第8話 現実と向き合う重み

輝良姉弟と喧嘩した日の夜、僕は律人から説教を食らっていた。

(烈火、ナイーブな問題に首を突っ込むのは余計なお世話ってもんだよ、まったく、、、)

うぅ、分かったよ。明日、謝るから、、、

(いいや、烈火は分かってない、何も分かってない。これは彼らの問題なんだ。詰まるところ僕らが介入していい問題じゃない。極力触れちゃいけないパンドラの箱なんだよ!)

僕には律人の言うことがよく分からなかった。なんで彼らはあんなにも殺気立っていたのだろう?悩みはぐるぐる回って、、、結局1人(律人込み)で考えても堂々巡りするのみだった。

トントン。

僕の部屋をノックする音だ。「どうぞ」と言うと、鼎先輩がそっと入ってきた。

「ね、烈火。ちょっと聞きたいんだけど、、、」

「はい、なんですか先輩?」

「実はね、私、両親のことを文章にしなきゃいけなくなったの、授業の課題でね。多分、烈火もでしょ?」

「はい、よく分かりましたね」

「分かるよ、晩御飯食べてたときもずっと頭抱えてたもん」

あちゃあ、ばれてたかあ。

「その事を烈火と共有したいの。一緒に考えていけばきっといい方向に進むと思うの。どうかな?」

正直僕は気が進まなかった。いや、と言うよりも、僕は鼎先輩に嫌悪感さえ抱いている。こんなに優しく歩み寄ってくれているのに、、、一体どうして、、、?

「私たちにはあなたが必要なの!」母の声が蘇ってくる。

「私たちはお前なしには生きていけない!」父の声も同様に。

「お前が大切なんだ、お前だけが、、、他の誰よりも、、、!」

僕はなんでこんな事を言われたんだっけ。両親が少し異常だったのはうっすら気付いていた。だけど、その異常さが度を超えているのだとしたら、、、?

「ね、烈火?烈火ー?聞いてる?聞こえてる?」

鼎先輩はこちらを心配そうに覗き込んでいる。

「いえ、大丈夫ですよ。その話はまた今度にしましょう」

僕はそれ以降しばらく鼎先輩と距離を置くようになっていった。

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