17
エレノアが歌を歌う場所は前に会った噴水のところだ。でも、あの噴水はどこにあったっけ?前は歌が聞こえる方向にかけていって出会えたんだよね。つまり、場所は覚えていない。
「この間は、噴水の場所で会えたんですけど…場所は覚えてなくて。」
「噴水の場所くらい、その辺の人に聞けばわかるな。おい、アンタ。このあたりの噴水を知らねぇか?」
ジークは近くにいる男に声をかけた。男は私たちを見ると微笑ましそうに笑った。
「なんだい。兄ちゃんたちも歌を聞きに来たのかい?」
「この子たちがどうしても聞きたいっていうんでね。」
「こっちだ。ついておいで。」
いい人そうなのでついていくことにした。隣で姉様が、ジークは私たちのお兄様ではないとブツブツ言っていた。私的にはいいお兄ちゃんになりそうだと思うけど。なんやかんやで面倒見がいいし。
「…いやぁ、最近あの子の歌がますます人気が出ていてね。なんといってもすごいのは、心が穏やかになるあの素敵な魔法だよ。」
男についていくとだんだんと歌声が聞こえてきた。エレノアの得意な音魔法に癒しの効果をのせているから、みんな自然と聞き入ってしまうんだよね。
そして前に会った噴水のところでエレノアが歌っていた。前とは違って、何人かの人が聞き入っていた。姉様も目を輝かせて聞いていた。やっぱりヒロインの特技ってすごいよね。悪役令嬢な姉様の心も惹かれてしまうよ…。
「ケイティが言ってただけありますわ!私の魔法とどうやって組み合わせるか悩みどころよね。」
「姉様。まずは交渉しないと…。」
「私やケイティのお願いを断る人間がいるのかしら?」
いると思うよ。オズウェル様や今、隣にいるジークとか。ジークはさらっとほかの人に仕事押し付けそうだよね。自分でやらなくてもいいように話をそらすこともしそう。ぼんやりとジークを見ると、とてもいい笑顔を向けられた。
「小さいお嬢さんの言うとおりに、まずは話をしてみるのがいいんじゃないですか?いい人じゃなかったら、小さいお嬢さんが危険な目に合うかもしれないですよ。」
「そうですわね。そうなったらジークを生贄にしてケイティを救い出しますわ!」
姉様もいい笑顔を浮かべているけど、もう少し穏やかな会話がいいな。エレノアと姉様がほのぼのお茶してるところも見たい。
そんなことを思っていたらエレノアと目が合った。そして花が咲くようなヒロインらしい笑顔を私に向けて、駆け寄ってきた。ヒロインが笑顔を向けて駆け寄ってくれるなんて…私が男の子だったら、恋が始まっちゃうところだったよ。
攻略対象な兄と悪役令嬢な姉がいます 九十九まつり @tsukumo_matsuri
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