「運動不足」

「牧島さん。あなた、運動不足です……。今すぐにでも、運動してください……」


 病院の診察室内。

 医者はカルテを見ながら、真剣な表情でそう言った。

 その言葉を聞いた瞬間、私の手が震えた。


「ど、どうしても、運動しないとダメなんですか……?」

「はい。運動してください……」

「あ、あの……。一杯飲むだけで、一日分のカロリーを消費できるという『お茶』があるんですが、それを飲めば運動しなくても……」

「牧島さん……。よくわからない食品に頼らないで、身体を動かしてください……」

「あ!そうだ!糖質制限ってありますよね?それをやれば、運動しなくとも……」


 医者は冷たい眼差しで口を開いた。


「楽をしないで、自分の体を動かしてください……」


 そう言い放つ医者に向かい、私は思わず、


「どうしても、運動をやらなくちゃダメなんですか!!」


と、大きな声で叫んでしまった。

 だが、医者はあくまで冷静に、


「はい。運動しなきゃダメです……」


と言い放った。

 凍てつくような冷たい医者の目に、私はもうなにも言えなくなった。


 畜生……。

 畜生……!

 畜生!!!


 運動したくねぇ!!


 俺は、運動なんてしたくないんだよ!!!


 すると、医者は重ねて、こう言った。


「とりあえず、毎日、家の周りを30分散歩するだけでもいいので、運動してください」


 !?

 な、なんだと?

 私は愕然とした。

 そ、そんな……。そんなバカな!!


「30分間、家の周りを散歩!?それだけでいいって、言うんですか!?」


 またもや、私は声を荒げてしまった。

 医者はまたしても冷たい眼差しで……。


「はい。できれば、毎日……。雨の日も出来れば、やってください……。」


 ……。

 私は医者に向かって、こう答えた。


「あ、はい。それなら、やります」




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