ヨサコイ青年、美少女へ!

カティ

第1話 ヨサコイ青年、美少女へ

俺は北村ユウキ、23歳、ヨサコイを趣味で楽しむ社会人だ。

だが最近所属するグループの過疎化が激しかった。

それも以前に所属していた奴がグループの多数を率いて離脱してしまったからだ。


今、残っているのは、

リーダーで囃子をやっている後光シンゾウ(38歳)

旗師、旗屋トモヤ(35歳)


俺と同じ踊子

南里ヨウスケ(23歳)

西野シュウサク(28歳)

東山タカヒロ(20歳)

俺を含めても6人になっていた。


「はぁ、もうこの仲間と大会に出れないのかなぁ・・・」

練習場に使っている中学校の体育館で俺は愚痴る。

「おい、ユウキ。気の滅入る事を言うな。」

幼馴染みのヨウスケが俺の愚痴に反応する。

「だってさぁ、この人数だろ?」

「たしかに減ったよな・・・

くそっ!マコトの奴のせいで。」

「言うなよ・・・」

奴原マコト、俺達と同じ時期に入った奴だったが先日雑誌の取材を受けたことで増長し、新しいグループを立ち上げ、その際に大多数を引き連れていった。


「ユウキきてるか?」

「シンゾウさん、いますよ。」

遅れてきたシンゾウが入ってくるなり俺の姿を確認している。


「ユウキ!頼みがある!」

俺の前に来た瞬間、シンゾウの土下座が炸裂する。

「なっ!何をしているんですか!」

「俺にはこれしか思いつかん!」

「だからって、なんですか?まずは事情を話してください。」

「・・・女装してくれ。」

「はい?」

俺の頭に疑問符がつく。


「そうか、承諾してくれるか!」

「いや、承諾してな・・・」

「わかってる、ミユキ、まずは化粧を頼む!」

シンゾウは奥さんのミユキさんに指示を出す。


「はいはい♪ほらユウキくん、動かないでね。」

「ちょ、ちょっと!」

「うごかないで!」

「は、はい。」

ミユキの迫力に動きを止められる。


「う〜ん、やっぱり化粧のノリがいいわね。」

ミユキは楽しそうに俺に化粧をしてくる。

「ミユキ、終わったか?」

「もうちょっとかな?」

「ユウキ、終わったらこれに着替えてくれ。着方がわからなかったらミユキに聞いてくれ。」

俺は流されるままに、化粧をして、渡された服を着ると・・・


「シンゾウさん!これって女物じゃないですか!」

俺は更衣室を出て文句をつけると・・・

「「おお〜」」

シンゾウとヨウスケから感嘆の声が漏れる。


「なんだよ、その反応?」

「いや、お前って美少女だったんだな?」

「ちがうよ!」

「いや、でもねぇ・・・」

ヨウスケはシンゾウに同意を求める。

「たしかに女にしか見えんが・・・少し幼くないか?お前本当に男で23歳か?」

「童顔なのは気にしてるんです!」

「いや、女子高生にしか見えん。」

「男で社会人です。」

「ねぇ、可愛いわよね♪ほら鏡で見てみて。」

ミユキはどことなく嬉しそうにしている。

俺はミユキに差し出された鏡を見るとそこには一人の美少女がいた。


「ダレコレ?」

俺は頭がフリーズする。

「ユウキ、いやユウちゃん♪」

「ヨウスケ!ちゃんをつけるなぁ!」

「ほら、ユウちゃん、可愛い顔が台無しよ、笑って♪」

「ミユキさん、笑えませんよ。シンゾウさん、そもそも何でこんな格好をするんですか?」

俺は事情を詳しく聞くことにする。


「うむ、俺もふざけてこんな事をしているわけではない。

ユウキも気付いているだろうけど、最近の人が減りすぎてな、このままじゃグループの存続は難しいだろう。」

「ええ、それはわかります・・・」

「そこでだ、可愛い女の子が踊っていたら集まって来ないかなと考えたんだ!」


「あんたはバカですか?

可愛い女の子を入れるならわかります。

でも、俺は男ですよ。」


「ユウキ、何を言っている。

可愛い女の子がすぐに入ってくれるわけないだろ?

それに踊りも踊れなくてはいけない。

そんな子がどこにいるんだ?」

シンゾウは首を傾げる。


「だからって、女装しても意味ないでしょ!」

「今回だけだ、近々ショッピングモールのイベントステージがある。

その時だけだ。」

「嫌ですよ。バレたら恥ずかしいじゃないですか。」

「大丈夫、罰ゲームとか言っておけばいいさ。」

「い・や・で・す。」

俺は頑なに断る。


「うーん、この手は使いたくなかったけど・・・」

「なんですかミユキさん。少し怖いんですけど・・・」

「これ、なぁ〜んだ?」

ミユキは俺が初めて書いたラブレターを出してきた。

「・・・ミユキさん、それは!」

「ユウちゃんが私にくれたラブレターです。」

「ちょ、なんで置いているの!」

ミユキが出してきたのは俺が小学生の時に隣の家に住んでいたミユキさんに書いたラブレターだった。

「あの頃は可愛かったのに、私に逆らうようになるとはねぇ〜」

「い、いやだなぁ、逆らったりしないよ、だからね、しまってくれないかな?」


「さいあいなる、ミユキおねぇちゃんへ。」

「読まないで!」

「じゃあ、どうすればいいか、わかるよね?」

「・・・」

「おねぇちゃんは悲しいなぁ〜つい続きを読みたくなっちゃうかも。」

「わ、わかりました!でも、今回だけですよ!」

「素直なユウキちゃんは好きよ♪」

「くくく、最初から大人しくしていれば良いものを。」

「シンゾウさん、はかったな・・・」

汚い笑顔を俺に向けるシンゾウの前で、

俺は地面に伏し、絶望を味わうのだった。

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