攻略対象な兄と悪役令嬢な姉がいます

九十九まつり

運命を超えて

 朝、普通に目覚めて、いつも通りの1日を送る。それが私の日常であったのに、明らかにいつもと違う光景が目の前に広がっていた。


 私が目覚めたときに一番に目に飛び込んできたのは、目に涙を浮かべた赤髪金眼の美少女だった。エルフのようにとがった特徴の耳を持つ彼女は、寝ていた私に抱きついていた。小学生くらいの幼い彼女は、私の知り合いの中にはいないし、そもそもそんな派手な見た目の人は初めて見る。


 周りをキョロキョロと見回せば洋装の、豪華なお屋敷の部屋といった感じで、私の部屋ではないことは明らかだ。


「…よかった!庭園の噴水に落ちたと聞いたから、心配したのよ!」

 赤髪の少女は私の肩をつかんで揺さぶっている。気持ち悪くなっちゃうから出来ればやめてほしい…。揺さぶっている間も、私の目が覚めなかったらどうしようかと思っていた、と言うような内容のことをずっと話していた。どれだけ心配性なのか…。そして私は噴水に落ちる間抜けなのか…。


「レジーナ。ケイティはまだ目が覚めたばかりなのだから、安静にさせておかないと駄目だろう…」

「アーノルド兄様…そうですわね」

 少ししょんぼりした赤髪の彼女はレジーナと言うようだ。ちなみにレジーナに声をかけたのは黒髪紫眼の少年だった。名前は会話から察するにアーノルドであろう。


「ケイティ、どこか具合の悪いところはないかい?」

 アーノルドが私に向かって声をかける。つまり、私の名前はケイティで確定と言うことか。




 ………ん?待てよ。聞いたことあるな。ケイティ、アーノルド、レジーナ…確か私が昔はまっていた乙女ゲーム【××のミモザ】のキャラクターだ。内容としては泣けるストーリーで、選択肢を間違えると誰も救われないエンドを迎える。多数エンドがあり、私は何度も泣いたことか…。


 ヒロイン、悪役令嬢、異世界からの少女の3視点でゲームを進めていくことが出来て全ての攻略まで果てしない道のりだったな。


 レジーナはゲームで悪役令嬢のポジション、アーノルドはその兄として攻略対象でもあった。ちなみにケイティは…6歳の時に御忍びで町に出掛けていた王子と間違えられ誘拐され、亡くなる運命にある。ケイティの死をきっかけに、レジーナは思い込みが激しくなり、悪役令嬢へ。そして、レジーナは断罪エンドで命を落とすことが多い。


「兄様…ケイティが反応しませんわ。反抗期には早いですから…お医者様が何か見落としたのかも。最高の回復術師を呼びましょう!」

 私が返事を怠って考え事をしていたら、レジーナが暴走していた。レジーナ視点をゲームでやったときから思っていたけど、シスコンっぽいんだよね。


 落ち着かせようとして口を開こうとするが、ケイティの口調を知らないことに気がついた。ゲームでは亡くなってたし…。


 困ってアーノルドを見たら、何か考えことをしているようだった。美少年が考えてる姿は絵になるなぁ。


「腕の良い医者を呼んだ筈だが…手配した者ごと始末するか…」

「あの!大丈夫だから…ちょっと考え事してただけなの…」

 何なの!?ここの家族はシスコンなの!?思わず口出ししてしまったよ…。


「そうか…良かった。今日はゆっくり休みなさい。レジーナ、行くよ」

「わかりましたわ。来週の6歳のバースディまでに怪我しちゃダメよ。おやすみ」

 2人は私の頭を撫でてから退室した。


 2人が部屋から出ていくと、私は広いベッドに大の字で寝転んだ。まだまだ、考えることは多いけど、なんと言うか疲れたから休もう…。

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