妻とチャーハンと作者 ~グルメルポシリーズPART2~

小林勤務

第1話 趁热打铁

 チャーハン。


 その起源は古く、7世紀初めの中国、隋の時代まで遡る。隋の文献で、当時の宰相が「砕金飯」という料理を好んでいたということが記されている。ちなみに、砕金飯とは、現代でいうところの玉子チャーハンのようなものらしい……。


 うーむ。そんな昔からあるものなのか。


 正確に言えば、当時の中国に「強い火力で炒める料理」はまだなかったようだ。今でこそ、中華料理といえば炒める、中華鍋を振るうとイメージだが、強い火力に耐えうる調理器具が開発されたのも10世紀ぐらいまでらしい。


 なるほど、なかなか奥が深い。


 なんで、こんなチャーハンの起源なぞ、わざわざ調べたかと言えば……

 時をちょっとだけ遡る。

 今回、カクヨムで目についた企画――



「料理研究家リュウジ×角川食堂×カクヨム グルメ小説コンテスト」



 これを見たからだ。


 大賞に輝いたら、実際にレシピにして頂けるとのこと。


 自分の小説が……レシピ……だと。


 ……まじかよ(ぷるぷる、わなわな)


 その時、何かが私の中で弾けた。

*イメージとしては、シャウエッセンがパキッと割れたような感じです(^^)v


 やるしかない。


 作者による、作者のための、作者が目指す最高の料理を……っ!


 だが――


 ここで一つの問題が。


 それは――


 普段、私は料理なぞしない。ちーん。


 正確に言えば、「今はほぼしない」だ。


 専ら作るのはインスタントラーメン。


 ……。


 以前はしていた。まあ、外食中心であったが、時たま自炊をしていた。

 そんなわけで、料理を作るイメージができない。


「料理もしないのに、グルメ小説なんて無理でしょ」


 と。

 妻の味気ない一言が突き刺さる。


 この一言が私のハートに火をつけた。めらめらと燃え上がる。


 見てろよ。



 これは、グルメをテーマにした短編『私』小説(応募規程クリア(^^)v)

 私(作者)と『彼』との壮絶なる戦いの記録である――




 ……まあ、かっこいい見出しから入ったはいいけど、実際レシピになりそうな料理ってなんだろうか。


 思い付く限り、頭の中でイメージを膨らます。


 カレー。ハンバーグ。ラーメン。焼き鮭。生姜焼き、グラタン……


 ここで一つ、言わせて頂く。

 大の大人が、一番好きな食べ物は?と訊かれて、



「ハンバーグです(どーん)」



 と答える人がいたら、その方は相当に自分に自信がある。


 間違いない。



 そして。



 理由はない。

 そんな気がするだけだ。


 ……。


 嗚呼、全然思い浮かばない。どうでもいい脱線までしてしまう始末。さっさと風呂入って酒飲んで就寝しよう。書けない時はいつまでも経っても書けない。アイデアというものはベルトコンベアーのように次から次へと流れてこない。今まで培ったものが、何かの切っ掛けで結びつく。



 つまり――コネクティング・ドッツ。



 今までの私(作者)の料理経験から金鉱を掘り当てるしかない……!


 熱い風呂に浸かりながら目を閉じて、記憶の深い場所めがけてダイブする。

 まさに、

 深淵を覗く時、深淵もまたお前を見ている状態。

 そして――

 深淵に訊ねる時、深淵もまたお前に訊ねている状態。

 同時に――

 深淵を触る時、深淵もまた……


 ……。


 チョマテヨ!


 こ、これ……


 どこまでもいけんじゃね?(^^)/


 深淵って言っとけばなんでもありかよ……


 深淵……まじでやべーわ……


 覗く、訊ねる、触る、ほかには……


 と。

 こんな下らないことまで考えたのちに、冒頭のチャーハンの件に辿り着く。


 私が自信をもって人様に「作った=作りまくった」といえるものは、


 チャーハン。


 これだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る