第19話 別世界との繋がり
出身を偽るとはどういう意味だ。カンタは何を言ってるんだ。何が何だか分からねえ。
「まあこれだけやと困惑するわな」
やってて聞いてきたな。此奴性格が悪い。
「これなら分かるんちゃうか。タケダトモヤって子なんやけど」
え? ヒューリオのシルクの服屋のとこの。俺の友達の。何でこんな遠い極東の星天諸島で出てきたんだ?
「お。会ったことがあるんか」
「ええ。まあ」
トモヤは一体何を隠している。違うところで生まれ育ったってことか? だめだ。頭が全然回らねえ。
「あの子はな。タケダトモヤは別の世界からやって来たんや。生まれも育ちも基本そっち。違和感はなかったんか?」
トモヤは俺より物知りだなと思う以外は普通の青年って感じだ。別の世界から来たっていう意味が分からねえよ。
「いえ。全然これっぽっちも」
星天諸島からやって来たから苦労してるもんだと思ってたしな。
「まあ。感じへんのも無理はないで。言語自体そのままやもん。あの子の故郷と星天諸島は」
「そ……そうなんですか」
どう言えばいいんだろう。これ。世界が違うとか、言葉がどうこう言われても、この頭じゃまず理解なんて……いやそれ以前だな。受け入れられないが正しいかもしれねえ。
「お兄様。お茶をお持ちしました」
いつの間にかいなくなってたコンコがお茶を用意していた。
「おおきに。ま。話は長くなるし、座ろうや」
カンタの指パッチンでちゃぶ台とやらと薄いクッションが出てきた。見た目は獣人族だけど、御使いということもあって、魔術の腕は相当だ。当たり前か。
「ここからが本題や。何故別世界やのに言葉が同じかって話になるんやけど。どう思う?」
なーんでムズイ話をするんだろうな。マーリンみたいに学があるわけじゃねえんだけど。
「ただの偶然なんじゃないですか」
「うっわ。すっごいやけくそやな」
だって分からねえもん。苦笑いしてるけど、何も知らない一般人は大体そういうと思うぞ。
「まあ。普通に暮らしてたら知らんことやしな。神々が関わる話やし」
うわーそう来るか。てか。それ。
「それ……俺に話していいんですか?」
「かまへんかまへん」
軽いな。此奴。
「マーリンも知っとる話やから。まあ滅多に喋らんようにしとるっぽいけど」
本当にマーリン、色々なこと知ってるな。
「たまーにな。こっちに別世界の人間が来ることがあるねん。せやから言葉も似てるか、同じになったりするんよ。理由は神々の気まぐれが多いかもしれへんな。多分」
多分かよ! 適当じゃねえかって言いたいけど、流石に細かいとこまでは教えるつもりはねえってことか。
「それが原因でマーリンが怒ってたわ」
「怒ってたんですか」
「そや。勇者召喚の本質を捻じ曲げちゃったからな」
そういえば中止にしたとかそういうのを聞いたな。作った術を弄って、トモヤをこの世界に来させたってことか? うーん。分からねえ。
「あと望んでいるのかも分からんままってのもあるんちゃうかな。知り合いがいなくて、未知の場所で過ごせってなると苦痛やろ」
確かにそうかもしれねえ。トモヤはどうにか馴染んでいるけど、それが出来ない奴はどうなるんだろうな。
「実際、餓死する奴もおるし、犯罪を起こして一生牢に入る奴もおるぐらいやしな。善意でやっても、結果は変わらんっての、ようあるわ」
悲惨な最後だな。死ぬ運命は変わらないのもちょっとあれだな。可哀そうというか。つーか。連れて来させた張本人は何やってるんだ。マジで。
「神様は何かしないんですか」
「せえへんな。神であっても万能ちゃうし、下手に動けへんよ。整えるだけで終いやな」
うわー気まぐれでやって、その後のカバーは一切何もせずなのか。最低だな。善意でやってるのかもしれねえけど、マジで一方的じゃねえか。でも力があるから、影響力も相当だし、やらないってのも分かっちまうのが辛い。
「それでもあの子は懸命にやっとるんやろな。普通の子やけど、それでも前向きに進む子でもあるしな」
完全に親の目線だな。気まぐれだったり、慈悲深いところがあったり、残虐なとこがあったり。神も、その御使いも、本質は変わらねえのかもしれねえ。
「必死に学んで、出来ることを職にしたとは聞いてはいたけど、それ以降はマーリンと連絡してへんし、どんな感じなん」
距離が遠いとこにいるマーリンと定期的に連絡取り合ってるのか。立場を考えると、忙しそうだし、回数は少なめかもな。
「少なくとも俺がヒューロから出るまでは元気ですよ。マーリンの服を作ったり、他の店の手伝いをしたりとか」
「え。マーリン、服作ってもらってたん?」
反応するとこそこかよ。羨ましいですっていうの顔に出てる。
「えーな。えーな。僕にもかっこえー服、作って欲しいな」
ごろごろと子供っぽく回ってる。何やってるんだか。そんでカンタの妹のコンコ、うんうんと頷くとこか。そんなに欲しいのか、新しい服を。
「コンコさんも欲しいんですか?」
「ええ。おニューな服、欲しいです。具体的に言いますと、モダン的な感じの。タイショウ時代のああいうものを」
何言ってるのかさっぱりだ。魔術の詠唱じゃねえんだぞ。初めて聞く言葉ばっかでとんちんかんだ。服が欲しい以外さっぱりだ。
「頭がパンパンになっとるやろ」
そんでカンタはゲラゲラ笑うなよ。
「いやだって知らないのばかりなので」
「まあ安心しとき。更にぶち込むから」
どこが安心しときだ。更にぶち込むって。え。まだ続きがあるのか? 勘弁してくれ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます