだ。

その女性は和服や巫女服が似合いそうな女性だった。

美花はとても心配した様子で部屋に入ってくる。

美花が部屋の中を見渡すと美花を見る祐介と目が合った。

祐介と目が合った美花はすぐさま祐介の元に駆け寄り祐介の片手を両手で握る。


「よかった、目が覚めてくれて!もしかしたらと思って心配してたの!」


美花は話しているとその目に涙があふれてきた。

祐介はそんな美花の顔を見て自分のことを心配してくれてうれしいと思っている中で少し気恥ずかしさがあった。

それはその日あったばかりの美花に手を握られたからだ。


「だ、だいじょうぶだよ。こ、これくらい た、たいしたここ、ことないって。」


祐介はものすごく動揺していた。

顔は真っ赤に染まりまるで茹蛸のようだ。

ふと保健室の先生に目をやると美花と一緒に来た女子生徒と一緒にこちらをにやにやしながら見ていた。

その姿を見て祐介は我を殺して我に返った。

祐介は握っている美花の手の上にもう片方の手を置く。


「そんなことより美花は無事だったの?俺は気絶しちゃったみたいだけど。」


「それなら、あの人が。」


そう言って美花は一緒に来た女子生徒の方に顔を向けた。

2人が顔を向けると女子生徒はこちらに気づき近くに寄ってきた。


「初めましてになるかな?剣崎 冴子けんざき さえこという。以後よろしく頼む。」


そう言って冴子は祐介に手の差し握手を求めた。


「初めまして狩野祐介です。こちらこそよろしくお願いします。」


お互い自己紹介をして握手を交わした。

冴子は祐介の眼を見ている。

まるで心の中を探っているかのように。


「あの、何かついてますか?」


祐介が苦笑いをしながら冴子に聞くと冴子はハッと少し驚いた。


「いや、すまん。別に変な意味は特には無い。気にしないでくれ。」


「そうですか。そう言えば、あなたが美花を助けてくれたんですか?」


「確かに最終的に助けたのは私だが、もし君が居なければどうなっていたか。君の勇気はとても素晴らしいものだ。人に誇れるものだ。」


冴子の言葉を聞いて祐介の顔が緩む。


「祐介君が気絶した後すぐに冴子さんが私を助けてくれたの。」


美花は祐介に気絶した後のことを離した。




「そこの者ども、待てー!!」


その声と共に冴子がその場に駆けつけた。

右肩にはカバンが左方には筒状ののバッグを持ちながらも息一つ切らしてはいなかった。


「ったく、今度はなんだよ。」


その場を去ろうとしている男二人が声の方に顔を向けるとその姿を見て見惚れた。

祐介に暴行をしていなかった方Bが抜け駆けをして冴子に近づいていく。


「ねえ、君も一緒に遊ぼうよwちょうど男女2人だしさ。」


そう言って男Bは冴子の肩に手を回そうとしたとき

冴子は男の手首をひねり男をその場で跪かせた。


「いででで!お、おい、いきなり何すんだよ!!」


男Bはもう片方の手で振りほどこうとするが冴子はさらにひねり抵抗を止めさせた。

男はただ悲鳴を上げるしかなかった。


「一つ聞く!彼に以外を加えたのはどちらだ!」


その声は少し離れている男Aにも聞こえた。

男Aは冴子が男Bにしていた一部始終を見ても特に怯むことはなかった。


「俺だけどそれがどうした!?」


男Aも大声で冴子に返す。


「なぜこんなことをした!?」


「そいつが邪魔だったからだよ。そんなことよりそいつの手離してやれよ。」


男Aは頭を掻きながらめんどくさそうに答える。


「なら、その嫌がっている彼女を離したらこちらも手を離そう。」


そう言ってさらに冴子は男Bの手をひねる。

男はとうとう声にならない悲鳴まで上げ悶え始めた。


「いい加減にしろよ、てめえもそのゴミみたいになりたいか!?」


「そのゴミとは今私が握っているこの男の子とか?」


「寝ぼけたことぬかすなよ。ゴミは俺がボコしたほうだよ!」


一向に手を緩めない冴子を見てとうとう堪忍袋の緒が切れた。


「いい加減にしろよこのアマ!」


そう言いながら男Aは美花から離れ冴子に向かって拳を振り上げながら向かってきた。

冴子もそれを見て男Bから手を離し背負っていたバックを二つ地面に置いた。

一直線に向かってくる男を構えながら冴子は待った。


「なんとも愚かな。これが同じ人とはな。」


男の拳が冴子に振り下ろされる。

冴子はそれを余裕で躱し男の手首と腕をつかみ男の向かってくる勢いを逆に利用して背負い投げをした。

男は宙に浮き受け身もろくに取れずに地面に叩きつけられた。

男はそのまま寝そべり声にならない声を上げながら悶えた。


「男なら立てるだろ。そしてすぐにこの場から立ち去れ!!」


冴子がそう言うと男たちは立ち上がりお互いに肩を預けながらふらふらとその場を去って行った。


「情けない。二度とその顔を見せるな!」


男の背中に向かって冴子はそう告げると荷物をそのままにしながら美花の元に駆け付けた。


「どこか怪我はないか?」


美花にそう聞くと安心したのかその場で崩れ落ちそうになったところ冴子が支えゆっくり座らせた。


「それよりも、祐介をお願い!」


美花は今にも泣きたい気持ちを抑えて祐介を優先させた。


「少しここで待っていてくれ。」


そう言って気絶している祐介の元に向かう。

首元を触り脈を確認。


「おい、おい、しっかりしろ!」


冴子は祐介を診て気絶しているとわかると祐介の背中に背負い美花の元に向かった。


「立てるか?もうすぐで学校だから一緒に行こう。」


冴子が背負っている祐介を見て美花は


「祐介は無事なの!?」


自分のために体を張ってくれた祐介のことを美花はものすごく心配していた。


「心配ない気絶しているだけだ。このまま背負って学校まで連れて行こう。申し訳ないが、荷物を持ってくれないか?」


「分かったわ。」


美花は立ち上がり祐介のも合わせてカバンを3つと筒状のバックを1つ持って祐介を背負う冴子についていき学校を目指した。

学校に付くと事情を説明して祐介を保健室に運び二人は途中参加で入学式に参加した。







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