第37話 炎の道を見る

 いやー面白かった。布を操る戦士が最初有利だったけど、牛の戦士が布を切り裂いたり、逆に利用して引いたりとか。あと輪っかを投げる戦士は厄介だな。戻って来るし、何か増えるしで。魔王の采配が少しミスしてたとこもあるみたいだけど、それは数えるぐらいで、獣の戦士たち、苦戦してたな。それでも勝つ。そしてまさかの展開だったしな。十二の戦士が負けたことを素直に認めるとは。てっきり認めんとかで新たな力を……うん。この展開は嫌だわ。戦士だからこそ、魔王は負けを認めたんだろうな。それ以外だったら、暴走してただろ。間違いなく。


 あとそれ以外のも面白かった。謎解きみたいなのはさっぱりだったけどな。何だよあれ。屁理屈じゃねえかって思った。上手く言えば発想の転換なんだろうけど、気付くか普通は。いや。気付くからこそ、話のネタになるんだろうけど。


「それでは面白いものを見せよう」


 語ってくれた女性が楽しそうに襖を開けた。うっわ。空が真っ暗になってるんだけど。知らない間に過ぎてたんだな。いや。ジュウニシシ以外の話もあったから、夢中で聞いちゃってたのが原因だろうな。てか。今なんて言った。面白いもの?


「少し歩こうか」

「あ。はい」


 てなわけで岩で出来た灯りがあるところまで移動だ。たくさんあるのはやっぱ夜暗いからだろうな。普通に歩く人がいるとは思えねえけど。周り森だから。


「うふふ」


 おーすっげえ笑ってる。そういりゃあそこだけ明るいのは。てか。これ灯りの道のとこだよな。何が起こってるんだ。


「ウチの名物だよ」


 灯りの上に火の鳥。え。火の……鳥? しかもなんか普通火があるとこは暗いままだし。どうなってんだこれ。


「ピー」


 鳴いたな。火の鳥が消えた。ておい。灯り全部燃え始めたんだけど!? しかも歩く道にも火が移ってる! 周りにも行ったら大火事になるってぜってえ!


「ここは火の神が祀られているところ。生命の火。自然の火。二つの性質を持つと言われていてね。だからこそ舞い降りると大体こうなるのさ。ああ。心配無用だよ。これ以上は燃え移らないから」


 女性がにっこりと教えてくれたのは……いいんだけど、また読んでねえか? ま。とりあえず心配ないのは確かだろうよ。ちょっとずつ火の勢いが落ちてきてるし。どこかに移ろうとしているし。


「夜は恐怖そのものだよ。単純に暗いというのもある。けど獣が動く時間でもあったからね」


 あーそういうことか。女性の解説を元に考察するとあれだな。合ってるか微妙だけど、言ってみるか。


「それじゃここの火の神とやらは人々を守るために降りてきたと?」

「正解だ。旅人よ。火に関する神でも役割が違う時もある。勉強するのも悪くはないだろ?」


 灯りに火が付いた状態になったな。派手なことをやるな。火の神様。てか。勉強はちょっとなぁ。神様関連、結構ややこしいから正直したくないんだよな。


「それ難しいと思うのですが」

「おっと。それを知っておったか」


 うっわー悪そうな笑顔した。


「まあこれを言って本気でやる奴おらんしな。ほれ。食え」


 時間かかるし、やる余裕はないだろ。冗談の類だってのは分かったけど、分かりづらいな。


「ああ。どうも」


 そんで女性から何かを受け取っちゃった。棒。干したイカを刺してるよな。食うか。匂いが香ばしくていい。あれか。懐に隠してた奴だろうな。


「彼奴はかなり愉快だからな。応じてくれるんだよね」


 彼奴って誰だろう。


「それとほれ。食べながら帰るんだね」


 葉っぱに包まれた暖かいもの。飯だな。そりゃそうか。真っ暗だし。気を付けて帰ろう。


「それじゃありがとうございました」

「ああ。こっちも楽しかった」


 別れの言葉を言って、宿に戻ろうか。なんかやたらと森が明るいのは何でだ。月があるだけじゃ説明出来ない。それにこれは火の色。まあ……考えても答えは辿り着きそうにないし、諦めよう。そんで寝よう。

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