第7話 わたしがギリムの分も張り切っていこうっと!
各演目が、どのグループでの組み合わせとなったのかが発表されている掲示板前。大騒ぎするゆるふわ金髪はユリアンだ。
ちなみに、今年の3つの演目はこんな感じだ。
―花組―
義理の家族に虐げられた令嬢が、それでも挫けることなく前向きに生きて素晴らしい魔力に目覚め、聖女となって王子と結ばれるシンデレラストーリー(って言うかシンデレラっぽいけど、なんちゃって貴族の子達への鼓舞的なお話だよね?)
―月組―
反目し会う家門同士に生まれた男女が互いを想い合いながらも、それぞれの一族に引き裂かれてしまい、共に命を失ってしまう悲恋物語(いやいや、これまんまロミオとジュリエットでしょう‥‥。家門や派閥に拘る貴族社会への風刺と戒めかな。)
―星組―
過去に失態を犯した令息たちが、聖女の教えに導かれて旅を続け、訪れる先々で人々を助けて遂には女神が護る国を建てるストーリー(経典持ち帰ったら西遊記かな?失敗しても挽回し、大事を成せる典型的な教訓話よね。)
「なんであたしが花組なのよ!星組じゃないの!?沢山の令息たちにかしずかれて、キャッキャうふふな旅の末に彼らを導く聖女なんて、あたししか出来ないでしょ!」
さすがね、西遊記をそんなハーレム旅だと解釈するなんて。そして、花組の演目である王子
歌劇とは言ったものの、全員が舞台で歌い演じる訳ではなく、役割には演者、演奏者は勿論だけれど、大道具や舞台装置、衣装、パンフレットの作成、メイクなど、裏方の業務もグループ内で行う。慣例で演者は最高学園の4年生が就くことが多いけれど、チーム内からの推挙の声が強いなどの理由で、その他の学年から選ばれることも少なくはない。
わたしは星組だったわ。今回は歴史学の課題が楽しそうだから、衣装のデザインや資材の発注準備みたいな前半で片が付く裏方作業に回りたいなぁ。バンブリア商会のツテも利用出来て一石二鳥だしね!
「花組は講堂へ、月組は夜会ホールへ、星組は鍛練場へ集合してください!」
教員の声を皮切りに、学園生達はさざめき合いながら各グループの集合場所へと向かって移動を始めた。ユリアンは‥‥うんざりした表情のカインザに背中を押されて講堂に向かうみたいね。この2人が意外に近い感じなのかと思いきや、しっかりとメリリアン嬢がカインザの背後で、控え目に彼の服の裾を握って付いて行っているわ。やだなにこの庇護欲を掻き立てそうな感じ、可愛いじゃない。けどカインザはまだ不満を言い続けるユリアンを誘導するのにいっぱいいっぱいで気付いてもいない――ほんと残念な男ね。
鍛練場は、普段なら体術や剣術の授業に使われる施設だ。講堂ほどの広い建物で、足元はきめの細かい土が固く
「ちゅうも――く!私は星組歌劇担当のポリンドで――す。その他3名の教員付き。話は一度でしっかり理解してねー。」
口元に手を当てて、
はて?こんな派手な美人、教師の中にいたかなぁ?と首を捻るのはわたしだけじゃ無かった様で、あちこちで生徒たちが目配せし合う。
「はいはい、いくら魅力的だからと言っても、わたしが主役をやるわけにはいかないからねー。可愛い子猫ちゃんたちの担当を決めるよ。」
「ポ‥‥ポリンド様、生徒たちの誘導や進行は私たちがやりますので、どうぞ、そちらでご覧になっていてください。」
顔なじみな先生方がポリンドと名乗った美人さんに、遠慮がちに話し掛けている。ポリンド本人はと云うと、ただ進行役が楽しかった様で、3名の顔馴染み教員に代わる素振りも見せずに、嬉々として話を進めてゆく。
結果としてわたしの役割は希望通り裏方の衣装準備となった。そして、『過去に失態を犯した令息たち』にはドッジボール部の令息レッド担当が入っていた。後は、編入したばかりのギリムと、まだ1年生の王子が選ばれた。この3人の人選は、星組女子たちの強い推しによるもので、推薦時の熱量たるや令息達が若干引き気味になるほどだった。あと、もう一人の主役の彼らを率いる『聖女』は、4年の子爵令嬢が選ばれた。わたしの推薦をしてくれる生徒もいたけど、衣装を担当したくてデザインコンセプト――勿論、中華風――を熱弁したら、希望通り衣装担当になれたわ。
みんなを応援したいところだけど、歴史学のグループが一緒なギリムが演者になっちゃったのは誤算だったわ。建国期調査にがっつり時間を掛けられないのは残念だけど、ギリムが学生らしいイベントを満喫できるのは、
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