06

 帰りの馬車でレジーナ姉様がいないことに気が付いて、アーノルド兄様に尋ねると、姉様は先に帰らせたと言った。兄様曰く、混乱中のレジーナを見ながら私を探す余裕がなかったとのこと。姉様はたいそう不満げに先に帰ったそうだ。


「…ところで、ケイティ。何があったかはだいたい予想が付いたが、なぜ月の柱と居たんだい?」

「…月の、はしら?」

「王を太陽の柱、王子を月の柱と呼び、私たちの家は彼らを護る騎士…柱の剣であることは知っているだろう?」

 もちろんと頷く。ちなみに柱の盾は、王妃または婚約者であることもばっちり知っている。忘れていなければこの世界のことは誰よりも詳しいだろう。


「うん。けど、月の柱がいたの?」

「…あそこにいた変身魔法をかけていた少年、あれは月の柱だ。先程の件は、ケイティが王族に間違われたというより、王子狙いの誘拐だったのだろう。」

 兄様は私を見てはっきりと言う。これは私が他の人に言いふらさないか、試しているのだろう。王家に仕える騎士としての素質、それを今、試されている。


「アーノルド兄様。私は何も知らないよ。でも、エレノアとあのお兄さんにはお礼を言いたいと思ってるよ。」

「…ふっ。誕生日祝いは温室にしようか。魔力コントロールの練習に使いなさい。8歳になるまでレジーナにも秘密にしながらね。」

 お兄様は優しく笑みを浮かべ、私にそういった。魔法が使えるようになったことまでバレているとは…。


 魔法のコントロールは練習したいと思っていたからちょうど良かったけど、誕生日祝いに温室って…。貴族家じゃなくて騎士家なのに。6歳の少女へのプレゼントにしては重い…。




 帰りの馬車の中で私は、無事に生きていることに安堵した。しかし、この先に起こる不幸への対策を練らなければならない。


 どのエンドへ向かっていようとも、兄様と姉様の死亡ルートは避けなくては。

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