『タイトル未定、ジャンル未定、オチ未定』クスッと笑える日常系好きと 後味悪いSF好き が書いてる話

@IRODORI_YAKKUN

第1話

雪が解けたら何になる?

答えは、「春になる」。

うーん、素敵な表現だ。

じゃあ、どんな素敵な表現をすれば、付き合って1ヶ月の彼女にもらったチョコを、カバン

の中でドロドロに溶かしちゃった僕は立ち直れるんだろう。

かわいいラッピングのされた小ぶりの箱から漏れ出たそれは、カバンの底にべったりくっ

ついて、場違いなくらいに甘い、平和なにおいが立ちこめていた。

ここは僕の中学の、自転車置き場。

これから帰ろうとして、かごにカバンを入れたときに、僕は気付いたんだ。

せっかくの手作りチョコを、こんな無残な姿にしちゃったことを知ったら、きっと彼女は

「雄二君、ひっどい!サイテー!」ってなじってくるだろう。

そんなことを言われたら、僕はもう、生きていけない。

「チョコレートどろどろ殺人事件」の幕開けだ。ってなんだそりゃ。

とりあえず、カバンに入ってたコンビニの袋を裏返して(外側にはチョコがついてるから)、

その中に溶けたチョコを入れた。

このまま今日は帰ろう。

帰ったら、溶けたチョコは冷蔵庫でもう一回固めてから食べよう。いけるかな・・・。

僕はフラフラと自転車をこぎ始めた。

家に帰りつくと、妹が先に帰っていた。

今回の事件をばれるわけにはいかない。彼女と妹は仲がいいのだ。殺人事件の犯人が2人に

増えてしまう。カバンはこっそり洗わなきゃな。

「お兄ちゃん、お帰り」

わっ!

玄関を開けると、そこに妹が立っていた。

「た、ただいま」

「何?なんで焦ってんの?」

「いやなんでも」僕は妹をかわし、カバンを持って洗面所に向かおうとする。

「お兄ちゃん、なんかチョコのにおいがする」

「え???」ギクリ、と僕は足を止めた。「だるまさんがころんだ」の気分だ。

「あー、美咲ちゃんにチョコもらったんでしょー。やるじゃん」

「え、あー、うん。もらった」

「・・・なんでそんな複雑な顔してんのよ?」

「何でもないよ」僕はカバンを隠すように、妹に背中を向けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る