第14話 子供たちとお化け屋敷 後編

 えーっと。ぐるぐる歩き回って、不意打ち喰らったり、上から冷たい何かが落ちたりとか、コウスケが言うキモダメシ要素を味わいながら、2人目っぽいの発見。階段のとこにいた。デカいツルツル頭の爺さん、これバランス崩れねえか?


「いた! 頂戴!」


 ストレートに言ったな。


「署名せんぞ。これを取るこったな。イヒヒヒヒ」


 まさかの展開。手のひらサイズの羽根の付いたボールを飛ばしたな。うっわー。暗い中で結構速かったし、いじわる問題だな。ちょっと手助けってことで久しぶりに光の精霊の加護を使うか。


「すっげえ! 見やすくなった!」


 あとは何もしない。主役はコウスケ達だしな。


「ちぃっ! 悪ガキの入れ知恵か!」


 悪ガキじゃなくて大人の……いやあの様子だと俺がやったの気づいてねえな。


「ならばこうだ!」


 更に速くなったな! サイテーだ! 目の前にいる爺さん! 大人げねえ!


「ひゃはははは! これでどうだ!」


 すっげえイキイキしてる爺さん。さあて。どうすっかな。


「くっそー!」


 そりゃ地団駄を踏むよな。


「お前さん達の能力じゃ、あの球はそう簡単に取れはしない。さあて。どうするどうする? ヒヒヒヒ!」


 子供に対する態度じゃねえあれ。ああいう爺さんにはなりたくねえな。


「確かに俺達じゃ難しいかもしれない」


「でももう1人いるんだよなー!」


 おーい。コウスケ達、そんな期待した目で見るな。


「たかが大人だろ。まあいい。大した問題ではない」


 完全に見下してるな。そんじゃ。さっさと取ろう。まだ目で追いかけられるし。今ならいけそうだな。よっと。


「な……なんだと?」


「やったー! 約束通りちょうだいね!」


「分かっとる。ほれ」


 意地の悪いことはしないみたいだし、ホッとした。てっきり何かするのかと思ってたから。やたらと俺を見てる気が。


「にしても。赤毛のお前さん。妙だな」


「何がです?」


「人間には精霊の加護がある。属性があるのも知ってはいる。だが……さきほど使っていたのは4つのどれにも当たらん。なるほど。新たな時代に進みつつあるということか」


あの光やったの俺なの分かってたのか。てか。勝手に一人で納得するな。そんでブツブツ何か言ってる。俺ら置いてけぼりなんだけど。コウスケ達、もう行く気満々だ。


「えりー。行こうぜ」


「あー……はい」


 時間制限を考えると、放置が一番か。行こう。


「あだ!」


 途中で銀色のたらいが上から落ちてきた。頭にガンって来たから普通に痛い。笑い声聞こえる時点で誰かがやってることなのは確定。ふざけるな。


「あと1人なんだよな。どこにいるんだろ」


「いつもの場所にいると思うけどなー。いた」


 薄暗い廊下の奥に占い屋。ボロボロで誰も来なさそうな雰囲気しかない。ローブで顔見えねえしな。


「ようこそ。占いへ。おや。なんだ。坊やたちじゃないか」


 お婆さんぐらいの声だな。ちょっと棘がある気がしなくもねえが。ため息吐いちゃってるし。


「まあいいさ。どうせ課題をやりに来たんだろ。おいで」


 紙を出したな。そんでコウスケ達、嫌そうな顔になったな。なんだこれ。知らない文字の羅列でどういう感じかさっぱりだ。


「ねえ。マジで言ってる?」


「当たり前だ。あと少しで空になりそうなんだからね」


 要するにパシリか。自分で行けよ。自分で。


「俺あそこ嫌なんだよな。デカい蜘蛛がいてさ」


「でも行かないと達成出来ないし」


「行くしかないよ」


「うぐぐ」


 やっぱり嫌がってる。デカい蜘蛛かあ。魔獣の類か?


「ほらさっさと行くんだな。限りがあるんだろ」


「はーい」


 旅してパシリみたいなのやるとは思わなかった。そこまで遠くないからマシか。何だろ。この感じは。下から視線みたいなのが。おー。硝子のケースに服を着た骨。表情が分かっちゃうのは何でだろ。緩んでるというか、デレてるというか。そんな感じがするんだよな。


「うわああああ!?」


 そんでお前たちは俺に抱き着くな。そっちの方がびっくりする。


「びびびびびっくりした」


「あー寿命何年か縮んだ」


 不意打ちはよくあることなのか。それであそこまでのリアクションを取ってたってことか。その後はまあ特に何もなく、普通に歩いてるだけでデカい蜘蛛がいるとこに着いた。うん。確かにデカいな。嫌がるのも分かる。下手したら討伐されかねないレベルだと思う。見た目と大きさだけなら。


「ひぃー……」


 何度も会ってそうなコウスケ達でさえ、これだもんな。


「えりーは何で平気そうにしてんだよ!」


「え。まあ。慣れですね」


 ドラゴンに比べればまだマシ。討伐したりしてるから。


「すげー。あ」


 拳ぐらいの大きさの黒い蜘蛛がコウスケからメモを奪いやがった。子分か何かか? 目があるとこまで持ってったな。そんで頼まれた分っぽいの足元に来たな。どういうシステムだこれ。


「あああああありがとう」


さっさと去ろう。そんで占いの婆さんのとこに行こう。


「いやー助かったわ」


 そんで無事に婆さんから署名貰って、課題とやらは終了した。時間制限はあったけど、余裕で間に合ったっぽい。


「あとでユウタからご褒美といきたいとこなんだけどね。なんだい。ああ。うん。怪しい奴を捕らえた? 前にいると。分かった。ここにいろと言っておる。暫し待たれよとな」


 もう捕まえたのか。ここにいる奴ら結構優秀だな。そりゃそうか。明らかにやべえのばっかいる屋敷だし。


「その間に占いとかするかね」


「いえ。ご遠慮いたします」


 全員口揃えて言ったな。いやー婆さんには申し訳ないけど、笑いが出てきた。


「減るものでもないのになんでかね。まあオトメじゃないし、いいがな」


 気にしてはいないのか。オトメはさっぱりだけど、俺らのことを指さないのは分かった。何となくだけど。


「待つだけじゃ暇だろ」


 懐から取り出したな。札が何十枚もある。


「札遊びでもするか」


「やったー!」


 こんな薄暗いとこで札遊びするとはな。時間潰せるだけマシか。この後はまあ婆さんが容赦なく、子供たちをフルボッコ。見てた素人の俺でも分かるレベルでえげつなかった。


「あらま。ユウタは外出するのかね」


「ああ。これが今回の褒美だ。受け取るがいい」


「やったー!」


 そんでげんじぃがわざわざご褒美をコウスケ達に渡してた。あれ。何で俺にも。


「あの俺はそこまで関係ないのでは?」


「不審人物を捕らえることが出来たのは其方のお陰ゆえだ」


「そういうことですか。ありがたくいただきます」


 屋敷から出て、ミコの島に帰って。


「えりーありがとねー」


 コウスケ達と別れて、宿に入って、コウスケの母さんから報酬貰って、どんな感じかなーって思って袋を開けてみたんだよ。


「どっちも食い物系だとはな」


 果物を干した奴と穀物の粉で作った菓子だった。どっちも菓子系って。まあいいか。全部食べればいいし。

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