第19話⁂恋の行方!⁂

 愛し合っている2人は真剣に結婚したいと考えているのだが、両親の容赦ない反対に遭い、考えあぐねて居る。


 両親としては、養護施設出身の麗子の事がどうしても受け入れ難いのだ。


{新潟県でも有名な老舗〔菱本酒造〕の跡取り息子の嫁が、寄りによって天涯孤独の養護施設出身者では、礼儀作法や一般常識に掛けているのではないだろうか?それから…何よりも世間体を何よりも気にする家庭、もし嫁が養護施設出身者と世間様に知れたら顔向けが出来ない}

 まず、何より世間体。

 それと、ちゃんとやって行けるのか、心配で心配で絶対にありえない。一歩も引かない構えなのだ。


 そして両親が最終的に出した結論。

 それは、両親の何とも酷い仕打ちだった。


「そんなに結婚したいのならしても構わない。だが、お金も一切出してやらない。〔菱本酒造〕も継承させない。裸一貫でこの家から出て行け」


 そこで唯一腹を割って話せる山田君の元に向かう2人。

 アッ!ここで山田君のフルネ—ムを紹介しておきましょう。

『山田茂』


 最初の出会いこそ散々なものではあったが、何が功を奏するか分かったものではない。

 両親の容赦ない結婚への反対に、藁をも掴む思いで早速2人は大切な友人山田君に会いに行った。



「両親が結婚に反対なんだよ。山田君どうしたら良いと思う?」


「そうだなぁ?俺は親の反対を押し切ってまでは結婚しないと思うが、どうにもならないんだったら、両親から言われた通り裸一貫で2人で一緒に家を出るしか無いな?何なら我が社〔ヤマダ模型〕で働いたらいいじゃないか、俺が父に頼んでみるよ」


 山田君の父親は玩具製造販売を手掛ける会社の社長さん。

 まだ未上場の従業員も70名程の会社だが、鉄道模型やプラモデルなどの玩具の卸販売を行うこの会社は、鉄道模型やプラモデルなどの根強いマニアファンに支えられ、最近とみに業績を伸ばしている有望な会社。


 その為、大卒の優秀な人材は喉から手が出るほど欲しいのだ。

 ましてや拓也は国立一期校で北陸の雄、金沢大学を卒業している身の上。


 早速、山田君の父親からOKを貰った2人は、息子の大親友という事で豪邸の隣の、こじんまりとした別宅に身を置くことになった。


 本当は拓郎と麗子は、こんな社長家族の監視付きのような場所での生活には、難色を示していたのだが、山田君がどうしてもと言うので致し方なく決断した。


 また山田君の有無を言わせぬ威圧感に、どうしようもなくと言った方が正解なのかもしれない。

 そこには山田君の目論見が有るのだ。

 いつでも大親友2人に会いに行けると言うメリット。


 こうして別宅での同棲が始まった。

 だが、この同棲には予期せぬ問題が起きる。


 どういう事かと言うと、あの腹を割って話せる唯一の友達だった筈の(山田君)茂が、事あるごとに別宅に訪れて2人のラブラブモードをぶち壊すのだ。


 最近では夜泊って行く事も度々、全く迷惑の一言。

 そんな時に拓郎が、出張で東京に出掛け2~3日帰れなくなった。

 それを待っていたかのように、別宅の女1人の麗子の元にやって来た茂。


 茂は最初から麗子ちゃん目的で、親切を装って近付いていたのだ。

 玩具屋で働くことを進めたのも、どんな形であれ麗子ちゃんと一瞬でも傍にいたいからだった。


 そして…拓郎が出張しているのを良い事に早速やって来た茂。


「外食に行かないかい?」


「ああああ!有難うね!私今日は疲れているから……」


「そうかい?じゃ~僕が料理作ってあげるよ」


 そう言って図々しくツカツカ入って来ると、そそくさと冷蔵庫に有る残り物で何やら作り出した。

 その日は茂が作った料理を2人で食べただけで帰ったのだけれども、また次の日もやって来た茂。


「どうだい今日は体調の方は?」


「うんスッカリ良くなったわ!ありがとう!」


「じゃ~今日こそ美味しいお寿司でも食べに行こうよ!」


 実は拓郎に強く言われている麗子。

「男の人と2人っきりで出掛けては絶対にダメ!」

{でも、折角の大好きなお寿司だし、相手が茂なら安心}そう思いOKを出したのだ。


 茂の愛車で出掛けた2人は、早速老舗寿司店でいつもの様に楽しい会話に花を咲かせ、美味しいお寿司に舌鼓を打った後家路を急いだ。


 だが車は家とは逆方向の海辺に向かった。


 日中は何とも綺麗な桜色に🌸

*。⋆染まった赤潮の海…


 その夜には、夜光虫が💎

ダイヤモンドを散りばめたように🔹*🔸。✧⋆

✧・*🔹美しく海を✨光らせている…


「一体どこに行くのよ?」


「いいじゃないか、たまには拓郎じゃなくて僕とのドライブも」


 そして…誰もいない夏の終わりの海辺の海岸通りに車を止めた茂。

 夜も深まり誰もいない海。


「ワァ~~綺麗!海がキラキラ輝き生きているみたい!」


「夜光虫が光って綺麗だな~!」


 魔物のような夜の海での出来事。

 茂が今までの思いの丈、我慢していた感情を麗子にぶつけた。


「麗子ちゃん俺はず~っと麗子ちゃんの事が好きだった。俺だったら麗子ちゃんを絶対に幸せにできる自信が有るんだ………両親も麗子ちゃんの事をいつも『あんな子が茂のお嫁さんだったらどんなに良いか?』って褒めているんだ。だから養護施設出身だからって………多分反対しないと思うよ。たとえ反対したとしても両親をぎゃふんと言わせれるだけの、俺には有名なプラモデルを発明した特許権が有るんだよ………だから絶対に反対しないから」


 そう言うと一気にシートを押し倒して、強引にキスをしたのだ。

 あまりに急な事で動転したのと同時に…………。


「何をするのよ?茂と拓郎は大親友でしょう?それを大切な友達の彼女の私に何て事するのよ酷い!ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」


 ペッシ———ン


 麗子は、思いっ切り茂の頬っぺたを叩き、夜の海岸通りを泣きながら駆け出した。


 こんな夜も更けた時間帯に危険極まりない。

 何が起こるか分かったものじゃない。

 慌てて麗子の後を追う茂。


「麗子ちゃんゴメン!許してくれ………でも俺、高校生の頃からずっと麗子ちゃんの事が好きだったんだ………最初の内は、こんな俺なんか相手にされるわけが無い。傍に居られるだけで良いと思っていたが、拓郎と麗子ちゃんが段々接近しているのが分って、不安で、苦しくて………親切を装って2人の間を取り持つフリをして、色々2人の関係を聞き出していたが、関係が深くなるにつれて、親友の彼女だから諦めようと思う反面、アイツ拓郎が憎くて憎くて仕方がなかったんだ………それでも諦めきれず…悶々と暮らしていたが………やっと我が社〔ヤマダ模型〕の仕事に就いてくれるようになった麗子ちゃんの顔を、毎日見れて最高に嬉しかった。そして…そして…遂に、俺にも微かな希望が湧いてきた。到底勝ち目のない優秀でイケメンの拓郎だったが、今拓郎は、我が社〔ヤマダ模型〕の一社員にしか過ぎない………『そんな麗子ちゃんを、まともに幸せにも出来ない男なんかに、麗子ちゃんを渡して堪るものか!』そう思うようになったんだ………麗子ちゃん僕は麗子ちゃんを、一生幸せに出来る自信が有るんだ。だからあんな麗子ちゃんを、守る事も出来ない男なんか諦めてくれ!そして…そして俺と付き合ってくれ………!そうじゃないと拓郎も麗子ちゃんも、我が社から出て行って貰うからな!」


 麗子は、二者択一を迫られ窮地に立たされた。

 この後とんでもない事件が起きる。


【国立旧一期校(こくりつきゅういっきこう)および国立旧二期校(こくりつきゅうにきこう)は1949年から1978年まで実施されていた日本の国立大学入試制度の区分の一つ。当時、各大学ごとに行われた入学試験は、文部省により一期校と二期校の2つの区分に分けられていた】

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