第8話

 (※ミランダ視点)


 私は毎日、監獄にいるアイザックに会いに行っていた。


 面会時間は限られているけど、この時間が私にとって、唯一の幸せな時間だ。

 今も椅子に座って、彼がやってくるのを待っている。


「やあ、ミランダ、今日も会いに来てくれて嬉しいよ」


 彼は少し微笑んで席に着いた。


「アイザック……、あなたまた、顔に傷が増えているわ」


「あぁ……、監獄の中ではどうも、権力者というのは嫌われているみたいでね、毎日毎日、彼らもよく飽きないものだ。あ、心配しなくてもいい。こんなの、全然大したことじゃない」


 アイザックは笑いながら言った。

 しかし、明らかに無理をしている顔だ。

 弱っているところを、私に見られたくないのだろう。


 彼は、日に日にやつれていっている。

 会うたびに、生傷が増えている。

 こんな生活を、彼はずっと続けなければならない。


 こんなの間違っている。

 アイザックは、愛する私と婚約するために、パーティ会場であんなことをした。

 シェリルとの婚約を破棄できれば、私と一緒に幸せな生活が送れるからと、あんなことをしたのだ。

 それなのに、シェリルは生意気にも抵抗した。


 そのあと、アイザックが彼女にささやかな復讐をしようとしたけど、それも阻止された。

 大勢がいるパーティ会場であれだけ恥をかかせたのだから、彼に復讐する権利は充分にあった。

 それを生意気なあの女は、阻止しただけでなく、アイザックを監獄送りにまでした。


 私たちの愛を、彼女は引き裂いた。


 でも、私たちの愛は、そんなことでは消えない。

 私は彼を愛している。

 愛している彼をこんな目に遭わせたあの女が許せなかった。

 確かに少し彼には欠点があるかもしれないけど、人間誰しも欠点の一つや二つはあるものだ。

 日々傷ついていくアイザックを見て、私はようやく、彼を監獄送りにしたシェリルに復讐する決心をした。


「アイザック、私、あの女が許せないわ……」


「シェリルのことか……、おれもあいつは許せない。あいつのせいで、おれの人生はどん底だ。しかし、ここに閉じ込められていては、復讐することもできない……」


「大丈夫。私が、あの女に復讐するわ」


「え、でも、君が手を汚す必要は……」


「いいのよ。愛する人をこんな目に遭わせて、私は心底彼女に腹を立てているの。私自身が、復讐を望んでいるの」


「……ああ、それじゃあ、頼むよ。おれをこんな目に遭わせたあいつに、報いを受けさせてくれ」


「ええ、任せておいて。私は復讐のためなら、何でもするつもりよ」


 面会の時間が終了したので、私は監獄をあとにした。


 アイザックに会う時間がほとんどなくなって、私の中にはぽっかりと穴が開いていた。

 でも今は、それも満たされつつある。

 シェリルへの復讐心によって……。

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