第6話 交流会に参加する
えーっと。どうしてこうなった。炎天下。白い砂浜。サファイアみたいな感じの色の海。手元に布で作ったボール。前に相手チームが5人。控えっぽい人が数人ってとこか。動物のたれ耳と角が特徴的なおっさんが強く背中を叩いてきたよ。地味に痛え。
「いやー若い奴が助っ人に入ってくれて大助かりだよ!」
そうだった。朝起きて、ちょっとぶらりと散歩しようかなって思ったら、カオルさんに代表として出てくれって言われて……ルール碌に知らねえのに……暇だったから承諾しちゃった。今更後悔してるけど!
「年に一度の交流会でスケさんが体調崩してさ。どうなるかと思ったら」
「気楽にやりーや」
「分かりました」
不安しかねー……。だって初心者だぜ? 足引っ張るのは流石にごめんだ。
「ボールを地面に落とさず、彼奴らに渡したり、浮いてる変なガラクタみてえのに当
てたりすりゃ、あの輪っかに近づけるってものさ」
カオルさんがグスター共通語で説明してくれた。木の棒に羽が生えてる感じのあれか。ガラクタ。当てるって言ってたけど……どうなるんだ。
「あれ当てたらどうなるんです?」
「変なとこに飛ぶ。赤色なら私達が有利な方に、青色なら相手が有利な方に勝手に飛
ばす感じさ」
ランダム形式かよ!? こえーよ!
「絶対怪我する人出て来る奴じゃないですか!」
「まあ否定はしねえけど、死人は出ないから安心しとけ。とりあえずあの輪っかのとこ入れておけばいいから」
「分かりました」
2人が試合会場の真ん中行ったな。おー跳んだ跳んだ。相手の方、高いボール取った。体当たりはだめで、投げてる隙に奪わないといけないんだっけか。しかも砂場だからマジで走りづらい。むっず!
「こっちに渡せ!」
「そらよ!」
流石ここに住んでる人は手慣れてる。ひょいひょい投げ渡してる。輪っかのとこ入れておけば、点数が入るって話だし、先読みして前に出た方がいいな。
「あ。しもたわ。赤髪の兄ちゃん。ごめんな」
青色のタスキって奴を腕に巻いちゃってる歯が尖ってる俺と同い年ぐらいの男が笑って謝ってるな。何でだ。あ。そういうことか。変なガラクタに当てた結果、俺のとこにボールが向かってるってことか。
「いえ。大丈夫です」
むしろこっちの方がまだいける。体の方向さえ合ってれば、どうとでもなる。よっと。
「あとはお願いします!」
味方に渡して。あとは俺も加勢しにいけばいいか。
「げ!?」
「奪い取れ! 加点を許すな!」
げ!? 青いチームが走ってる。俺も加勢しねえとな。
「球を地に落とすんじゃねえぞ!」
「うっせえわかっとるわ!」
でっけえ声。耳押さえたくなる。この辺りでいいよな。俺達が入れるとこの近く。
「旅人! 決めておけ!」
来た! あとは輪っかの中に入れるだけ!
「よし! 俺達が先制点だ!」
「攻めてくぞ!」
って感じでボールを投げたり、輪っかの中に入れたり、奪ったりして、いつの間にか、昼ごはんを食う時間になった。慣れてねえ砂浜で動き回ったから疲れた。日陰があって良かった。火の上に網があってそこで野菜とか魚とかを焼いて、甘辛いタレで食う感じか。
「お疲れ。エリアル」
「カオルさん」
カオルさん、食べ始めるの早い。
「お前も食っとけ」
色々盛ってくれてる。受け取ろう。
「こっちの方が本命さ。昼から酒が飲める貴重な機会だからね」
あーほんとだ。何人か酒っぽいの飲んでる。あっちの木の下に酒が入ってる土壺置いてあるし。あれ。語り部の爺さんも来てる。白い岩の階段を下りて……こっちに来たな。
「よお。こっちに参加しとるとはな」
「人数が足りないとかで入っただけですよ」
爺さん。上から下までじーって見られるのはちょっとな。
「確かに鍛えておる。異国の方よ。北にあるコトの島に気を付けろよ」
え。忠告されたんだけど。
「コトの島にですか?」
「そうだ。とあるものが盛んだからな。元忍びよ。どう思うかね」
語り部の爺さん、カオルさんに聞いてる。どう答えるんだろ。
「私も似たような感じだね。外から見てたけど、あれぐらい動けるとなると、うん、確実に」
え。何。何があるんだよ。コトの島に!?
「まあ心配するな。死にはしねえよ」
カオルさん、にこにこ笑ってるけど、言ってる事怖い。
「笑顔で言うことじゃありませんからね!?」
「おーい。喋ってばっかりしてねえで食えよ! 動いてる奴が食べねえと!」
あ。注意された。そう言えば口に入れてなかった。恵みの神よ。いつもありがとうございますっと。やっぱ体動かしたあとのご飯は美味かった。酒は……飲め飲めって勧められたけど、断っておいた。ご飯の進みが悪くなるしな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます