第2話
彼女は、俺に気付かなかった。
いつも通り、なんともつまらなそうな顔で、ハンバーグを食ってる。この店も、たぶんレストランだと思ってるんだろう。もともとここの店主はラーメン屋で、このよく分からないキャラクターのファンだからという理由でレストランとフランチャイズしているだけ。だから、メニューになくてもラーメンが出てくるし、ラーメンは旨い。
前回は、混雑している店内でたまたま隣だったというだけ。今回は、特に混んでいるわけでもないのに隣に座ってみる。
彼女。
窓際の席。
あそこが、定位置なのか。
「隣、いいですか」
回答を聞く前に、座ってしまう。
一瞬、迷惑そうな顔。
本当に、覚えていないらしい。
「ラーメンを。大盛りで」
彼女。今日もハンバーグ。
彼女の表情。
記憶はないらしい。
でも、癖は。変わっていない。片目をとじて頬杖。
なんて言って、話しかけようか。
俺が恋人ですよ、なんて言っても。信じないだろうし。
自分自身、彼女のことを、彼女の負っている役目のことを、深く知っているわけではなかった。正義の味方だと言って、笑うだけ。
そんな彼女も、今は自分のことさえ忘れて、ハンバーグをただ食べている。
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