第19話 夜空を見上げて想う前に

「あれっ、何でこんな所にいるんだ?」


 素っ頓狂な道下の声に、ミレーユさんと別れてから30分が経過したと気付かされた。


「お前が、公園行くって言うから......」


 道下が本当に記憶を失っているのか確認しようと試みた。


「俺が、公園に?何しに......?」


 キョトンとして解せない様子の道下。

こいつは、ポーカーフェイスだが、嘘が下手なのは、長年の付き合いで熟知している。


 ......ってことは


 本当に道下の記憶から、ミレーユさんはスッポリと抜けてしまった状態なんだ!


 ......とすると


 俺が、うっかりとミレーユさんの事を話したが最後!

 俺の記憶全てが吹っ飛んで、認知症のようになってしまうわけだ!

 気を付けないと、ヤバイ事になる!!


 ミレーユさんは、本当に俺との約束通り、俺の記憶はちゃ~んと留めてくれていたんだ!


 なんて感動的なのだろう!


 感激し過ぎて、身体中、熱くなって来たから、もう花粉症メガネも、紙マスクも外しちまえ!


「どうした、急にメガネやマスク外して?そういえば、今時分、なぜに花粉症メガネとマスクしてた?」


 そんな事は例え親友の道下でも話せるか!

 

 俺とミレーヌさん2人だけの大切な秘密なんだから!


 大好きな女性との秘め事が、こんなにも嬉しい事とは思わなかった!


 道下のように、スッカラカンに記憶抜かれて日常のまま

 ......っていうのを選択しなかった俺は


 ミレーユさんと最後のお別れしたばかりで、本来なら寂しい気持ちで沈んでいてもおかしくないものを......


 よく分からないが、なぜか妙に満足感で充ち満ちている!


 しかも......


 家に戻った時に俺の部屋で待っていたのは......


 なんと......

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