九条君は告白されたい。いや告白はあなたからして(旧題:告白はあなたから)

@kana_01

第1話 プロローグ


始まりました。

宜しくお願いします。


――――――


 俺は九条慎之介。高校一年だ。県下一の進学校長尾高校に入学してから早六月にも入ろうとしている。

 部活にも入らず、今日も図書室の一番窓側の席に座って外を眺めている。まあ、本を読むか寝ている時もあるが。


 なんで、そんな進学校に入学したかって?

もちろん目指すは有名国立大学。……なんて事思った事もなく。俺だってここに入る理由は無かった。


 中学時代の友人が一緒に受験しようという事で受験したが、あいつは落ちて俺は受かった。


 だからこれといってまだ話す相手もいない。でもボッチではないと思っている。人間嫌いではないが人との交遊関係に無頓着な所は有る。要はどうでもいい。


だが、最近この平和な学校生活を邪魔する奴が現れた。今日ももうすぐ来る頃だ。


ガラガラガラ。


図書室の入口が開いた。そいつは脇目もふらず真直ぐに俺の所に来る。

「九条君。隣に座るよ」

「…………」


俺の了解も無しに、しかとして座る。窓からの柔らかい風を受けて甘い匂いが俺の鼻をくすぐる。


 腰まである綺麗に櫛が入れられた艶のある髪が顔に来ない様に耳に掛けられている。目がスッキリとして大きく宝石の様な黒目が輝いている。


 鼻筋は絵に描いたようなラインを描き、潤った唇は輝く和菓子の様な美しさだ。胸は大きく……でもなくまあ普通。

 学年一の美少女であり成績トップの才女である。


 名前は高原綾香。同じクラスの生徒だ。知っているのはそこまで。クラスの中で話す事は無い。



「今日は何しているの」

「本読んでいたけど」

「えっ外見ていた様な」

「まあそういう言い方もある」



 ふふふっ、私の隣に座るのは同じクラスの九条慎之介君。私の身長が百六十三センチだけど彼は頭一つ位大きい。多分百八十センチ位は有るのかな。


 やや緑掛かった様な艶のある髪。耳に掛からない程度の短さで清潔感がある。目ははっきりとして少し切れ長。鼻はしっかりとしていて薄い唇があまり話さない事を物語っている。


 何故、私が彼の側に居るのかだって?もちろん興味が湧いたから。別に好きとかという感情じゃないよ。


 教室では席の周りの人と適当に話している。ボッチと言う訳でもなさそう。でも基本群れたがらない。


 部活にも入らない。そんな彼は入学式の次の日から放課後になると直ぐに席を立ってどこかに行ってしまう。家に帰る訳でもなさそうだ。


 ちょっと悪戯で後を付いて行ったら、図書室で外を見ていた。偶に本を読んでいる時もある。そして閉室になるまでいる。


 それが毎日。何となく話しかけてみた。無粋な感じではないけど物静かな感じで時々私の会話に応じてくれる。そんな彼の側に居ると私まで落ち着いてしまう。


 だからいつの間にか毎日ここ(図書室)に来るようになった。



「九条君はいつも放課後図書室に来るけどどうして?」

素直な質問をしてみた。


「別に」


そういつもこんな感じ。だから私は何とか話を引き出そうとしてしまう。



「ねえ、今日一緒に帰らない」

「やだ」



「ねえ、お願いがあるの」

「……何?」

「教室で話しかけても良いかな」

「……少しだけなら」

「ふふふっ、やったあ。じゃあねまた明日」

何をやったんだろう?


だが、この返事が俺の静かに過ごすはずだった高校生活を脅かしていくことになるのを俺はまだ知らなかった。



帰宅五分前の予鈴が鳴った。図書室の常連も帰り始めた。俺も帰るか。

図書室に放課後来る理由なんて何もない。部活に入りたくないし、直接家に帰りたくもない。かと言って途中遊んで行く気にもならないだけだ。だからここに来る。



俺は本を鞄(スクールバッグ)に詰めると図書室を出て下駄箱に降りた。


俺が上履きからローファーに履き替えると


「九条君」

「……帰ったんじゃないのか?」

「うんちょっと用事が有って」

「そうか」


何も言わずにそのまま校門に向うと高原さんも一緒に横を歩いている。彼女も何も言わない。


やがて駅に着くと

「九条君、また明日」

「ああ」


彼女は改札に入ると右に行く。俺は左だ。何処から通っているかなんて興味もない。



学校のある駅から家のある駅まで六つ。その間に三つも高校がある。あいつが誘わなければすぐそばの高校にでも行っていたのに。今更か。



駅から十分程度歩くと意味なくでかい塀そして外側に堀がある。それが俺の住んでいる家だ。


門をくぐろうとすると

「慎之介様、お帰りなさい」

「ただいま」


お手伝いの紀野さんだ。庭の掃除でもしていたのだろうか。


庭を通って玄関でローファーを脱いでいると

「お兄様、お帰りなさい」

「ただいま雅」

「お父様が、お帰りになりましたら私室に来るようにと言っておられました」

「そうか。分かった」

またあの件かな。まあいい。


俺は私服に着替えると父さんの私室に行った。父さんは書斎、執務室の他、この私室を持っている。


「慎之介入ります」

「入れ」


襖を開くと大きなローテーブルの向こう側に掛け軸を背にして父さんが座っている。

俺はその反対側に座ると

「何か」

「以前話した件だ。はっきりしておきたくてな」


―――――


プロローグ軽めにしました。

しかし、九条君のお父さん厳しそうですね。この後何話したんでしょう?


のんびり投稿しますので、のんびりと読んで頂ける幸いです。

次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価(★★★)頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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