第26話 カーク王子・ユウ王子とミーシャ 3/3 ~現在~
ごきげんよう。
今日もあなたのお顔を拝見することができて、とても嬉しいですわ。
・・・・あら、私ったら、つい・・・・
いえ。
本当に、私の拙い語りを聞いて下さること、感謝しておりますの。
いつもありがとうございます。
はっ・・・・そうでしたわね、両王子とミーシャのお話の続き、でしたわね。
それでは、早速・・・・
※※※※※※※※※※
「おっ、ここと、ここか・・・・うっ、キツイな」
「兄さんがんばれ。じゃ、次、僕ね。え~・・・・これ無理じゃない?!」
「ちょっ、早くしろよ、ユウ!俺もう、もたねぇ・・・・」
「そんな事言ったって・・・・わっ・・・・わわわっ!」
「おいちょっ・・・・ぐあっ!お前、ちょっとは避けろっ!」
「無理だよー、バランス取れなかったんだからっ!」
後ろから聞こえる、カークとユウの声。
「もう一回だ、ユウ!」
「望むところだよ、兄さんっ!」
この言葉に、ついにミーシャの堪忍袋の緒が切れた。
「うるさーいっ!掃除の時くらい他所で遊ばんかいっ!」
「えー、これまた畳んで持ってくの大変だし」
「そうだ、もう掃除なんてやめていいから、ミャーもやろうぜ!」
「ご冗談を。私は今仕事中です」
カークの言葉を無視して掃除を続けるミーシャに、カークは言った。
「ミャーも参加!これ、命令な?」
「はぁっ?!」
「出た!伝家の宝刀!という訳だから、ミャーも一緒にやろうね♪」
はい、これ置いて。はい、手洗って。はい、ここに座って。
呆然とするミーシャを、ユウは手早く誘導し、ゲームの前に座らせる。
(・・・・なんなの、このバカ兄弟は・・・・)
アホらしいとは思いつつも、第一王子の命令にそう簡単に背くわけにもいかず。
ミーシャは仕方なくゲームに参加することになった。
「これはだなぁ。ここに表示される指示に従って、指示通りの場所に手足を置くゲームだ」
「簡単そうだけど、とんでもなく難しいんだよ?面白いけどね!」
カークとユウが指し示した場所には、レジャーシートのようなシートが置かれていた。
そしてそのシートには、A~Zの文字が書かれた、大きな丸が散らばっている。
横に置かれた電子ボードを見ると。
【Bに、右手】
【Gに、左足】
というような指示が、一定の間隔をおいて表示されていた。
「じゃ、最初はミャーからね」
「・・・・はぁ」
とりあえず1回だけ参加すれば、この兄弟の気も済むだろうと、ミーシャは気乗りのしない顔で電子ボードに表示された指示を確認する。
【Zに、右足】
「ミャー、ここに右足置いて」
「・・・・はい」
「じゃ、次は俺な」
【Fに、左手】
「じゃ、次僕ね」
【Jに、左足】
「はい、次ミャーだよ」
「・・・・はぁ」
【Aに、左手】
「・・・・は?」
電子ボードの表示に、ミーシャは目を丸くした。
今、ミーシャの右足は【Z】に置かれている。
【A】の場所に左手を置くには、精一杯体を伸ばさなくてはならない。
「ね?意外と難しいでしょ?」
「いえ、それほどでも」
そう言って、ミーシャは精一杯体を伸ばし、【A】に左手を乗せる。
「いつまで強がっていられるかな?」
ニヤリと笑ったカークに、ミーシャの闘争心に火が付いた。
「ぎゃっ!ちょっ、どこ触ってんですかっ!」
「別に触ってねぇしっ!仕方ないだろ、届かないんだから!」
「ちょっと、僕にそんなに体重乗せないでよ!」
「失礼ですねっ!そんなに乗せてません!」
「じゃあなんでこんなに重いのさっ!」
「私が重いって仰るんですかっ?!」
3人の賑やかな叫び声が、ユウの私室の扉から廊下へと漏れ響き始めた頃。
ノックの音とともに聞こえたのは、メイド長の声。
「ユウ様、こちらにミーシャはおりますでしょうか」
とたん。
「どうしよ、怒られる・・・・わっわわわっ・・・・ぎゃあっ!」
「ちょっ、ミャーっ・・・・ぐぇっ」
「うっ・・・・お、重い・・・・早くどいてってば、2人ともっ!」
バランスを崩したミーシャにつられてカークもバランスを崩し、ユウの上に重なって崩れ落ちる。
「ユウ様?入りますよ?」
声と共に部屋へと入って来たメイド長は、その光景を目の当たりにすると・・・・
「ミーシャっ!何をやっているのですかっ!」
「ごっ、ごめんなさいっ!」
慌てて立ち上がり、メイド長に頭を下げるミーシャに、カークとユウは笑いながら立ち上がってメイド長に言った。
「怒らないでよ、俺がミャーに命令したんだ。俺たちと一緒に遊べって」
「ですが・・・・」
「今日は、僕たちがミャーと友達になった記念日なんだ。だから、ね?大目に見て?」
その言葉に。
ミーシャはハッとして2人の王子を見る。
(まさかこの人たち、だから私を・・・・)
「そうでしたわね。今日、でしたわね。かしこまりました。では、お邪魔でなければ、ミーシャをよろしくお願いいたします」
深々と頭を下げると、メイド長はミーシャに告げた。
「カーク様とユウ様にお茶を入れて差し上げなさい」
「は、はいっ!」
「あなたの分も、ね」
「・・・・え?」
ポカンとするミーシャの頭から三角巾をそっと取り外すと、メイド長は優しく微笑む。
「後でシェフからお菓子を分けていただいてきます。マイケル様とチェルシー様のお茶会用のお菓子が、余っていると聞きましたので。今日はもう、ゆっくりなさい」
「・・・・ありがとうございます!」
その後も、ティータイム休憩を挟んでゲームは続き、クタクタに疲れたミーシャはその夜、夢も見ずにぐっすりと眠ったのだった。
※※※※※※※※※※
両王子とミーシャは、このように今でもとっても仲がよろしいのです。
ですが、真面目に日々の仕事をこなしているミーシャを悪く言う人は、誰もいないのですよ。
両王子はたまに羽目を外し過ぎるところがおありになりますが、それを指摘できるのは、もしかしたらマイケル様の他にはミーシャくらいなものかもしれません。
あら、また長くなってしまいましたわね。
お疲れではございませんか?
今回は、ここまでにいたしましょう。
よろしければまた、いらしてくださいね。
それでは、ごきげんよう。
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