「ベッドシーン」

 私は映画監督だ。

 私は、今、恋愛映画の撮影をやっている。

 ラーメン○郎で出会った二人の男女が恋に落ち、結婚するまでを描く恋愛映画だ。


 今日の撮影は、マンションの室内で行われる。

 撮影現場には大きな白いベッドが一つあり、カメラマン、照明、マイク、メイクなど、多くのスタッフが撮影の準備をしていた。


 今日、撮影するのは『ベッドシーン』だ。


 この映画は恋愛モノ。

 ストーリーの展開上、ベッドシーンが必要になったのだ。

 そして、このベッドシーンは、この映画においてとても重要な役割を持っている。

 だからか、今日はいつもよりスタッフ全員が緊張している。

 だが、誰よりも緊張しているのは、この私だ。


 今回、私は初めてベッドシーンの撮影をする。


 私は今まで、ベッドシーンの撮影をしたことがない。

 これが私にとっての初のベッドシーンとなる。

 なので、キャストやスタッフ、プロデューサーなど、この映画に関わる人々全員で、このベッドシーンをどう撮るかについて、何時間も話し合った。


「最高のベッドシーンを撮りましょう!」


 話し合いがまとまった時、私はその場に居た全員にそう言った。


「監督!準備が出来ました!!」


 カメラマンがそう叫んだ。

 私は息を吞んだ。


「うむ……。それじゃあ、撮影に入ろうか……」

「皆さん!これから、ベッドシーンの撮影に入りますー!」


 ADの声が現場に響く。

 いよいよだ……。

 いよいよ、初めてのベッドシーンの撮影が始まる……!


「それでは、本番!!スタート!!」


 カチン!!

 ADがカメラの前でカチンコを鳴らした。


 ……。


 カメラマンがゆっくりとベッドにカメラを近づける。

 カメラはベッドに置かれた枕から、シーツ……そして、毛布まで余すところなく、じっくりと撮影していく。

 私は額から汗を流した。

 順調だ……。

 順調に、ベッドを撮影出来ている……。


 だが、油断はできない……。

 ここからだ……。

 ここからが、重要だ……。


 カメラマンはカメラをベッドの下に向ける。

 ベッドの下も、じっくりとカメラが撮影していく。

 スタッフ全員が息を殺し、ベッドの撮影を見守っている。

 もう少し!もう少しだ!!


 カメラマンは、最後にもう一度、ベッドの上に置かれた枕にカメラを向けた。


 そして、私は叫んだ。


「カァーット!!!オッケー!!!最高の『ベッドシーン』だったぞ!!」


 スタッフから歓喜の声が上がった。

 やった!やったぞ!!

 ちゃんと、『ベッドシーン』を撮影することが出来た!!

 これで、この映画のヒットも間違いなしだ!!




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