14
外を見ると、馬車が止まっていた。きっと兄様たちが帰ってきたのだろう。玄関に行くと、レジーナ姉様が笑顔を浮かべて私に抱きついてきた。とてもいい香りがして、さすが姉様だと思ってしまった。なんだろう…お花のような香り。キツくなくて、ふんわりと香る…薔薇のような香りだ。
「ケイティ!天使が迎えにきたのだと思ったわ!」
金色の瞳をとろりと溶かして、レジーナ姉様は更に笑みを深めた。全身で好きを表現している。嬉しいような、恥ずかしいような、そんな気持ちで困っていると、アーノルド兄様が姉様の後ろから現れた。私と姉様の頭を撫でて、にこりと笑う。
「妹達が仲がいいと微笑ましいけど、ケイティは何か用事がありそうだね。」
「そうです!ジークさんに、用事があって。」
私がそういうと、姉様は笑顔のままピシリと固まった。何かまずいことを言っただろうか。首を傾げていると、姉様が口を開いた。
「…ジークは、駄目ですわ!!ジークではケイティを幸せに出来ないと思いますわ…。」
ぶつぶつと何かを言っているけど、放置してもいいかな。どんな妄想しているのか想像はできるけど、想像したくないな。ちらりとアーノルド兄様を見ると楽しそうに姉様のことを観察していた。多分、大体の把握をした上で、この状況を楽しんでいる。悪い人だ。
「姉様、何を勘違いしているのかわからないけど、ジークさんには毒草に関しての知識をお借りしたいだけです。」
「…毒草?誰に使うの?」
姉様の妄想がすごい…。誰に使うのかって、私が誰かに使いそうな人間に見えるのかな。使いそうな人間なら兄様じゃないかな。
「珍しい毒草でも咲いたのかい?」
「…え、えぇ。そうです。」
「どう管理したらいいのかという事を聞くんだろう。後で温室に行くように言っておくよ。」
にっこりと笑う兄様。後でということは今は難しいのだろう。何か外で用事でも頼まれているのだろうか。ぼんやりとしていると、姉様が手を引いて歩き出した。
「レジーナ姉様?どこへ行くのですか?」
「…オズウェル様が来るから、私たちは逃げましょうね!」
とてもいい笑顔で言ってる…。いや、逃げるってなんだ。しかも、兄様は残るらしい。まぁ、月の柱が来て、誰もいませんでしただと…可哀想だものね。
…そうじゃないわ。月の柱が来るのになんで、逃げるんだ。普通はお出迎えの準備をするところだよ。柱の剣の家の子達なのに。
「…姉様。柱の剣を目指すなら、未来の主人から逃げてはいけないと思います。ダメですよ!」
私がそういえば姉様は今までに見たことが無いような、鋭い瞳で私を睨んだ。美人の睨みは心臓に悪い。それに今まで溺愛してくれていた人に睨まれると、心が痛い。鼓動が早くなって、頭が真っ白になる。
そして、姉様は私の手を両手でそっと包んだ。目線も合わせてくれている。
「…ケイティ。もう一度ダメって言ってくださる?とっても可愛らしかったわ!」
どうしたら姉様ときちんとお話ができるのだろう。あと、兄様はいつの間にか少し離れたところで優雅にお茶を飲んで、私たちを眺めているけど、助けてくれないのね…。
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