07

 誕生日プレゼントの温室で魔力コントロールを重ね、家庭教師から勉強やらなんやら教えていただき、私は8歳となった。魔法が使えても可笑しくない年齢となったため、レジーナ姉様に秘密を明かした。


「姉様!見てください。私、植物魔法が使えます!」

 家庭教師からせめて「ですます調」で話すようしつけられ、私は家族にもそうすることとなった。レジーナ姉様は最初はとても悲しんでいたが、今ではなれてしまったようだ。


「すごいですわ、ケイティ!温室で過ごすことが多かったおかげかしら?…はっ!つまりは私とお兄様の愛の力!?」

 1人で暴走しているレジーナ姉様。アーノルド兄様にも報告しましょうと、私の手を引いて歩く。姉様が私よりも嬉しそうに笑顔を浮かべいるのが可愛らしい。


「…なるほど。それは素晴らしいことだね。」

 にっこりとしてアーノルド兄様がそういった。絶対レジーナ姉様可愛いと思ってるでしょう。何故か誇らしそうにしている姉様に、耳と尻尾の幻影見えるものね。


「そうだ。二人とも、出かける準備は出来たかい?」

 兄様の言葉に頷く。…確か父様と母様も一緒と言っていた。2人は太陽の剣…つまり王様の騎士なので、忙しく、基本的には家にいない。王家にて働いている。


「お父様もお母様も久しぶりに会うけれど、家族みんなでどこに出掛けるのかしら…?」

 首をかしげている姉様。彼女は今、11歳である。その年にあるイベントは、レジーナが王子の婚約者になるイベントだ。


「…みんなで出掛けられるのであれば、何処でも良いわ。お出掛け着のケイティの愛らしさを目に焼き付けるだけですもの。」

 ふふふと笑う姉様には悪いけど、この日は姉様が王子に惚れるか否か…それによって運命が左右される日である。私が生きているので、姉様が王子を恨むということはなさそうだけど…。


 ストーリーが動き始めていることを感じながら、私は不安と共に姉様を見つめた。いつも以上におめかしされた姉様を見て、未来の悪役令嬢な姉様のスチルが頭をよぎった。


「ケイティ。どうしたの?」

「……姉様、とても綺麗です。」

「嬉しい!ケイティもとっても可愛いわ!」

 花が咲くような笑みを浮かべる姉様はまだ少女であり、悪役令嬢にはほど遠かった。

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