じゃあ我慢するのをやめます!~いじめ・暗殺・婚約破棄をしてくる人達とはおさらば~
@test555
第1話 濡れ衣と婚約破棄
「アルフレッド・フェリクスッ!貴方との婚約を破棄させていただきますわッ!」
甲高い声が王立学園中等部の卒業パーティーが行われているホールに響き渡った。
声の主は、この国の第一王女のエリス・ウッドポッシュ。
そして、婚約破棄を言い渡されている男が、この国の宰相の息子であるアルフレッド・フェリクス―俺だ。
(…えっッ!聞き間違いじゃないよな!?いま、婚約破棄って言わなかったか??)
事態が飲み込めず、混乱していると背後から勢いよく扉を開ける音がした。
バタンッ!
静寂の中、軽快な足音がこちら側に近づいてくると、突然、背中から僅かな衝撃と金属音が鳴るのを感じた。
カッ…カッ…カッ…カッ…カッ…カッ…
…カキンッ!…
(魔法障壁に攻撃された!?敵か!?)
振り返ると、豪華な衣装を纏った金髪の男が剣を振り下ろした状態で、驚愕の表情を浮かべていた。
(コイツはたしか…留学生で隣国の王子だったはず?こいつがなぜ?)
隣国の王子は表情を取り戻すと、こちらを睨みながら人差し指をこちらに向けて、声を張り上げる。
「逆賊ッ!アルフレッド・フェリクスよッ!貴様が魔族と結託して、この国を滅ぼそうと企てたことは我々の調査で明らかになっているッ!大人しく縛に就くが良いッ!」
隣国の王子の言葉と同時に騎士団らしき兵士達がぞろぞろと突入してくる。
王女のエリスが、悲しそうな表情を浮かべながら隣国の王子の隣に近づくと、親しげに腕を組んだ。
「アルフレッド・フェリクスッ!この一件は、貴方のお父上からの告発のおかげで明るみに出すことができましたッ!証拠も揃っていますッ!もう言い逃れはできませんッ!今回の罪は、私がお父様に頼んで何とか最前線での兵役で許されるように取り計らってあげますわッ!だから、どうか、大人しく罪を償ってくださいッ!!!」
(????????????………………。…ふぅ…、少しずつ、理解できてきたぞ…。俺は”無実の罪を着せられて、いきなり婚約破棄されたうえに後ろから斬りかかられて、魔族との戦争の最前線に駆り出される”という筋書きにのせられているってことかッ!?しかも、あのクズの父親は庇うどころか尻尾切りをしたのかな。さらに、周りを見渡す限り味方もいないみたいだ…。弟と妹も俺から目を反らしちゃって、ちっとも庇う素振りを見せないや。弟と妹はけっこう可愛がったつもりだったんだけどな……でもッ!……
………最高じゃねぇかッ!!!………
イヤッホ~♪これであと腐れなく、この生活とおさらば出来るぜッ!元日本人の俺には貴族の生活なんて性に合わなかったんだよなぁ。最初は、剣と魔法の世界に貴族として生まれ変わったって喜んだけど、嫌なヤツが多いうえに性格の悪い両親や婚約者がいるし、力も思い切り使えないし、結構限界だったんだよねぇ。でも、今回の件でようやく、踏ん切りがついたよ…。顔だけで性格の悪い元婚約者の人。どういう魂胆か全くわからないけど、俺を解放してくれてありがとう。俺は、今から自由に生きてやるぜぇッ!)
…シャイニングフォース(光魔法)…
光魔法で生み出した光のオーラを変化させて、光の翼を造り出した。
神秘的な光の翼に、周りの人間達の様子が騒然となった。
…ザワ…あれって、光魔法?…ザワ…なんて美しいの?…ザワ…でも光魔法使いが内通者?…ザワ…ザワ…光魔法使いがいなくちゃ魔王は倒せないんじゃ…ザワ…我が国は光魔法使いが敵に回ったのか…ザワ…でも、なぜ卒業パーティーでこんなことを?…ザワ……ザワ…
光の翼を見た周りの人間のざわつきに、王女エリスが狼狽え出す。
「アルッ!貴方、素質を持っていただけじゃなかったの?光魔法が使えるんだったら、話は別よッ!内通者の罪も無かったことにしてあげるッ!アハハッ!今のはぜ~んぶ冗談なのよッ!」
(光魔法が使えることがわかった瞬間、目の色が変わったな。光魔法の素質があるってだけで婚約者にさせられたのだから、使えるとなったらそうなるのも当然か~。…あっぶねぇ~、使えることを隠しておいて良かったぁ~。)
王女エリスを無視して、光の翼を使い空中に飛び出すとホール中央の天井に向けて魔法陣を展開する。
…レイ(光魔法)…
魔法陣からまばゆい光線が放出され、天井に穴が空き、キレイな満月が顔を覗かせた。
「な、何をしている騎士団ッ!あの逆賊を捕らえよッ!」
隣国の王子が騎士団に命令を出す。
隣国の王子の命令を受けて、騎士団は上空に向けて魔法攻撃を開始し始める。
…ウインドボール(風魔法)…
…ウインドランス(風魔法)…
…ウインドカッター(風魔法)…
… …… …… …… …… ……
…
騎士団の風魔法による総攻撃は、こちらの魔法障壁を突破することが出来なかった。
(隣国の王子がこの国の騎士団を動かした?きな臭いことこの上無いな…。…まぁいいかッ!もう関係ないしッ!…追いかけられて来られても嫌だから、念のため、足止めしておくか。)
首にかけているペンダントから召喚石を取り出し、魔力を流すと召喚魔法陣が浮かび上がる。
…サモン(召喚)…
―シャイニング・エレメンタル―…
『呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃ~ん♪光の精霊だよ~ん♪アルゥゥ♪どうしたの?』
頭に王冠をのせた金髪の子供(光の精霊)が現れた。
「あの人間達が俺の後をついてこれないようにしてもらえる?」
光の精霊は嬉しそうに頷くと、両腕を前に出すと複雑な魔法陣をいくつも展開する。
『アハハッ!ついにアルからも愛想を尽かされたの~♪バカな人間達♪精霊からも光の勇者からも愛想を尽かされてどうやって魔族と闘うの?アルが居るから少しだけ力を貸してあげてたけど、アルが居ないんじゃもうお仕舞い♪この国は、あと少しで滅びるね♪滅びの記念に立派な建物はぜ~んぶ壊してあげるッ!この国には本当にお世話になったよ。王女様、精霊狩りの時は背中の羽根をむしって無理やり檻の中に閉じ込めてくれてありがとう。アルが助けてくれなかったら、今でもあんたの部屋で観賞用ペットとして暮らしているところだったよ♪精霊達、み~んな、この国と隣の国が大嫌いだよッ!アハハッ!』
光の精霊は、笑い声を上げながら光の砲弾を打ちまくっていく。
(物騒なことを言ってるけど、人間には被害が出ないように上手に撃っているぞ…。手加減スキルが半端じゃないな…。)
光の砲弾は、人間を避けながら建物の壁や床を悉く粉砕していった。
『アハハッ!王女様♪精霊を無理やり捕まえて、言うことを聞かせるなんて、とんでもないことをよく思い付いたね♪アルが隷属魔法の解き方を教えてくれなかったら、本当に危なかったよ♪』
アルは悲鳴をあげて避難する人間達を尻目に、光の翼をはためかせながら、この国を後にした。
(さてッ!何から始めようかな~♪とりあえず、冒険かなッ!)
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