lies.

春嵐

第1話

「隣の場所へ」


 隣。

 ひとが座ってくる。

 男性。身体つきは良い。顔は普通。やさしそうというか、行動が遅そう。じゃあその筋肉はなんだ。


「失礼します」


 普通のレストラン。ハンバーグを頼むと人気のキャラクターの何かがもらえるとかで、そのせいで私の憩いの閑散としたレストランではなくなっている。今だって、こうやって相席で。


「ラーメンを」


 そんなのないよ。


「かしこまりました」


 あるのかよ。メニュー表にないわよそんなの。

 隣の男性。

 キャラクターの何かが目当てではないのか。


「これ。いります?」


 わたしのハンバーグについてきた謎のグッズを、彼の前に。


「あ、いや。なんですかこれ?」


「わたしも分からない」


 それきり。会話は途切れた。

 ふたりの間に、謎のグッズ。


「お待たせしました」


 ラーメン。

 意外に手が込んでいて、美味しそうだった。


「あ、食べます?」


 私のちょっとした視線に、彼が反応する。


「では遠慮なく」


 箸を取って。

 ひとくち。

 ついでにスープも。ひとくち。


「美味しい」


 レストランなんて肩書きやめてラーメン屋にしろよ店名を。なんでレストランなんだよ。ハンバーグに謎のグッズつけやがって。


「お返しに、このグッズどうぞ」


「いや、いらないです」


 やはり、会話はとぎれた。

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