第7話 みんなでショッピングモール
前話(第6話)で友人を紹介した後、達也との関係を書くのを忘れてましたので追加しました。
気になる人は確認してください。
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ショッピングモールに向かう車の中、後部座席では
助手席にいる健治はスマホを見ながら、
「お前らの写真上げてたアカウント凍結してるぜ、修正せずに乗せるからだよ、自業自得だな。」
「へー、意外とすぐ対応するんだな。」
「こういうのは不特定多数に見られるからな、それにネットには正義心なのか自分が正しいとか思ってる奴が結構いてな、こういうのを通報して回ってたりする奴が一定数はいるもんなんだよ、運営も一定数の通報が来ると確認のため自動的に凍結したり、確認してアカウントを消したり復活させたりってするんだよ。」
「なるほどな、俺はそういうのやった事ないから疎くてな。」
「どうせならこれを機にやってみたらどうだ?茶羽ちゃん黒羽ちゃんの成長記録的なやつ。」
「健治さん、私はそういうのやめた方が良いと思うわ、それを見た悪い人が茶羽ちゃん黒羽ちゃんに近づいて危険な目に合うかもしれないじゃない。」
「あぁ、確かに香織の言う通りかもな、達也やっぱ今言ったのは無しな、茶羽ちゃん黒羽ちゃんが危険になるかもしれない事は勧められないわ。」
「俺も二人が危険になるかもしれないならやらないな。」
そんな事を話しているとショッピングモールの駐車場入り口に並ぶ車の列が見えてきた。
今日は日曜で昼時というだけあって混んでいる。
「これ止めるまで、というか駐車場に入るまででも時間かかるかもしれないぞ。」
「まあゆっくりでいいんじゃね、少し遅い時間の方がレストラン街も人少なくなってるかもしれないし。」
「達也さん、もしよければ、茶羽ちゃん黒羽ちゃん先に降ろして、私が見てましょうか?」
「そうだ、達也、運転変われ、お前と香織で先に茶羽ちゃんと黒羽ちゃん連れて中に入ってろや。」
「いやそれは健治に悪くないか?」
「そう思うなら今日の飯代、おまえが出してくれればいいぞ。」
「そんなもんで良いなら、でもいいのか?」
「気にするなって、ほら早く変われ。」
健治の提案で、俺と香織と茶羽と黒羽は先に車から降りて、ショッピングモールの入り口に向かった。
入り口に向かう途中、やはりニュースの影響なのか、茶羽と黒羽の耳と尻尾は目立ちジロジロと見られている、中にはスマホを向けようとしている人もいた。
「そこの人たち、許可なく写真を勝手に取るのは犯罪ですよ、盗撮で通報しますよ。」
俺はスマホを手に周りにも聞こえるように大きな声で言うと、スマホを向けようとしてた人たちは、さっとスマホを隠し一部はそそくさと逃げていった。
そんな中、女性の二人連れが近づいてきた。
「あの、この子達の写真撮りたいんですけどいいですか?」
撮影の許可を取りに来たようだ、遠まわしに写真撮るなと言ってるのに図太い神経してんなこの人達は。
「この子達はタレントでも見世物でもないんです、そういうのは遠慮してもらえますか?それでも撮ろうとするなら通報しますよ。」
こまった顔している俺に代わって香織が女性二人に断りを入れてくれた。
断られたので、しぶしぶと言った感じで女性たちは離れていく。
「香織ありがとう。」
「達也さんは茶羽ちゃんと黒羽ちゃんの親なんですから、もっとしっかりと守ってあげてくださいね。」
お礼を言うともっとしっかりしろと言われる、顔は笑顔だがめちゃくちゃ怒ってるのが分かる。
そうだな俺がしっかり守ってあげないとな、そう思いながら俺にしがみついてる二人をなでながら、行こうかと声をかける。
そして俺たちはショッピングモールの入り口に向かって歩いていく。
相変わらず入り口の自動ドアに目をキラキラさせて遊ぼうとする二人の手を取り引っ張るように中に入っていく、
「ここで遊んでたら他の人の迷惑になっちゃうからダメだよ。」
と伝えるが二人はもう別の物に興味を示して、走り出しそうな勢いになっていた。
中に入ると日曜だけあって、開けた場所では子供向けに風船を配っていたり、マスコットの着ぐるみが闊歩してたりでにぎやかだった。
風船を配ってるお姉さんが茶羽と黒羽の手首に風船を繋いでくれて、二人は大喜びで尻尾をブンブン振っていた、それを見ていたお姉さんは笑顔で手を振ってくれていた。
しばらく進んだところにあった休憩用のベンチで健治を待つことにした。
健治から状況が逐一メールで来ていたので、もうすぐ来ることが分かっていた、現在地をメールで教えておいたので、すぐ来るだろう。
待ってる間も近くでスマホを向けようとしている人がちらほらいたので、近くにいた警備員に、勝手に写真撮られて困る、何とかしてくれ、と言っておいた。
スマホを向けてた人たちは警備員に注意されていた。
中には抵抗して暴れようとして、数人の警備員に連れていかれてる人もいたが、自業自得だな。
「おう待たせたな、達也ほれ鍵。」
健治が来るなり車の鍵をほおってきた、それを受け取ると、
「悪いな、ありがと。」
「飯おごってくれるんだ、これくらいお安いもんだ。」
そういうと健治は茶羽と黒羽の頭をなでていた。
「ここに居てもなんだし行こうか。」
俺がそう言うと皆でエレベーターホールに向かい歩いていく。
ホールに近づくと茶羽と黒羽がトイレ行きたいと言うので、ホールの脇にあるトイレに連れていこうとしたが、親子トイレと多目的トイレは使用中だった。
それを見た香織が連れて行ってくれると言い、女子トイレに向かって三人は歩いて行った。
こんな時女性が居ると助かるな、と香織に感謝した。
俺たちもトイレを済ませてホールで待ってると、茶羽と黒羽が出てきて、俺の姿を見ると勢いよく走って近づいてきた。
「茶羽、黒羽、そんなに走ると危ないぞ。」
二人に注意するとしゅんとした感じになったので、いきなり走るとこけたり人にぶつかってケガするんだぞと説明して頭をなでてあげる。
二人はごめんなさいというと撫でてもらってうれしいのか尻尾をゆらゆらさせていた。
反省したならいいかと笑顔で行こうかと手をつなぐ。
その後エレベーターの降りる人に『お先にどうぞ』と声を掛けたり、行先ボタンをどっちが押すかで揉めたり、見ていて笑顔になりながら目的のレストラン街に着いた。
14時を少し回っていたが、日曜だけあってレストラン街はまだ人は多かった。
目的の和食屋は数人の待っている人がいたが、スムーズに案内され数分で席に着けた。
店内は昨日と違ってほぼ満席だった、なので注文時に子供用の食器を二セットつけるように頼んだ。
最初に焼き魚定食が二つ来たがそれを見てびっくりした、また今回も骨を取ってほぐしてあったのだ。
健治と香織もそれを見て「子供向けのサービスか?すごいな」、と驚いていた。
俺は「昨日来た時もこうしてくれた」と説明すると、ここは良い店員がそろってるんだなと感心していた。
まだ全員分が揃っていなかったが、茶羽と黒羽に「先に食べていいぞ」と伝えると勢いよく食べ始めた。
食事の途中、店員が水とお茶のポットを変えに来たので、魚をほぐしてくれたことをお礼を言った、すると昨日の店員さんだった。
俺のお礼に、にっこりと微笑むと軽く頭を下げて「ごゆっくりどうぞ」と言い店員さんは去っていった。
食事が終わり店を出ると、この後どうするかという話になった。
特にこの後の目的もなかったが、モール内は色々専門店があるのでそこをまわってみようという事になった。
いくつか専門店を回り、時間的に次で最後かな、と子供向けの服飾雑貨屋に来た、帽子やバックなどが売ってるお店だ。
入り口の説明書きを見ると、このお店はオーナー自らがデザインしていて、オーダーメイドも受け付けているお店らしい。
俺と健治は入り口付近で待ってるからと伝えると、三人で中に入っていった。
しばらくすると店内にいる香織が手招きしていた、何だろうと中に入ると、かわいい帽子とポシェットをつけた茶羽と黒羽が居た。
「茶羽、黒羽、その帽子とポシェット可愛いな。」
俺がそう言うと香織と店員さんが『そうでしょう、頑張って選んだのよ』と言わんばかりのドヤ顔していた。
ただ耳が帽子でちょっと窮屈なのか茶羽と黒羽は頭を気にしていた。
「ただ二人は帽子で耳が気になるみたいだな。」
そう言うと香織も気づいたのか二人の帽子を取ってあげていた。
店員さんもそれに気づいて、
「やっぱり耳に合わせて作らないとだめかもしれませんね、これからも人化した子が来るかもですから、デザインから考えてみます。」
そう言うと俺に茶羽と黒羽に耳の位置やサイズを測らせてもらえないかと聞いてきた。
俺に聞かれてもと茶羽と黒羽に
「このお姉さんが茶羽と黒羽の様な耳がある人に似合う帽子作るのに二人の耳を測りたいんだって、いいかな?」
そう聞くと、俺が一緒ならいいと了承してくれた。
なので店員さんに俺が同伴すればいいですよと伝えた。
それを聞いた店員さんは目を輝かせて、店の奥からメジャーや物差しを持って来て、レジのあるカウンターの脇に案内され、茶羽と黒羽の頭を測り始めた。
一通り測ると、デザインして完成したらお知らせしますと言い、名刺を差し出してきた、それを見てびっくりした、この人この店のオーナーさんだった。
名刺をもらって俺の連絡先を教えると、完成したら必ずご連絡しますと言われ、測らせていただいたお礼で今つけているポシェットをプレゼントしますとまで言われてしまった。
さすがにそこまでと思ったが、横から健治が、
「茶羽ちゃんと黒羽ちゃんの労働に対する対価だ、もらっても問題ないんじゃないか?」
というのでオーナーさんのご厚意を受けることにした。
本当にいいのかな?と思っていたが、茶羽と黒羽の喜ぶ顔を見ていたらそんな思いは吹き飛んでしまった。
「茶羽、黒羽、オーナーさんにありがとうしような。」
「「おねえさんありがとう」」
オーナーさんにお礼を言うとお店を後にした、オーナーさん自ら入り口まで見送ってくれてずっと手を振ってくれていた。
「いい人だったな、茶羽、黒羽、よかったな。」
「「うん」」
「そうだな、本当に子供が好きだってオーラ出してたな。」
茶羽と黒羽は飛び跳ねながら喜び、健治も笑いながら答えてきた。
時計を見ると17時になりそうだったので、そろそろ帰ろうか、となった。
駐車場で健治の案内で車に戻り、茶羽と黒羽をジュニアシートに座らせて、間に香織が座るのを確認するとドアを閉める。
運転席に座り、健治が助手席のドアを閉めるのを確認すると、後部座席を振り返り声をかける、
「さあ帰るか。」
「「しゅっぱーつ」」
いつものように茶羽と黒羽の掛け声に合わせて車を走らせる。
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