第3話 童貞捨ててみる?
「さ、乾杯しましょ♡」
差し出された缶ビールを見て「ビールは苦手なんです」と呟く。
「そっか〜。じゃあ、甘いやつ持って来るわね」
部屋に備え付けられている冷蔵庫に軽い足取りで向かう煌びやかな真っ赤なドレスを着た女性の後ろ姿を見つめていた。
(背中あんなに開いてたんだ・・・・・・)
見つめながらそんなことを思う。
思考がぼんやりしているのは部屋に漂っているこの甘い香りのせいだろうか。
「はい。これなら飲めそう?」
「あ、はい。ありがとうございます」
だから、苦手なはずのお酒を無意識に受け取っていた。
「じゃあ今度こそ、乾杯しよ♡」
僕と女性はプルタブを開けて、本日二度目の乾杯を交わした。
女性は缶ビールに口をつけるとゴクゴクと喉を鳴らしていた。その飲みっぷりは気持ちがいいほどで、缶ビールは一瞬で空になっていた。
「ぷはぁ~♡ やっぱりビールはいいわね~」
一缶目を速攻空にした女性は二缶目を取りに冷蔵庫に向かった。
僕は一口だけお酒に口をつけるとテーブルの上に置いた。
そこでようやく僕は連れてこられた部屋を見渡した。
連れてこられた部屋はいかにⅤIPルームという感じだった。備え付けられている家具はどれも高級感が漂っている。
あのシャンデリア高そうだなぁとか、あのベッド何十万するんだろうとか、ぼんやりと部屋の中を見渡していると「どう? 部屋はお気に召してくれた?」と突然目の前に美しい顔が現れた。
あまりにも突然だったのでビックリした僕は椅子から転げ落ちてしまった。
「あはは、大丈夫? 驚かせちゃったかな?」
二本目のビールを手に持った女性は何も持っていない方の手を僕に向けて差し出した。
(細くて綺麗なてだなぁ……)
ぼんやりとそんなことを思いながらその手を掴んで立ち上がった。
その瞬間、女性がニヤッと笑った。
ニヤッと笑ったかと思うと、手をぐいっと引かれた。
「ぁん・・・・・・」
弾力のある柔らかな感触と甘い声。
僕は気が付くとだいたんに開かれたドレスの胸元から見える谷間に顔を埋めていた。
(つい、数十分前にもこんなことがあったような……)
そんなことをぼんやりと思う。
ただ、数十分前と違う点がある。数十分前は服越しで、今は素肌ということだ。
生のおっぱいの感触は服越しとは比にならなかった。
スベスベで、生温かくて、いい匂いで、とにかく凄い。語彙力を失ってしまうくらいに。
「捕まえた♡」
女性は頭の後ろに手を回してきて僕のことを離さないようにと抱きしめた。
「今日は寝かさないから」
そんな言葉を耳元で囁かれ、脳に電撃が走った。
ぼんやりとしていた僕の脳は完全に機能停止してしまった。
「とりあえず、ベッド行こっか♡」
そこに追い打ちをかけるように女性は再び耳元でそう言った。
脳の機能が停止していて何も考えることができなくなっていた僕は何も抵抗することができなかった。
「嫌がらないってことは、いいってことだよね?」
そんな女性の問いかけにも返答することはできなかった。それを女性は肯定したとみなしたのか僕の手を引いてベッドに向かった。そのまま押し倒されてしまうのではないかと思ったが女性は僕の手を離すとベッドにダイブした。
直前で手を離された僕はベッドのそばで棒立ち状態。
「ほら、誠司も飛び込んできなって、凄いふかふかだよ!」
女性は無邪気な笑顔を僕に向けてきた。
まるで修学旅行のホテルでテンションの上がった学生みたいだった。
「どうしたの? 早く来なよ」
起き上がった女性が僕のことを手招きしている。
美しい指先が、美しい足が、美しい顔が艶めかしい。
このままベッドに上がれば僕は童貞を捨てることができるのだろうか?
彼女いない歴=年齢の僕がこんな美しい女性とエッチをしていいのだろうか?
僕のことを手招きしている女性のことを見ていると、脳の機能は停止しているはずなのになぜだかそんなことを思ってしまった。
普段なら絶対にそんなことを思わないことを思って僕はようやく気が付いた。どうやら僕は酔っているようだ。
普段めったにお酒を飲まないのにたくさん飲んでしまったからに違いない。そのことに気が付くと少しだけ冷静になれた気がした。
「もぅ、いいよ。来ないならこっちから行っちゃうから」
そう言って女性は四つん這いで僕の近くまでやってきた。
そして、僕のことを無理やりベッドに座らせた。
「ねぇ、もしかして誠司って童貞?」
耳元で発せられたその言葉はとても生々しく、僕の心臓をきゅっと握りしめた。
別に童貞ということにコンプレックスを持っているわけではないが、このいかにも経験豊富そうな女性に言われると、なぜだか童貞であることがいけないことみたいに思えてならなかった。そして、それが馬鹿にされているように思えてならなかった。
「だ、だったらなんなんですか!?」
だからだろうか予想以上に大きな声が出た。
僕の声に女性は一瞬だけ固まった後、すぐにその顔に妖艶な笑みを浮かべた。
「ふ~ん。へぇ~。そうなんだ~。誠司、まだ童貞なんだね」
ニヤニヤとさらにその笑みを深めた女性はその顔で「童貞捨ててみる?」と僕に言ってきた。
一瞬、何を言っているのか理解できなかった。
ドウテイステテミル……。
童貞捨ててみる……。
その言葉の意味に理解したのは数秒後だった。
「え、え、えぇ!!!!!」
部屋に響き渡るくらい大きな声で僕は叫んだ。
この人な何言ってんだ!?
その一言で酔いはすっかりと覚めてしまった。脳が覚醒して、さっきの言葉が頭の中で再びリフレインされる。
童貞を捨てるって、つまりそういうことだよな!?
僕が慌てふためいていている様子を見て女性は腹を抱えて笑った。
「あはは、誠司驚きすぎ! そんなに驚くこと?」
「そりゃあ、驚きますよ!? 何言ってるんですか! 自分が何言ってるのか分かってるんですか!?」
「もちろん分かってるよ。誠司とエッチをして、誠司の童貞を私がもらってあげるってことでしょ」
「ストレートに言いすぎです!」
「別に隠すことでもないし、それに誠司だってこうなることを望んでたんじゃないの? だから、部屋までついてきたんでしょ?」
女性はドレスに手をかけると脱ぎ始めた。真っ赤なドレスの下に隠れたスタイルのいい体、真っ白な肌、真っ黒な下着が露わになった。
僕は咄嗟に顔を逸らした。
「ぼ、僕はそんなつもりで部屋に来たんじゃ……」
「ちっとも期待してなかったってこと? それはそれで悲しんな~。これでも私、体には結構自身があるんだけどな~」
そう言って女性は惜しげもなくその豊満なおっぱいを僕の背中に押し付けてきて首に手を回し抱きついてきた。
意識しないようにしても、無意識に背中にあたる柔らかな感触に意識がいってしまう。
「どう? 私のおっぱい柔らかくない?」
耳元で囁かれ、ふっ、とされた。
「し、知りません! 離れてください!」
「動揺しちゃって可愛いな~。もっと意地悪したくなっちゃうじゃん♡」
逃げようとすればするほど、女性は密着してきた。
この女性からは逃げきれない。そう思うと次第に僕はこのまま委ねてしまった方がいいのではないだろうかという思考になり始めた。
本当に童貞を捨てさせてくれるなら、その方がいいのではないかと思うようになった。
そう思わせるほど、背中にあたるおっぱいの魔力は絶大だった。
「逃げるのは諦めたの?」
「あなたからは逃げれそうにないと思ったので」
「ふ~ん。てことは、私に童貞をくれる気になったってこと?」
「そ、それは……」
僕が言い淀むと女性は「もしかして好きな人でもいるの?」と聞いてきた。
好きな人……。
そう言われて僕の頭に浮かんだのはなぜかお隣の奈美さんの顔だった。
「その様子だと好きな人がいるんでしょ」
「……分かりません」
「好きかどうか分からないってこと?」
「……はい」
「ちなみに誰の顔を思い浮かべたの?」
「……隣に住んでいる女性です」
「ふ~ん。そうなんだ」
そう呟くと、さっきまで頑なに離れなかった女性はなぜか僕から離れた。
「あっ……」
背中からおっぱいが離れて僕は思わず後ろを振り返ってしまった。
「何その、『あっ……』は? もしかして、おっぱいが離れるのが名残惜しかった?」
女性は僕をからかうようにニヤニヤと笑う。
「ごめんね~。気が変わっちゃった」
そう言うと女性は下着姿のままベッドに寝転がった。
「誠司の童貞をもらってあげることはまたの機会ね~。その代わり、添い寝してあげるから♡ 今日はそれで我慢してね?」
女性は自分の隣をポンポンと叩いて、僕においでと手招きをした。
僕は吸い寄せられるように女性の隣に移動すると隣に寝転がった。
「うん。いい子いい子♡ 素直な子は好きだよ♡」
女性は僕のことを抱き枕にするように抱きつくと、「おやすみ」と頬にキスをして目を閉じた。
こんな状況で寝れるわけがないと思った僕だが、その女性に抱きしめられていると、まるで自分の母親にでも抱きしめられているような安心感に包まれてすぐに眠りについた。
久しぶりにぐっすりと眠れそうな気がした。
☆☆☆
今回は少し短めです。
読んでくださっている方々ありがとうございます。
これからもっともっと加速していくので、お楽しみに☆
期待にこたえられるように頑張ります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます