変わる君と変わらない僕
シヨゥ
第1話
「君は何も変わらないね」
街に帰ってきた元彼女が会いたいと言うので会ってみるとそんなことを言われた。
「なんだか安心する」
「そうかい? これでも年相応に老いてはいるんだけども」
「たしかに白髪も皺も昔はそんなになかったもんね」
「その分肌の潤いが減ったさ」
「年を取るって嫌だね」
「まったくだ」
決して険悪になって別れたわけではない。ただなんとなくお互いにお互いのためにならない関係性だと思ったから別れた。だからだろう。こうして会えば昔通り。他愛もない会話で盛り上がれる。もちろん会話がなくても苦にならない。
「本当変わらない」
それは彼女も同じようた。たっぷり間が空いたというのに話を降ってこようとしない。ただコーヒーを口にしながら、穏やかに流れる時間を楽しんでいる風だ。
「聞かないんだね」
5分ほど経っただろうか。ようやく話を振ってきた。
「何をだい?」
「会いたいと言った理由」
「話したくなったら話すんだろう?」
「まあ、そうだけど」
「ならそうなるまで待つさ」
「そうならなかったら?」
「それなら仕方がないさ」
「本当、君は変わらない」
彼女が息を大きく吐く。そして、
「結婚することになったの」
そう告げた。
「そうかい。おめでとう」
「興味なしか」
「マリッジブルーかい? とでも聞けばよかったかな?」
「そのとおりだからやめてほしいかな」
「分かったよ」
それから少しの沈黙。そして、
「まあそんな状態だから愚痴らせてほしくて呼んだんだけどね」
と吐き出した。
「同性の友達のほうが良くない?」
「みんな式に来るからさ。その分元カレなら安心じゃない?」
「それは、そうか」
「付き合ってくれる?」
「乗りかかった船だしね」
「ありがとう。君ならそう言ってくれると思っていたよ」
それから始まった結婚生活への不安話。それはなんだか勉強になる半面、彼女が本当に遠くへ行く感じがして、少し悲しくなるのだった。
変わる君と変わらない僕 シヨゥ @Shiyoxu
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