第15話 マスクとメガネで

 一晩中眠れないまま、泣き明かしたぶざま過ぎる俺の顔......


 出来る事なら、学校が休みだと良かった......

 これが女子なら、化粧でかなり誤魔化しが効きそうだが、俺はメンズ用の化粧品など持ってないし、この先も持たないつもりだ。

 仕方ないから、季節外れ感有るけど、花粉症用のメガネでもして、紙マスクでカバーしよう。

 

「浅間、大丈夫か?」


 放課後、花粉症ではなく、原因はミレーユさんの件だと分かっている道下が、心配そうに声をかけて来た。


「大丈夫に見えるか!俺は、お前と違って、繊細で情に厚いんだ!」


「まあそういう事にして、覚悟は出来たか?」


「覚悟出来ても出来てなくても、取り敢えずは向かわないと!」


 俺達は、足早にミレーユさんが待つ公園の東屋へ向かった。


 ミレーユさんは、今日もまた、眩しいほどのいつもの笑顔で、待っていてくれた。


 何度、この笑顔を見ても、見慣れる事無く、俺は毎回、初めて会った時から同じようにドキドキを繰り返してしまう!

 嫌な事が有っても100%吹き飛びそうな、ミレーユさんの笑顔の破壊力!

 その笑顔だけでも見られるのなら、俺は、おじいさんになっても、ずっとずっと、この場所に通い続けたかったのに......

 

 この存在自体が神がかっている美少女が......

今日この時を最後に、俺達の前から去ってしまう!


 そうなると......

 次回、ミレーユさんが地球を訪れるのは

 

 きっと、遠い未来......

 

もう俺達がおじいさんになっても、ミレーユさんと再会する事など叶わないのだろうな......


 考えただけで、また号泣しそうになる......


 それでも、俺は、地球人男性の代表として恥じない態度で臨まねばならない!


 ミレーユさんに......地球人は女々しいと勘違いされてしまったり、最後の最後で引かれたりするのは嫌だ!

 

 ミレーユさんにとっても、俺は、地球での輝かしい思い出の1シーンとして、いつまでも存在し続けたい!


「浅間さん、大丈夫ですか?」


 いつもと違うメガネとマスク姿の俺に驚いているミレーユさん。


「いや~、これはその~、平気っす!」


「面白いけど、聞かないでおいてあげて」


 道下がフォローのつもりで言ってくれたようだが、あまりフォローされている気がしない。

 大体、なんで、こいつは、この期に及んで、こんなに平気なのか、全く理解に苦しむ!


「今日は、お世話になったお2人にお礼と、最後の施術をさせて頂きますね」


 ミレーユさんは、最後というこの日も、俺がドキドキし続ける美しい笑顔と美しい声色のまま接している......


 この美しい声と美しい笑顔、

 本当に最後なんだ......


 最後なのだから、ミレーユさんの一挙一動を目に焼き付けなくては!


 ミレーユさんをガン見してしまう俺は、花粉症メガネとマスクの奥から血走りそうな目をしてそう!

 メガネとマスクのおかげで、きっとワンクッション置いてくれているのが救いだ!

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