(一)-4
駅に着くとすぐに窓口の前に立った。駅員さんたちは部屋の中のストーブの近くに集まって、ホーローのカップで何か飲んでいた。元日だから、コーヒーや日本茶ではなく、甘酒でも飲んでいるのだろう。
彼が窓口のガラスを叩き「おーい」と中に声をかけると、駅員の一人がこちらを向いた。そして膝掛けを近くのデスクに置くと、こちらへやってきた。
「長和まで、子ども二枚おくれ」
「二人で十円だ」
私は五円玉を出して窓口に出した。彼は十円玉を出し、代わりに私が出した五円玉をしまった。
それを見て中年の駅員さんは、窓口の横に設置されたいろんなきっぷが収められたスチール製の乗車券箱から二枚抜き取った。そしてガラス窓の下の受け取り口から私たちの方に二枚の硬い切符をよこし、代わりに十円を受けとると、すぐに中に戻っていった。
(続く)
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