第45話……お前もか?

「ちょっとアーセさん……」

 マコはあせった表情で、おでこをかいていた。


「ありがとうな! またここへ遊びにくるぜ。俺たちは図書館に向かっているんだよ」

 アーセは寂しそうに「そうか」と返答し、余っていた刺身を食べていた。


 食事が終わり、しばらくするとアーセが俺をタバコに誘った。外は一時の嵐が過ぎ去り、雷の音も聞こえなくなっていた。


 ただ、波の動きは相変わらず激しく、堤防ていぼうを打ち付ける波の音は、依然として激しかった。アーセがタバコに火をつけた後、自分を落ち着かせるように話しかけてきた。


「……メロンは誰かと付き合っているのか?」 アーセが突然訪ねた。

「いきなり何を言い出すんだよ!」と 俺は取り乱して、上にあげていた短髪をみずからおろしてしまった。

「聞いただけだよ!」

 茶化ちゃかすように話す姿は昔のアーセと変わりはなかった。


「……告白しようかな」

 アーセはため息と同時にタバコの煙をはきだした。煙は風に乗せられてどこかへ消えていった。俺にはアーセが何についての告白なのか分からなかった。



「……俺は今、国の仕事もしている!」

「そうなのか。ここの経営もしながらか。……働き者だぜ」

「それより……お前たち11区には帰れないぞ!」

 状況をみ込めていない俺を怒るようにアーセはタバコの灰を落としながら言った。タバコのけむりが次は、俺の顔に向けて飛んできた。避けきれず、顔で煙をびた。 その煙のせいでせき込んだ。



「どういう意味だよ!」

「国はお前たちの行方をひそかに追っかけているそうだぞ! ……気をつけろ」

「なんで。俺たちが追われるんだよ……!」 俺は混乱した。

 

 カミルのおかげで指名手配はまぬがれたはずと思い返していた。ただ、造幣局には何十人も人がいた。奴らが国に報告するのは当然のことだ。俺たちの仕業だとすぐバレるとも思っていた。


「心当たりはないのか?」

 博士の事を思い出していた。博士の家でオズワルトに関する話をしたし、博士の残したメッセージを解読するために動いている。


 それにマーヒーでは国に対して反逆はんぎゃくくわだてている者たちと知り合った。最後には造幣局で収容しゅうようされていたアンコまで外に連れ出した。総合的に判断すると俺たちも反逆行為をしているなと思い返していた。


 追われてもおかしくない。むしろ、心当たりしかない。アーセは確信した表情だった。アーセの目は獲物を狙う動物のように鋭くこちらを見てきた。


「……お前も敵か?」

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