第23話

「窃盗があった店のオーナーって、ミランダさんだったのですか!?」


 私は、新たに得た情報に驚いていた。

 今までは女性が狙われた事件と、窃盗事件を別々で考えていたので、知らなかった。

 まさかあの店のオーナーが、彼女だったなんて……。


 私はこの時、確信していた。


 私を狙っていたのは、間違いなく彼女だ。

 店長の方は、私と面識もない、全然知らない人である。

 狙われる覚えが私にはない。

 彼の仕業だという可能性は、限りなく低いと考えてもいい。

 しかし、彼女なら、私を狙っても不思議ではない。


 今なら、街で会った時、どうして彼女があんなに驚いていたのかわかる。

 あれは、予期せぬ再会に驚いていたのではない。

 大怪我を負わせたはずの私が、何事もなかったかのように歩いていたから、驚いていたのだ。

 そうに違いない。

 あの驚き方は、普通ではなかった。


 しかし、証拠がない。


 私の中では、百パーセント彼女の仕業だと確定しているけれど、証拠がなければ、ただの被害妄想で終わってしまう。

 憶測の域を出ないようでは、彼女を逮捕することはできない。

 何か、証拠を見つける必要がある。

 私は何か手掛かりがないかと思い、資料に目を通した。


 証拠……、証拠……、証拠証拠証拠証拠胡椒胡椒胡椒胡椒証拠証拠……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る