家族ごっこ

@kakunoari

第1話

よし。出そう。そう言って女は10錠入ったシートから1つまた1つ薬を取り出していく。

女は何ヶ月も溜めた精神薬、睡眠導入剤、あらゆる精神薬系頓服をシートから外しながら、これまでの人生を振り返る。昔はよく泣いていたなぁ。もう、涙が残ってないのかしら。そう思いながらどんどん薬を押し出す。感情はない。

 まだこれだけか、結構時間かかるな、こんなもので死ぬかはわからないけど、ぶっ飛んでみるものいいかもね。暗いカウンターキッチンに座り込み、取り出した薬剤をどんぶり鉢に出しながら女は呟いた。

女には家族がいる。10離れた年上の夫。それから、子供が3人。1番上は女。2番目、3番目は男である。

長女は成人していて高校生まではとても明朗で優しい子だった。けれどもその後の進学先で悪友に出会い、あれよあれよと電子タバコを咥えて歩き、髪はピンクといった、いかにもという外見になってしまった。毎晩帰るのは深夜という生活スタイル、彼女も今までの真面目な生活とは真逆のスタイルに一年位ですっかり染まってしまった。今は男に依存し、同じタバコを吸い深夜に帰る。これが彼女の普通のようである。出会った悪友といえば、今は髪を黒く染め何もわからない箱入り娘の様にしているからお笑いである。

 長男はというと、高校生で反抗期なのか全く母親と話もせず、距離を置くといった様子だった。これは正しい青年のありかたなのしれない。

次男はそんな長男とは対照的によく母親と接していた。優しい子なのだ。

 けれど、この男子2人も長女の様に悩みの種になるのかもしれない。女はそう思っていた。

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