僕は彼女から義理チョコをもらった
流僕
過去の日々に映る君。
2月14日、バレンタインデー。僕は彼女から義理チョコを貰った。
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高校二年生の初めに僕が君をデートに誘ったのが初めだった。
それから僕らは5回デートに行った。
高校三年生の12月。
僕も君も推薦で第一志望の別々の学校に入れることが決まったころから、
僕は君とのこれからを考えていた。
今だから正直に言うが、
すでに僕は大学生になったら新しい彼女を作ろうと考えていた。
だから、君とは大学に上がる段階で別れようと思っていた。
一方で君とこれからも付き合っていたいという気持ちがあったのも確かだ。
僕はこの二人の自分に挟まれ悩んだ。そして、思いついた。
2月中旬。学校の帰り道。
僕は隣を歩く君につぶやくように聞いた。
「なあ、大学生になったらどうする」
「どうするって?」
君は歩きながら僕の方を向いて顔を傾ける。
「これからも僕と付き合い続けたいと思ってる?」
君のマフラーが風にゆれる。
「僕はこれからも一緒に居たいと思ってる。でも一方で僕も君も、別の人との恋愛もしたほうが良いんじゃないかとも思ってる」
傾いて来た日に照らされて、雲が色づきだす。
「それで、こんなのはどうかな。僕らはこれからも付き合い続ける。でもお互い新たに好きな人が出来たら、別れる」
「…じゃあ付き合ってるけど、付き合って無いってこと?」
僕は頷く。
君は俯く。
「…」
沈黙。
鳥のさえずりが遠くに聞こえる。
時間経つのが異様に長く感じる。
僕らは駅に着いて、電車に乗った。
君が降りる駅に近付いてきた時。
「いいよ」
と言って君は頷く。
僕も頷く。
そのまま電車がホームに入ると君は「じゃあね」と言って降りて行った。
そして、僕らは大学生になった。
大学生になってからも僕らは月に一回はデートに行った。
海。映画館。カワウソカフェ。
君との思い出はいいものばかりだ。
特に僕は満開の桜を見に行ったのが一番楽しかった。
その時、君と撮った桜の写真を今でもスマホの待ち受けにしている。
翌年の2月14日。君は僕をデートに誘った。
そして、デートが終わった後。別れ際に君は僕にチョコレートを渡した。
突然、「はいっ」と言われ、赤いリボンのついた包みを渡されて、
僕は一瞬なんの事か分からなかった。
だがすぐに、そういえば今日はバレンタインデーだったなと思い出した。
「ありがとう」
そう言って僕がチョコレートを受け取ろうとすると、君は言った。
「義理チョコだから」
えっ、
「大学で好きな人が出来たの」
僕は戸惑った。しかし、その戸惑いとは裏腹に、僕は満面の笑みで。
「おめでとう、良かったね」
と言った。
君とのデートはこれ以降無くなった。
その後、僕は君が新しい恋愛を始めたように、新しい彼女を作った。
しかし、数週間で別れた。
「なんか、私と一緒にいても楽しそうじゃ無いんだもん」
確かにそうだ、僕は新しい彼女とのデートの時、
いつも君を思い出してしまい、上の空だった。
僕は悔やんだ。
なぜ、高校生の時、
「お互い新たに好きな人が出来たら、別れよう」
なんてことを君に言ってしまったのだろうか。
なぜ、君から義理チョコを貰った時。
「君と別れたくない」
と、言えなかったのだろうか。
君と一緒にいた日々を思い出しては、ため息を漏らす日々。
そんなことをしても意味がない事は分かっていた。
だが、君のことをつい考えてしまう。
僕は君のことを必死で忘れようとした。
そして、僕は今。こうして君にこの手紙を書いている。
結局、僕は君のことを忘れることが出来なかった。
君の一つ一つのしぐさが頭から離れなかった。
いまさらかもしれないが、君と過ごした日々は僕の中で輝いている。
君が今どうしているのかは知らないけれど、
こんなこと言ったら自分勝手すぎると怒られるかもしれないけれど、
もう一度、君に会いたい。
今度の日曜日。どこかで会いませんか。
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そこまで、書くと彼は便箋を封筒に入れ、封を閉じようとした。
だが、思い出したように便箋取り出すと
ペンを握り直した。
追記
あの時貰った義理チョコ。苦くて甘くて、美味しかったよ。
僕は彼女から義理チョコをもらった 流僕 @Ryu-boku
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